●今まさに変わりつつあることば。
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ゆーないと |
あれ? いつもの「正解は」!
じゃなくて、
「強いていえば」とな‥‥? |

りか |
うん。
どちらでもまちがいじゃないけど、
もともとは、
「的確」が先にあった、っていうこと。 |

ゆーないと |
じゃ、「的確」が正解って
ことじゃないですか。 |

りか |
んー、でも「適確」も
今では使われてるし。
辞書にもよく載ってるし。 |

ゆーないと |
えー、じゃ、
「どっちも正解」でいいじゃん。
そういう回も
あったじゃないっすかぁ!! |

りか |
‥‥‥‥。
ゆーなちゃん。
では聞きます。
まず、セミのことを考えて! |

ゆーないと |
セ、セミ? |

りか |
土から出てきたセミの幼虫が、
サナギの殻を破って羽化するとき、
成虫といえるのは、どの瞬間から? |

ゆーないと |
うぇっ。
考えたことないっしょ、ふつう。
えーと、サナギの背中がバリバリー、
って割れた瞬間? |

りか |
あの状態はもう成虫なの? |

ゆーないと |
え、ヘン?
そりゃ形はまだサナギですけど‥‥、
あ、全身がサナギからでた瞬間? |

りか |
足も全部でた、その瞬間?
でもまだぶよぶよしてるよ。 |

ゆーないと |
‥‥すっごい考えてたら、
気持ち悪くなってきました。
虫、あんまり得意じゃないんでー。
てゆうか、セミ、関係あるんすか? |

りか |
いや、モノゴトは、
どこからが「はい、変わった!」とかって、
判別しにくいっていう話ですよ。
セミがどこから成虫なのか、
私もしらなーい。
もしかしたら、学術的には、
いちおうここからね、
って決まってるのかもしれないけど。 |

ゆーないと |
ふーん。でもー、
もし決まってても、誰か人間が、
じゃ、ここからってことにしとくか、
みたいなことなんでしょうね。
セミ的には、関係ないね! てか。 |

りか |
そう! そうなんです。
「てきかく」についても、
そういうことが言いたかったのです! |

ゆーないと |
ええっ。前振り、長っ! |

りか |
「的確」と「適確」も、
どちらも同じことばとして
今は使われていますが、
古くからあったのは「的確」です。
「適確」は「適正確実」とか
「適切確実」ってことばの省略形として
使われていたらしいの。 |

ゆーないと |
なんかよくわかんないけど。
そういうことばが別々にあった、
と。 |

りか |
でまあ、
このことばについて説明されるときには
よく出てくる話なんだけど、
昭和二十二年にできた
「地方自治法 第二百二十二条」では
「適確」っていうことばがあるのね。
これで公にも
なんとなく認められたっていうか、
意味も近いんで、
どちらで表記してもいい、
みたいになったらしいよ。 |

ゆーないと |
えー。なりゆきまかせ!? |

りか |
だよね~~。
でも、今でも「的確」しか見出し語に
載せていない辞典もあるのよ。
「『的確』が望ましい」とか。
なんか、 認められたっていうか、
認められてないっていうか。
だからどっちも正解とも、
こっちが正解とも
言いにくいってわけよ~。 |

ゆーないと |
わかったようなー、
わからんようなー。
あれ?
セミのばあい、
ぜったい成虫になるから
どうなるかわからないっていうのと
ちょっと違いますよね‥‥? |

りか |
うーん。そういえば、
セミは大人になって終わりだけど、
ことばって、まだ
どうなるかわからないからねえ。 |

ゆーないと |
面倒くさいっすねえ。
そんなに変わられたら。
こっちはどうしたらいいんすか。 |

りか |
そういえば、
いつもお世話になっている
三省堂さんの『大辞林』、
第三版がもうすぐ出るらしいよ!
ことばの変化に対応するの、
たいへんだろうね~。 |

ゆーないと |
うちらもがんばって、
生まれ変わり続けよぉ~。 |

りか |
毎日、読み続けるだけだけどね‥‥。 |

ゆーないと |
もうすぐ連載丸2年なのに、
いまだに読めてませんけどね‥‥。 |