うべなう
【諾う】
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山の端に日が落ちると、
山賊たちはいったん攻撃をやめて
村人たちに交換条件を提示した。
「村に伝わる財宝をおとなしく差し出せば
このまま引き上げる。差し出さねば火を放つ。
明日の朝までに返答せよ」
これを受けて
村人たちは長老の家に集まり議論した。
‥‥降伏か、抗戦か。
しかし、やはり結論は容易に出ない。
やがて空が白々と明け始める。
しきたりに従い、判断は長老の一存に委ねられた。
「長老、どうかご判断を」
「ここはやはり財宝をくれてやりましょう!」
「バカなことを言うでない!」
「しかし、火を放たれたら終わりじゃ!」
「長老!」「長老!」「長老!」
座の中央に座った白髪の老人は、
両のまなこをカッと見開き、重々しく一同に告げた。
「‥‥うべなうほかあるまい」
座を包む一瞬の静寂。
やがて村人たちは、つぎのように言い合った。
「『うべなう』ってどういう意味?」
「『うべなう』ってどういう意味?」
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