さなぎ
【蛹】
白石さんはいつも僕に背を向けて眠った。
背中を丸めてぴくりとも動かず眠るその姿は
もろい羽根を持つ昆虫の
さなぎ
を連想させた。
いま思えば、彼女が遠くない未来に
この部屋を去って行くということは
そのようにして象徴的に知らされていたのだ。
梅雨は明け、短い夏が始まろうとしていた。
とじる