ARAI&YONEMITSU
夢中になりたい!
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『陰陽師』1〜7刊行中・12巻完結予定(岡野玲子/原作・夢枕 獏)

ア: 今回のネタは『陰陽師』(コミック)。
『ファンシイ・ダンス』の岡野玲子が夢枕獏とがっちり組んで
展開している平安怨霊退治譚とでもいおーか。
読んだ?
よ: 昨日、朝5時まで呑んでたそーですな。
体と肌のことを考えてだねぇ、
ア: 余計なお世話だってば。我が肌の調子なぞ電脳では伝わらぬ、
あ、読んでないな?
よ: や、いまね4巻。読む速度がちょっとスローですが、
この本の背後に存在する 密度がゆっくりと読むことを
要求しているのではないか、と。
ア: ゆーねゆーね。わたしゃね、『キングダム』
あれ、2日で観たのよ!
よ: 『キングダム』は、一気にグビグビ呑まないと
つらいタイプでしょー。
逆に陰陽師は、1つ読んで、
舌の上で転がして味わう感じが似合うかなー、と。
ア: あんたはソムリエか? 
この作品の魅力っていろいろあると思うんだけど、
やっぱ主人公の安倍晴明とワトソン役の
源博雅の造型っつーか関係だと思うのね。
そのへんどう?
よ: 5巻、読み終わりました。
博雅のびっくりして目がまんまるになるのが好き。
ア: まんまる目で「じーん」。
台詞と表情がナンとも言えない。
よ: 晴明って、クールで無表情なイメージあるけど
けっこう「わははは」とか声に出して笑ってたり 、
照れたり、いろいろしてんだよねぇ。
さすがに、まんまる目にはなってないので、 後半に期待。
ア: 何をつまらぬことを期待してるか。
それにしてもこのふたりの関係っていいわあ。
マンガに男の友情は数々あれど、
ベスト1くらいに好きな取り合わせです。
よ: とてもクールに描かれてて、現代的な友情っていうか。
質問ッ。5巻、玄象を背にしょった博雅が思う、
なぜだ五月でもないのに金縛り… …ってのは、
どーゆー意味?
ア: いいところに気が付いたね、ゲーム作家くん。
五月といえば五月病、五月闇など
どこか不穏なイメージがあろう。
金縛りとはそういうことではないかな。
いわば季節に掛けられた「呪(しゅ)」よ。
よ: 口調だけ、晴明はいりましたな。
ア: じゃ、こういう推理はどう? 
1巻の「玄象といふ琵琶、鬼のために盗らるる こと」で、
博雅が物怪にじぶんの名前を教えてしまい、
「呪」に掛けられて金縛り状 態 になってしまうよね。
たぶんね、あの話五月頃の設定なのよ。
よ: ほう。
ア: 冒頭で桜が散って、ラストでは藤が満開。
つまり晩春から初夏ってことでしょ。
それで「五月でもないのに金縛り」。
よ: 6巻、読んでます。そうやもしれぬね。
6巻の冒頭、「この時分の季節になると
おれはなにやら心が騒ぐのだよ」という博雅に対して、
清明が「それは金縛りの予 感というやつか? 
もはや年中行事だな」って返してるし。
博雅って、毎年、春にそ ーゆー目にあってるのかもね。
ア: お、6巻に入りましたか。
「桃園の柱より児の手の人を招くこと」のエピソー ド、
「太極の図」とか「五芒星」の解説が、
晴明と博雅の会話ってかたちで、
かなり硬派に展開されている。
ここからは「陰陽」と「平安京」といった要素を頭に入れて、
物語をちょっと巨視眼的に追っていったほうが面白いですよ
っていう作者からの メッセージのような気がした。
よ: と、話、金縛りにもどるけど、ちらと見たのですが、
「玄象といふ琵琶、鬼のために盗らるること」は
夢枕獏さんの原作では、6月ってことになってるよーです。
ア: あらそう。
でもね、原作とマンガは結構違ってるとこ多いみたいよ。
よ: ほう。たとえば?
ア: たとえば4巻の『黒川主』のラスト。
原作だとねえ、人と獺のあいだに
うまれた赤子の生死は不明になってるけど、
マンガだと、父親たる獺、
つまり黒川主じしんが命を賭して連れ去っていくのよね。
わたし、この一話が全編を通していちばん好きかも! 
なんだけど、それは岡野玲子のこの脚色あっての思い入れ。
よ: 黒川主、最初のカラーの絵が妖艶でよいよねぇ。
あと、装丁! 
祖父江さんの装丁、カバーの裏側の朱文字がかっこいい。
ア: でしょでしょ、ぞくぞくしちゃうよねえ。
で、7巻読み終わった?
よ: ん? な、なぜだ、五月でもないのに金縛り!
ア: ……しゃもじでも叩いてろ。

●『陰陽師』データ
 陰陽師 いかにも青山ブックセンターあたりで売れてそうな
コミックだけど、フツーに
エンターテインメントしてて読みやすいよ。
夢枕獏も岡野玲子も
「この作品をマンガ化してもらいたい(したい)」
と思ってたという
相思相愛なノリが全編にみなぎっていて、
読んでるほうもしあわせになってくる。
夢枕獏の原作もおもしろいよ。
文芸春秋から3冊でてる。
そうそう中央公論から『平成講釈 
安倍晴明伝』てのも出てるけど、
こっちはまるで別物。

まず、博雅がいないし、晴明がちっとも美形じゃないの、
てゆーか酒呑童子。
主人公はやっぱ美しくなきゃね!(アライ記)

●次号予告
よ: さて、次回のネタは
『1999年の夏休み』って映画はどう?
ア: よねみつさん、好きなんだよね。
ホームページでもやってたし。
よ: 来年、1999年だしね。1999年といえば、
『1999.8.18 
ノストラダムスの謎をインターネットが解いた!』
(堀江健一著・二見書房)も面白かった。
ア: そーゆーの信じてるの?
よ: タイトル見て笑ちゃったから購入しました。
ノンフィクション形式を借りたフィクションとして
読めば面白い。
じゃ、次回はこの2つで
「夢中になりたい1999世紀末スペシャル!」
とゆーことで。
ア: 3回めでもうスペシャル? 
ずいぶん安いスペシャルだこと。
本のほうはともかく、『1999年の夏休み』ってさあ、
たしか、少女マンガが原作だったよね。
で、女のコがいっぱい出てくる映画って印象がある。
大島弓子?
よ: 萩尾望都『ト−マの心臓』が原案。
登場人物はすべて少年という設定であるが、
演じているのはすべて少女という映画だよ。
ア: ふーん。オスカー誰がやってるのかなあ、好きなんだけど。
で、ユリスモールも女のコが演ってて、
女のコのみたいなエーリクも女のコで、えーとえーと、
なんか混乱してきました。
よ: ちなみに、すべて日本人の名前になってますけどね。
ア: わかった。ビデオ借りてきます。
本も、気が向いたら買ってくるね。
  To Be Continued

1998-07-28-TUE

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