ア: |
今回のネタは『陰陽師』(コミック)。
『ファンシイ・ダンス』の岡野玲子が夢枕獏とがっちり組んで
展開している平安怨霊退治譚とでもいおーか。
読んだ? |
よ: |
昨日、朝5時まで呑んでたそーですな。
体と肌のことを考えてだねぇ、 |
ア: |
余計なお世話だってば。我が肌の調子なぞ電脳では伝わらぬ、
あ、読んでないな? |
よ: |
や、いまね4巻。読む速度がちょっとスローですが、
この本の背後に存在する 密度がゆっくりと読むことを
要求しているのではないか、と。 |
ア: |
ゆーねゆーね。わたしゃね、『キングダム』
あれ、2日で観たのよ! |
よ: |
『キングダム』は、一気にグビグビ呑まないと
つらいタイプでしょー。
逆に陰陽師は、1つ読んで、
舌の上で転がして味わう感じが似合うかなー、と。 |
ア: |
あんたはソムリエか?
この作品の魅力っていろいろあると思うんだけど、
やっぱ主人公の安倍晴明とワトソン役の
源博雅の造型っつーか関係だと思うのね。
そのへんどう? |
よ: |
5巻、読み終わりました。
博雅のびっくりして目がまんまるになるのが好き。 |
ア: |
まんまる目で「じーん」。
台詞と表情がナンとも言えない。 |
よ: |
晴明って、クールで無表情なイメージあるけど
けっこう「わははは」とか声に出して笑ってたり 、
照れたり、いろいろしてんだよねぇ。
さすがに、まんまる目にはなってないので、 後半に期待。 |
ア: |
何をつまらぬことを期待してるか。
それにしてもこのふたりの関係っていいわあ。
マンガに男の友情は数々あれど、
ベスト1くらいに好きな取り合わせです。 |
よ: |
とてもクールに描かれてて、現代的な友情っていうか。
質問ッ。5巻、玄象を背にしょった博雅が思う、
なぜだ五月でもないのに金縛り… …ってのは、
どーゆー意味? |
ア: |
いいところに気が付いたね、ゲーム作家くん。
五月といえば五月病、五月闇など
どこか不穏なイメージがあろう。
金縛りとはそういうことではないかな。
いわば季節に掛けられた「呪(しゅ)」よ。 |
よ: |
口調だけ、晴明はいりましたな。 |
ア: |
じゃ、こういう推理はどう?
1巻の「玄象といふ琵琶、鬼のために盗らるる こと」で、
博雅が物怪にじぶんの名前を教えてしまい、
「呪」に掛けられて金縛り状 態 になってしまうよね。
たぶんね、あの話五月頃の設定なのよ。 |
よ: |
ほう。 |
ア: |
冒頭で桜が散って、ラストでは藤が満開。
つまり晩春から初夏ってことでしょ。
それで「五月でもないのに金縛り」。 |
よ: |
6巻、読んでます。そうやもしれぬね。
6巻の冒頭、「この時分の季節になると
おれはなにやら心が騒ぐのだよ」という博雅に対して、
清明が「それは金縛りの予 感というやつか?
もはや年中行事だな」って返してるし。
博雅って、毎年、春にそ ーゆー目にあってるのかもね。 |
ア: |
お、6巻に入りましたか。
「桃園の柱より児の手の人を招くこと」のエピソー ド、
「太極の図」とか「五芒星」の解説が、
晴明と博雅の会話ってかたちで、
かなり硬派に展開されている。
ここからは「陰陽」と「平安京」といった要素を頭に入れて、
物語をちょっと巨視眼的に追っていったほうが面白いですよ
っていう作者からの メッセージのような気がした。 |
よ: |
と、話、金縛りにもどるけど、ちらと見たのですが、
「玄象といふ琵琶、鬼のために盗らるること」は
夢枕獏さんの原作では、6月ってことになってるよーです。 |
ア: |
あらそう。
でもね、原作とマンガは結構違ってるとこ多いみたいよ。 |
よ: |
ほう。たとえば? |
ア: |
たとえば4巻の『黒川主』のラスト。
原作だとねえ、人と獺のあいだに
うまれた赤子の生死は不明になってるけど、
マンガだと、父親たる獺、
つまり黒川主じしんが命を賭して連れ去っていくのよね。
わたし、この一話が全編を通していちばん好きかも!
なんだけど、それは岡野玲子のこの脚色あっての思い入れ。 |
よ: |
黒川主、最初のカラーの絵が妖艶でよいよねぇ。
あと、装丁!
祖父江さんの装丁、カバーの裏側の朱文字がかっこいい。 |
ア: |
でしょでしょ、ぞくぞくしちゃうよねえ。
で、7巻読み終わった? |
よ: |
ん? な、なぜだ、五月でもないのに金縛り! |
ア: |
……しゃもじでも叩いてろ。 |
●『陰陽師』データ
いかにも青山ブックセンターあたりで売れてそうな
コミックだけど、フツーに
エンターテインメントしてて読みやすいよ。
夢枕獏も岡野玲子も
「この作品をマンガ化してもらいたい(したい)」
と思ってたという
相思相愛なノリが全編にみなぎっていて、
読んでるほうもしあわせになってくる。
夢枕獏の原作もおもしろいよ。
文芸春秋から3冊でてる。
そうそう中央公論から『平成講釈
安倍晴明伝』てのも出てるけど、
こっちはまるで別物。
まず、博雅がいないし、晴明がちっとも美形じゃないの、
てゆーか酒呑童子。
主人公はやっぱ美しくなきゃね!(アライ記)
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●次号予告 |
よ: |
さて、次回のネタは
『1999年の夏休み』って映画はどう? |
ア: |
よねみつさん、好きなんだよね。
ホームページでもやってたし。 |
よ: |
来年、1999年だしね。1999年といえば、
『1999.8.18
ノストラダムスの謎をインターネットが解いた!』
(堀江健一著・二見書房)も面白かった。 |
ア: |
そーゆーの信じてるの? |
よ: |
タイトル見て笑ちゃったから購入しました。
ノンフィクション形式を借りたフィクションとして
読めば面白い。
じゃ、次回はこの2つで
「夢中になりたい1999世紀末スペシャル!」
とゆーことで。 |
ア: |
3回めでもうスペシャル?
ずいぶん安いスペシャルだこと。
本のほうはともかく、『1999年の夏休み』ってさあ、
たしか、少女マンガが原作だったよね。
で、女のコがいっぱい出てくる映画って印象がある。
大島弓子? |
よ: |
萩尾望都『ト−マの心臓』が原案。
登場人物はすべて少年という設定であるが、
演じているのはすべて少女という映画だよ。 |
ア: |
ふーん。オスカー誰がやってるのかなあ、好きなんだけど。
で、ユリスモールも女のコが演ってて、
女のコのみたいなエーリクも女のコで、えーとえーと、
なんか混乱してきました。 |
よ: |
ちなみに、すべて日本人の名前になってますけどね。 |
ア: |
わかった。ビデオ借りてきます。
本も、気が向いたら買ってくるね。 |
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To Be Continued |