ARAI&YONEMITSU
夢中になりたい!
広島・東京・世界

第11回 「ER」

ア: ああ、ついにサードシーズンを観終わってしまった。
これから先の人生が砂漠のようだよ。
よ: ええと、とりあえず、ようやく6巻まで見ました。
サードシーズンというと、ビデオ何巻ぶん?
ア: じゃーん、35巻あんだよー。時間にして約70時間分、
三日三晩徹夜すれば全部観れるよ。
よ: うーん、今、7巻まで見ましたが、そんなにあんの?
毎週1本ぐらいで見るほうが、楽しみ多そうですな。
ちと、連続して見たので、さすがに飽きてきた。
ア: 飽きちゃった?
わたしは、も一回アタマから観ようと思ってるよ。
もう説明不要なほど大人気な『ER』ですが、
マイケル・クライトンと
スティーブン・スピルバーグという
『ジュラシック・パーク』チームの手掛ける
医療テレビドラマシリーズです。
よ: 『ER』は『emergency room』
(緊急医療救命室)のことっすね。
ア: そこで働く若きお医者さんや
そのタマゴや看護婦さんたちの日常を
ハイスピードかつリアルに描く、というより
「追っ掛ける」感覚が新鮮で、
1話目からフォーリンラブなのです。
よ: すっげー忙しくて、仮眠4時間で、
ばりばり連続して働く!って描写が多々あるよね。
ア: 仮眠室のシーン多いね。看護婦に嫌われちゃうと、
わざと起こされて、地獄だったりね。
よ: でも、先生たち、クリスマスやハロウィンや誕生日で、
しょっちゅうパーティーやったり、恋愛問題多発だったり、
トイレでHしたり、ずる休みしてH三昧だったり、
どうかね? と思うのだけど、
そりゃ、私が熱血日本的社員でありすぎなのか?
ア: そう? サプライズパーティーとか楽しいけどなあ。
クリスマスは看護婦さんたちが仮装してたり、
聖歌隊の練習してたり
「やっぱ、アメリカさんは陽気だね」って感じで。
病院内エッチもいいと思うな、
「うん、アメリカさんはタフだな」って。
毎回じゃしらけるだろうけど。
よ: 陽気なのはいいけど、7巻までに、3、4回ぐらい
パーティーやってんじゃん。しかも飾り付けして、
救急患者運び込まれる邪魔になってたりするし。
ア: いいじゃん、どうせ死ぬときゃ死ぬんだし。
七夕で「早く治りますように」とか
患者の短冊かかってたりしたらシャレにならんけど。
よ: いや、あんだけ緊迫した緊急病棟だったら、
ぎりぎり助かったかもしれない人が、
かざりつけのせいで助からなかったってこともありえる、
と思ってしまうのだなぁ。
ア: いいのいいの、死んじゃっても恨みっこなしなの。
それも神の思し召し。エッチだってサービスサービス。
よ: うーん、サービスですかぁ、サービスねぇ。
ア: だってハナのある役者がいるわけじゃなし。
ジョージ・クルーニーも人気でたの
ずっとあとからでしょ? ただでさえ主役の
アンソニー・バグワーズ、ハゲだし地味だし。
「ああ、こんな人いそう」っていうリアリティは
すごいけどさ。ちょっと色をつけとかないと
ってのもあるんじゃないの? 
よ: そもそも、病院内でHしてるのが見つかって、
その後で「あいつは堅物だ」みたいなセリフがあるけど、
日本じゃ、病院のトイレでHしてるの
見つかるよーなヤツは堅物とは言わぬわ。
ア: ふつう、つぎの日会社行けないよね。
でもま、そういう要素もないと、
運び込まれる病人の数だけ
マシンガンよろしく挿入される、
死んだり生きたり生き返ったりで、疲れてしまいそう。
よ: なんか、昔、アメリカ映画で、
「週50時間も働かされて、人間扱いされてないぞ!」
と愚痴るシーンがあって、
「おまえ、一回、ゲーム製作に携わってみるかね?」
と怒りを覚えたことあり。
ア: よねみつさんって働きものなんだね。
感心だなあ。
よ: あとね、黒人の人、ベントンだっけ? 最初の数話では、
マシンガントークぶっぱなしてましたが、後になると、
むちゃむちゃ無口だが、どうしたんでしょ。
最初のあたりはアドリブでばんばん
しゃべってしまったけど、怒られちゃったの?
性格設定が変わりまくりでしょ、あれじゃ。
ア: ねえねえ、いきなり細かい話になるのもなんだし、
どれか1話きめて解剖してみたりとかしません?
よ: 手伝いに来ていた黒人少年。
彼、いつのまにか居なくなっちゃってますよ。
更正のために手伝いさせてたんじゃないの?
ア: ああ、きっとキャラが薄かったから
クビになったんでしょうよ。あと、ボブだっけ?
ポーランドから来た心臓外科医のおねえちゃんも
見事に消えました。そう、人気の出ないキャラは
抹殺されるの、そういう渡世なの!
よ: ふーん。でも、最終話とかでは、
全登場人物もどってきたら、楽しそうだよね。
死んだ人とかも、どうにかして総登場で。
ア: 宝塚かっちゅーの!
とにかく感心してしまったのは、
惜しげもなく放出されるエピソードの山なのね。
いっこ取り上げても
「ヒューマンドラマスペシャル2時間半
 ママ、ぼくの小鳥さんはどこ?」
みたいなのが作れちゃうくらいのヤツが、
同時多発で消費されるでしょ。
しかも、盛り上げようということをしない、
タメをきかすとか。
よ: へたすりゃ、新春かくし芸大会のパロディドラマに
なりかねない構造なんだけど、それをきっちり
丁寧に作ってあって、そーとー凄いよねえ。
1話の最初とか、何人出てた? 50人ぐらい
登場人物いたよーな感じで、それが怒涛のごとく
流れていくのはやっぱり圧巻っすね。
ア: でしょでしょ?
ま、サードシーズンくらいになるとだんだんそのへんも
怪しいんだけど、ファーストシーズンにおける
ドラマの濃さ! ひとつのドラマに執着するより、
ある出来事が玉突き状に発展して行き、
それをすべて見届けているのは視聴者だけであるという。
よ: 「プライベートライアン」の最初のシーンも、
そうなんすよ。ただただ殺されていく戦場を、
ただただ見させられるという
ドラマチックなタメやうねりを排除して
怒涛のごとく流れていくの。
ア: スピちゃんがんばってるう! 
例えば、難産の赤ちゃんを救おうとして
ケリーとヒステリックにやりあってるスーザンは、
私生活では、姉に押し付けられた赤ちゃんの世話の
困難さと芽生えつつある小さな姪への愛情の深さに
狼狽している最中なのよねーといったことは、
観てるこっちが気付いて注目するしかないという描き方。
そこが好きなんだなあー。
くーっ、スーザンカムバッーック!!
よ: おお、興奮するでない。
興奮して文章長くて読み取りにくいぞ。
もしかして、こーゆーの群像劇っていうんですか?
おいらよく知らないけど。
ア: 群像劇っつうと『李香蘭』とかイメージしちゃうけど、
どーなんでしょー。
よ: なにそれ? 酒の名前?
ア: 劇団四季の歴史ミュージカルだよん。
たいへんなんだ、「日華事変が起こった〜♪」とか
いちいち歌っちゃって。
長谷部浩さんが『劇場で死にたい!』で
岩松了芝居の特性に触れてらしたけど
『ER』と共通してるとこ多い思うな。
よ: 劇作家の平田オリザさんのオリザって
本名なんだってね。すごいよね、オリザって。
ラテン語だって。
って、今回、あんまり話がかみあってない感じですな?
ア: そうじゃ、オリザニンなのじゃ!
とにかく一度観るべしなのじゃ『ER』!

『ER』データ
『ディープ・インパクト』のミミ・レダーって
この作品で評価を確立したらしい。
そのせいかどーかはしらんが、
とくに女性キャラが魅力的だと思う。
派手なストーリーがあるわけではないので
魅力を伝えるのが難しいのだけど、
見始めたら中毒になりますぜ。
うーん、こんなに夢中になったドラマって
『ツインピークス』以来。
タランティーノが演出してたりユアン・マクレガーが
ゲスト出演している回もあり。
夏に4シーズン発売予定ですって、わーい!
(アライ記)

●次号予告
よ: 今回、途中で、私がメールとめちゃって
あいだが開いたので、ちょーとへんな感じに
なっちゃいましたが、それも醍醐味ということで。
次回、米光のおすすめは「サザエさん」を見る!
でいこうと思います。
ア: カツオの声が変わってるんだってねー、
わたしもう何年見てないだろう。最近面白いの?
よ: 私も見てません。
今回のお勧めは、サザエさんではなくて、
「サザエさんを見る」なのですね。おいらも、
少なくとも10年ぐらい見てないよーな気がするよ。
カツオの声が変わっているというのも初耳。
ア: ほっほーう。
  To Be Continued

1999-03-01-MON

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