宮沢賢治の
幼児性と大人性

  • 時間

    87
  • 音質

    無限アカデミー現代詩講座で
    行われた講演。
    音源はクリアに収録されているが
    若干音が割れている個所がある。

  • 講演日時:1983年10月26日
    主催:詩誌「無限」事業部
    場所:明治神宮外苑絵画館文化教室
    収載書誌:弓立社『吉本隆明全講演ライブ集 第8巻』(2004年)




宮沢賢治の詩は、
自然の景観や自然現象とのさまざまな交感を、
「語りの言葉」で語っていきます。
しかしその途中で、突然違う位相からの言葉が
括弧のなかに入ってきます。
そうかと思うとまた違う言葉が
二重括弧になって入ってきます。
こうした言葉を「否定性の言葉」として考えてみると、
それは童話作品のなかでは
キーワードとして出てきていることがわかります。
宮沢賢治という人の世界には、
幼児性を象徴するキーワードが一方にあり、
もう一方には得体のしれない
混濁した大人の独語としてしか存在できない
言葉があります。
そのような幼児性と、得体のしれない大人性という
両者の差異が、終始一貫宮沢賢治を葛藤せしめた
根本にあることではないかと思われるのです。