- 糸井
- 由伸さんは、たしか、
桐蔭学園でも、慶應大学でも
キャプテンでしたよね?
- 高橋
- はい。
正直にいうと、好きではなかったし、
やりたくもなかったですけども、
高校、大学とチームのリーダーを経験したことは、
いまの自分につながっているかもしれません。
- 糸井
- リーダーを続けているうちに、
いつの間にか自分が変わっていく
ということだってあるでしょうし。
- 高橋
- そうですね。
当時、自覚はなかったですけど、
いま思うと転機だったような気もします。
- 糸井
- きっと、「なんで自分に声がかかったんだろう?」
というところから、はじまるわけですよね。
「ほかにもいるじゃないか?」
「なんで俺なんだよ?」っていう。
- 高橋
- はい。
どちらかというと、
自分のことだけしたいタイプなので(笑)。
- 糸井
- もともとは。
なのに、ずーっとリーダー役ですね。
- 高橋
- なんか、けっきょく、そうなってますよね。
- 糸井
- で、今度もまた
「おまえ監督だよ」って言われたわけで。
- 高橋
- はい。
- 糸井
- 原さんは、もう、最後の試合のときに、
辞めることは決めてたわけですよね。
- 高橋
- そうでしたね。
負けた瞬間に、ああいう形で、発表されましたから。
- 糸井
- 個人的な見方ですけど、原さんは、
後任を由伸さんにするのも決めてたんじゃないかなぁ。
あの、シーズン最後のヤクルトとの一戦、
「最後に高橋由伸が出てくる」っていうムードで、
みんな信じて待ってたんですよ。
- 高橋
- ああ、そうなんですか。
- 糸井
- ぼくにはそう思えました。
優勝を逃してるし、最後の試合も勝てそうにないし、
悔しいから帰りたいという気持ちもあるんですよ。
でも、最後に「由伸がきっと出るから」って、
それを見届けるような気持ちで観てた気がする。
だから、いま思うと、原さんはあの試合を
そういうふうにつくったんじゃないかな、って。
なんか、すごい演出だったように思えて。
- 高橋
- そうですね‥‥。
原監督の最後の采配が、
私の代打だったわけですし。
- 糸井
- まさに「最後の采配」でしたよね。
しかも、それが去年を象徴するような
負け試合だったというのも、
意味があるように思えます。
あの、「うまくいかない1年」を、
選手兼コーチとして経験したというのは、
由伸さんが新しく監督になるにあたって、
とてもいい経験だったような気がするんですよ。
- 高橋
- まあ、去年のチームは、チームも個人も
悪い状態がほとんどでしたけど、
ぼくはその前のよかった状態、
強かったジャイアンツも当然知ってますし、
そこからメンバーはそれほど激しく
変わっているわけではないので、
ひとりひとりとやり取りしていけたらと思いますね。
ただ、やっぱり、その距離感というのがね、
ぼくも、彼らも、お互いまだ、
どうしていいかわからない部分というのはあるかな。
- 糸井
- ちょっと遠慮みたいなものがあるんですか。
- 高橋
- そうですね。
やっぱり、いままで先輩として
一緒にいた人が急に監督になるわけですから、
当然、変な意識はあるんだろうな、
というのは感じますね。
- 糸井
- キャンプや遠征のときの食事なんかでも、
いままでは一緒に食べてたのに、
妙に距離ができたりとか?
- 高橋
- まぁ、会場は一緒ですけど、
同じ時間帯に食べなかったり、
違うテーブルで食べてたりはしますね。
ぼくらも、食事のときぐらいは、
気を遣わずにゆっくりしてほしいし。
- 糸井
- やっぱり、選手は気を遣うものなんですねぇ。
- 高橋
- こう、なんていうんでしょう、
無意識に、コーチ、監督に対しては、
つかう言葉が合ってるかなとか、
ちょっと警戒してるはずなので、選手は(笑)。
- 糸井
- 上司ですもんね、いわば。
- 高橋
- ははははは。
まぁ、わかんないですよね。
気を遣わないほうがいいっていう人もいるし、
距離が近すぎるのはよくないって
おっしゃる人もいるし。
- 糸井
- 大事なのは、
いっしょに食事をするかどうかじゃない
っていう気はしますよね。
- 高橋
- はい、はい。
- 糸井
- ほんとに困るだろうな、って思うのは、
きつい通達をするようなときでしょうね。
つまり、新しい選手が試合に出るというのは、
いままで出ていた誰かが出られなくなる、
ということなので。
これからは、由伸さんがそれを決めて、
伝えなくちゃいけない。
- 高橋
- だから、割りきらないとだめですよね。
試合に出られる選手の人数も、
ベンチに入れる選手の人数も決まってますから、
そこはもう、しょうがないですしょね。
全員がハッピーでいられることなんて
ないと思ってますから。
そこはもう、私がやりたいことを
はっきりと、やっていくしかないと思ってます。
- 糸井
- そういうイメージはもう、
見えかかってるんでしょうね、きっと。
厳しい決断を伝えるにしても、
たぶん、由伸さんには選手としての経験が
生々しく残っているでしょうから、
こう言われたらイヤだな、
というようなことも、わかるでしょうし。
- 高橋
- そういうのは憶えてますね。
だから、逆にちょっと
気を遣ってしまうところもありますね。
情‥‥というわけでもないですけども、
どこかね、まだ、厳しくなりきれてないかなぁ、
というところは、自分でも感じます。
- 糸井
- 由伸監督の代わりに、
悪役をする人も必要になるんでしょうね。
それは、誰だろう、村田(真一)さんかな。
- 高橋
- そうですね(笑)。
- 糸井
- 即答しましたね、いま(笑)。
<つづきます>
2016-03-26-SAT