糸井 |
すっかり話が『新選組!』から離れました。
少し話を戻して、
大団円を迎えたいと思いますが。
え〜、私たち、誰に頼まれたわけでもなく、
『新選組!』という番組の一ファンとして
みんなにこの楽しさを味わってほしいなと思い、
やってきたんですが。 |
八嶋 |
はい(笑)。 |
糸井 |
DVDボックスというものが
いよいよ出そろうわけですが。 |
八嶋 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
あの、たぶん、八嶋さんも、
あれが売れたからといって、
それほど経済的に潤うようなことは‥‥。 |
八嶋 |
ないと思いますね、はい(笑)。
ま、ごくわずかにはあるのかもしれませんが、
びっくりするくらい安い値段です。 |
糸井 |
おそらくそうですよね。
まあ、すごい人数の役者さんが出てますしね。
さらに言えば大道具さんやら何やらの、
さまざまなクリエイティブが
あそこに乗っかってるわけだから、
そういうもんなんでしょうね。 |
八嶋 |
まあ、でも、DVDになるかどうかも
よくわかんなかったから、
よかったですよ。きちんと出て。
しかもすごく早く出ましたし。
それも、ファンの人たちの
「DVDにしてくれ!」みたいな
サポートがあったからだと思いますけど。 |
糸井 |
我々も及ばずながら、
叫ばせていただきました。 |
八嶋 |
いや、たぶん、すごく効いてますよ。
NHKの人たちが「売れるかも?」って
がっつり勘づきましたから。 |
糸井 |
あ、そうですか。
まあ、「売れそうだな」って思わせるのに、
すっごく都合のいい存在ではあったと思う。 |
八嶋 |
あははははは。 |
糸井 |
どうしても、番組っていうのは
レーティング(視聴率)で
みんな判断しますからね。
「レーティング」と「買う」は違うんですよね。 |
八嶋 |
違いますよね。 |
糸井 |
それは『池袋ウエストゲートパーク』とか、
『木更津キャッツアイ』とかでもそうですよね。 |
八嶋 |
宮藤(官九郎)君の作品はもう、
ぜんぶそうですよね。 |
糸井 |
今回の『新選組!』も
たぶんそういうものだと思うんですけど、
まあDVD発売にあたって、我々としては
みんなが見てくれればいいなっていう思いで、
ぜひ買ってほしいと言いたいわけですが。
八嶋さんとしては、このDVD、
「こういう気分で見るといいですよ」
みたいなのはありますかね。
「観柳斎からのDVDガイド」みたいな。 |
|
八嶋 |
ああ。ええと、ぼくが、
自分で観るときに、けっこうよかったのは、
少しお酒を飲みながら観るということですね。
なんとなく気分も少し高揚するし。 |
糸井 |
ああ、高揚感ね。大切ですね。 |
八嶋 |
高揚感とともに観るのが
いいんじゃないかと思うんですけどね。 |
糸井 |
あら探しするような観かたじゃなくね。 |
八嶋 |
そうですね。
あらはたぶんいっぱいあると思うんですよ。
単純に、ぼくら未熟な俳優が
いっぱい出てるわけですから。 |
糸井 |
八嶋さんは、そうやって、何気なく
「ぼくら未熟な俳優が」とか、
敬虔なクリスチャンみたいなことを
さらっと言いますね(笑)。 |
八嶋 |
そうですね(笑)。
でも、そのときはぬかりなく
「ぼく『ら』」って言いますけどね。
「ぼく」って言えばいいところを。 |
糸井 |
あははははははは。
お見事です(笑)。 |
八嶋 |
いやでもほんと、
あらはいっぱいあると思うけど、
お酒を飲める人は飲んだりして、
観ていただけるといいと思いますよ。
あと、少しずつ観るよりも、
まとめてザーッと観たほうがいいと思います。 |
糸井 |
そうですね。ぼくらも、
前半部分をまとめて観直したときは、
ものすごく快感がありましたから。
1話が45分で短いっていうのも安心ですよね。 |
八嶋 |
うん。ジョン・健・ヌッツォの曲に乗って、
どんどん観てほしいですね。 |
糸井 |
あとは、今日うかがった、
「映ってないところで
いろいろやっている人たち」
の話っていうのは、DVDを観直すときに、
すごくふくらみを
持たせてくれるんじゃないかと。 |
八嶋 |
脇の人たちだけを追って観てもらうのも、
いいかもしれませんね。
ずーっと谷三十郎だけを観てみるとか。 |
糸井 |
ははははははは。
ええと、あとは、ラジオ番組風の展開ですが、
八嶋さんの今後の仕事で、
お知らせすべき情報などあれば。 |
八嶋 |
あ、この8月に、人生初となる、
主役の舞台をやるんですよ。 |
糸井 |
おお。それはなんですか。 |
八嶋 |
『エドモンド』っていう海外の作品で。
青山円形劇場で、8月にやります。
いろんなおもしろい人がたくさん出ますので
よろしくお願いします。 |
糸井 |
主役ですからね、なんといっても。
メガネノオカッパっていう状態から考えたら
すごい話ですよね。 |
八嶋 |
メガネノオカッパでやってやろうかなって
思うくらいなんですけど。 |
糸井 |
ははははははは。
たのしいんでしょうねえ。
まあ、緊張もしそうですけど。 |
八嶋 |
ええ、じつはちょっとね、
怖くなってきてるんですよ(笑)。
さっき話した雑草の話じゃないけど、
地上になんとか顔を出して、
じゃあどういうふうに花を咲かせるのか、
そのためになにをやればいいのかっていうときに
やるべきことが
無限にあるような気がしてしまって。 |
糸井 |
いろんなものを咲かせたくなっちゃうんですね。 |
八嶋 |
はい。
で、与えられたりもするじゃないですか。
この花を咲かせろとかいう。
だからそのために
準備しておくこととか含めると、
そりゃ無限にあるなと思ったら、怖くて。
まあ、ようやく芝居する入り口に
立ったみたいな気分ですが。 |
糸井 |
それなりに長くやってるつもりだったのが
その都度引っくり返されちゃうんですね。 |
八嶋 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
でもまあ、そうやって、
いろんな人と出会っていくわけですね。
それもこれも、野心、
「小さい野心」のおかげですね。
いろんな人に出会えるチャンスが
増えたっていうことで言うと、
「小さい野心」は
持ってたほうがよかったですね。 |
八嶋 |
はい。 |
糸井 |
必ずしも大きな夢は持たなくてもいいんだけど、
「オレはこのままでいいや」って思ってると、
会えないんですよね。いろんな人に。 |
八嶋 |
そうなんですよ。
だからあの、ノミの話とおんなじで‥‥。
あ、『トリビア』でノミの話が出たときって、
糸井さん、出てらっしゃいましたっけ? |
糸井 |
いえ、知らないです。 |
八嶋 |
あの、ノミ、いますよね。犬とかについてる。
あのノミって、
ものすごくジャンプするんですけど、
着地する能力って、ないんですって。
でも、とにっかく、跳ぶんですよ。
で、目もあんまりよく見えないんです。
耳もあんまり聞こえないらしいんです。
でも、とにっかく、跳ぶんですよ。 |
糸井 |
はあ(笑)。 |
八嶋 |
動物が近づいてきたら、寄生するために、
バーーーンって跳ぶんですって。
人間の大きさの縮尺でいうと、
東京タワーを飛び越えるくらい跳ぶんです。 |
糸井 |
はぁ〜。 |
八嶋 |
そのときに、足という足をこう、
ぜんぶ大きく広げて、
ぐるぐる回りながら跳ぶんです。 |
糸井 |
え、回るの? |
八嶋 |
はい。こう、回りながら、跳ぶんですよ。
(ノミのマネをしながら)
で、どっかに引っかかればいいわけです。
引っかかんなかったら、ドーンと落ちて、
ビヨンビヨンビヨンってなって、
でも、また跳ぶんですよ。
だから、1回でうまく犬にくっついて、
一生安泰なノミもいれば、
何百回跳んでもダメなやつもいるっていう、
そういうトリビアだったんですけどね。 |
糸井 |
いいね、それ。 |
八嶋 |
オレ、ちょっと感動したんですよ、それ。 |
糸井 |
いいねえー(しみじみ)。 |
八嶋 |
ここ1コ、引っかかったらもういい。
一生食うに困らないわけですよ、そいつは(笑)。 |
糸井 |
大博打だね、ノミ。はあー。
全身全霊を込めて、跳ぶんだね。 |
八嶋 |
なにか引っかかったらいいなって思いながら
バンバン跳ぶっていうのが、
すげえ、オレたちっぽいなと思って。 |
糸井 |
誰か、人に会えたり、
そういう場があったり、できたり。
いてもいいんだよっていう
場所が増えるっていうことは
やっぱりすごいことだね。 |
|
八嶋 |
いや、そう思いますね。 |
糸井 |
そこには野心的になっちゃうね。 |
八嶋 |
はい。 |
糸井 |
今日はどうもありがとうございました。
ほんと、おもしろかったです。 |
八嶋 |
いえいえ、とんでもないです。
ありがとうございます。 |