ほぼ日テレビガイドシリーズ  秋の連ドラチェック2009  あややとふたりのプロフェッショナル

せっかく森下さんがいるんだから
『JIN−仁−』についてたっぷりと。

TBS 日曜劇場「JIN -仁-」
TBS系 日曜日 21時〜
出:大沢たかお 中谷美紀 綾瀬はるか
── ここらへんで、
『JIN−仁−』に触れておきましょうか。
あやや 触れましょう、触れましょう!
『JIN−仁−』は、
森下さんが脚本を担当されています!
森下 ありがとうございますー。
荒井 よっ、脚本家!
── ほかのドラマと同等に語るのは
なかなか難しいでしょうから、
前回の森下さんの名言、
「じぶんちのカレーを
 まずいと言うカレー屋はいません」
という精神にのっとって、
ふつうに質問したり答えたり
しちゃえばいいんじゃないかと思います。
あやや ひゃあ!
森下 よろしくお願いします−。
あやや ぐふふ、ふふふ、ああああ、幸せ。
わたし、こんなふうに、
ドラマの製作者の方に
直で取材するのって夢だったんです!
またしても、ここに夢が!
── いいから、わかったから、進めて。
あやや ハイ、じゃあ、行きます!
だふふ。もふふふ。まふふふ。
ええと、あの、『JIN−仁−』が
綾瀬はるかさんと中谷美紀さんの
ダブルヒロインの形になってますが、
どちらがメインの役柄として
描かれているんでしょうか?
森下 ああー、これはですねぇ‥‥。
あやや くぁーーーーーー、
あの、ちょっとぉ、
待ってぇ、すいませぇへぇん‥‥。
── なんだ、なんだ、なんだ。
荒井 大丈夫ですか、
目つきも顔色も尋常じゃないですよ。
あやや ヤっバーい、これ!
なに、ちょっとちょっと。
すごいいま、ヤバい。
森下 めまい?
荒井 っていうか、軽い気絶?
── うっとりしすぎちゃった?
あやや そそそ、そうなんです!
── つまり、
「ドラマの脚本家にインタビューする自分」
というシチュエーションに酔ったわけだ。
あやや ままま、まさに、そのとおり!
ヤバーい、ヤバーい、どうしよーー。
荒井 ははははは。
あやや もほほほほほ。だって、
「ヒロインは中谷さんなんですか?
 綾瀬さんなんですか?」って、
脚本家の人にわたしが訊いてて、
あっ、ほんものだぁ、と思ったら、
クラクラクラっとしちゃって‥‥。
── これ、このまま記事にして、
信じてもらえるかしら。
荒井 まぁ、過剰なデフォルメと
とらえられるでしょうねぇ。
あやや だって、わたし、いま、
かなっちゃった、夢が!
やっべー。どうしたらいいですか。
これは、ヤバい、クライマックスだ。
── けど、考えてみると、
「夢がかなった瞬間の人」を
目の当たりにするというのは
けっこう、めずらしい経験ですね。
荒井 ああ、たしかに、そうですね。
その意味ではいいものを見せてもらった。
あやや ふしゅー、ふしゅー。
森下 すいません、私、どうすればいいですか。
── 続けて、続けて。
荒井 夢を続けて。
あやや ハイ(過剰にキリっとして)!
このドラマのヒロイン像について、
訊かせてください。
森下 最初のほうは、
咲(綾瀬はるかさん)が
ヒロインに見えるんじゃないかな。
出も早いし、咲のドラマが先に展開するから。
あやや ほぅほぅほぅほぅ。
森下 でも、村上先生の原作を読んだときに、
私はどっちかというと咲以上に、
野風(中谷美紀さん)のほうに
魅力を感じたくらいで、
思い入れという意味でいうと、
ほんと、両方なんです。
なので、野風が出て来ると
野風のドラマがバーっと展開します。
プロデューサーも、いまだに
「俺だったらどっち選ぶかなー。
 どっちもいい女だー」
って言ってるくらいだし。
ですから、そこは本当に
強弱をまったくつけずに書いてます。
私の中にすでに「咲応援派」と
「野風応援派」がいます。
あやや ああああ、いいですねぇー。
ええと‥‥‥‥ふぅ、あの、
ちょっとすいません、
夢がかなったので、
ちょっと休憩させてください。
── だ、だらしない。
あやや だってー。夢がー。
荒井 じゃ、インタビュアー役、引き継ぎます。
ずばり、このドラマは
ひと言でいうと、どんな話なんですか?
森下 うわー、いちばん恐い質問だ。
あの、これって、当たらないドラマの
典型的なパターンなんですけど、
「ひと言で言い表しづらいドラマ」
なんですよ、『JIN−仁−』って。
じつはそこがいちばん不安。
荒井 ああ、たしかに、タイトルだけだと
ジャンルさえわからないし。
森下 ま、簡単にいえば、現代の脳外科医が、
ある手術をきっかけに
江戸時代にタイムスリップして、
人々を医療によって救っていく、
という話なんです。
でも、江戸時代には当然、
最新の医療機器なんてありませんから、
当時の道具や技術をつかって、
やっとのことで手術をしたり、
江戸時代のありあわせのもので
ペニシリンを開発したりして。
そこでは当然、
支えてくれる人たちも出て来るし、
その人たちとの出会いや別れも描きたいし、
それを煮詰めていくと
歴史を変えちゃうんじゃないかっていう、
全体を包括するテーマにもぶち当たったりで。
で、けっきょく、
何をやりたいのって言われたら、
ぜんぶやりたいとしか言えない‥‥。
あやや くー、おもしろそー。
荒井 原作のマンガがあるんですよね。
基本的には、それに沿った形で?
森下 はい。でも、原作だと、
一度も現代に戻ってなくて、
タイムスリップのキーとなる事柄も
まだ謎に包まれてるんです。
ですから、そういう、
物語の根幹に関わるようなことは、
マンガの読者の方と同様、
わたしたちも放り出されたままで(笑)。
荒井 それは、たいへんですね。
あやや でも、資料を拝見するかぎり、
ドラマの大きな流れとしては、
けっこうまっとう、というか。
森下 そうですね。
師弟愛あり、友情あり、ラブありみたいな、
王道っちゃぁ、王道なドラマです。
とにかく観てもらえれば、
「あ。こんな感じね」って
意外にするっとわかっていただけるかと。
あやや つまり、設定はすごく新しいんだけど、
要素としてはけっこう王道。
かなり、たのしみですよねー。
じつはこのドラマ、わたし最初は
森下佳子さんが関わってらっしゃるって
ぜんぜん知らなかったんですけど、
ふつうに、おもしろそーと思って、
完璧、観る気でいたんですよ。
森下 ありがとうございますー。
あやや あと、ドラマファンとしてうれしいのは、
脇の人たちの顔ぶれがすごいじゃないですか。
内野聖陽さんがいて、小日向文世さんがいて、
そんでもって、藤田まことさんがいて、
武田鉄矢さんもいてって。
森下 もう、そのあたりは、
プロデューサー、石丸彰彦の‥‥。
荒井 気心の知れた人たちで。
森下 そうですね。
スタッフの人たちもそんな感じで
結束は固いですよ。
なんていうか、石丸プロデューサーの
業というか、癖というか、
一緒にやった役者さんを
愛してしまうんでしょうね(笑)。
バリバリの体育会系なので、
習性としてついつい部を作ってしまう
というのもあるのかも。
憶測ですが‥‥。
あやや まぁ、ともかく、
経験豊富な実力派ぞろい、
という感じがします。
荒井 『白夜行』とかも、そうなんですか?
森下 そうですね、プロデューサーが石丸さんで、
脚本が私で、演出が平川雄一朗さんで。
荒井 綾瀬はるかさんと武田鉄矢さんも
出てましたし。
森下 そうですね。
小出恵介くんも両方に出てます。
桐谷健太くんは、私は関わってないんですが、
石丸&平川コンビの
『ROOKIES』に出てましたし。
あやや そのへんはかなり安心感がありますね。
で、主役は、大沢たかおさん。
荒井 大沢さんがドラマの主役やるのって
けっこうめずらしいような。
あやや TBSだと『昔の男』以来?
森下 そうなるんですかねぇ。
荒井 それ以来、連ドラはないんですか。
森下 たしか、ずっと
映画をやってらっしゃったような。
あやや あ、ここに「8年ぶりの連続ドラマ出演」
って書いてありますよ。
荒井 8年!
森下 満を持して。
あやや ドラマの話に戻りますけど、
大沢さんと綾瀬さんと中谷さんの
三角関係なんかも軸になっていくんですか?
森下 うーん、もちろん展開はするんですけど、
ポイント、ポイントに
おいていくような感じで、
毎回毎回、それがメインになってくる
というわけではないですね。
あやや ああ、そうですね。
そういうドラマじゃないですもんね。
森下 うん。江戸時代に、
どうやって人々を治療していくか、
いかにしてみんなを救っていくか
ということが基本的にはメインなんで。
ラブ系はずーっとラインをひいておいて、
そのうちその延長線上で
爆発させようと思ってるんですけど。
あやや 爆発! うひょお!
まぁ、でも、だいたいのところは
けっこう、ヒューマン系な展開に?
森下 そうですね、すごく浪花節的な、
ヒューマンな回もあれば、
もっと大がかりな‥‥
たとえばコレラとかも出てくるから。
あやや おー。
森下 疫病の時代なので。
そうなると、ヒューマンなタッチで
患者ひとりと向き合うのではなく、
その町全体をどう救うか、
という話になりますから。
あやや ああー、なるほど。
なんか、ほんと、おもしろそうです、
うかがっていると。
森下 ぜひ、村上もとか先生の
原作読んでいただければ。
おもしろいですよー。
ほっんとにほんとによくできてますから。
荒井 原作はわりと忠実に追ってるんですか。
森下 追ってますけど、
これまでの全エピソードを
フォローしているというわけではないです。
っていうか、しきれません!
あやや こういう原作ものって、
どこのエピソードを抽出するかって、
誰がどう決めるんですか?
森下 うーん、まちまちですね。
基本はプロデューサーと
ディレクター、演出の方の
話し合いじゃないでしょうか。
私の経験からいうと、
まとめ方、追い方は、
人によってほんとうにいろいろですね。
「この部分だけ抜き出しましょう」
っていうプロデューサーもいらっしゃれば
「3つのネタを1話に入れて」
っていうふうな形で
仕上げる方もいらっしゃいますし。
あやや 森下さん個人としては?
森下 私は、いかようにも。
どうにかして詰め込んで‥‥
みたいな方針であれば、
どうにかして入れようとはします。
あやや へぇー。
荒井 これは、ジャンルとしては
医療ものになるんですか?
森下 医療ものでしょうね。
医療ものであるっていう認識が
たぶん、いちばん当てはまるんじゃないかな。
荒井 あの、最近の医療もので、
僕はちょっと苦手なところがあるんです。
森下 どこですか。
荒井 内臓。
っていうかリアルっぽい手術シーン。
あれはわざとなのかなと思うんですけど、
内臓とか、いわゆるグロい場面を
一回は出すんですよね。
あれが、どうも苦手なんですよー。
── それは、みんな苦手なんじゃ‥‥。
あやや わたし、大好き。
森下 うわー(笑)。
あやや 内臓、OK。大好き。
荒井 ああいうグロいのが
好きな人がいるのかなと思ってたけど、
そうか‥‥ここにいたか‥‥。
あやや 大好き。あやや、内臓、OK。
── 自分で「あやや」言うな。
あやや ちょっと矢沢風に言ってるんです。
荒井 どこが好きなんですか?
あやや どこが?
いや、もう、大好きとしか
言いようがないですよ。
あのね、あのね、言っていいですか?
わたしの好きな内臓のパターンは‥‥。
── 「内臓のパターン」(笑)。
あやや なんといっても「心臓」。
といっても、ありがちな
心臓マッサージの場面じゃないですよ。
ずばり、直でいく心臓。
これがたまらない!
── ひくわー。
荒井 ひきますねー。
あやや どういうことかというと、
ふつうの心臓マッサージで生き返らない場合、
心臓を直接、こういくわけですよ。
(手のひらで心臓らしきものを
 モミモミしながら)
── うわー。
荒井 やめてくれー。
あやや ほらほら(手で心臓をモミモミしながら)。
ほらほら(手で心臓をモミモミしながら)。
森下 そういうとこ、Sだね、あやや。
── そんなあやちゃんですが、
穴がブツブツ空いているとか、
同じものが延々と並んでるものに
異常に弱いという面もあります。
荒井 蜂の巣にびっしりと幼虫が。
── 大量の鯉が口をひらいてエサに群がる。
あやや ィィィイイヤァァァァ!!!!
森下 ‥‥というような場面は、
『JIN−仁−』には一切でてきません。
内臓関係の直接的な表現も、
ないわけじゃないけど、
そんなにグロいのはありません。
あやや じゃ、すいません、最後の質問です。
森下さん的に、脚本の見せ場というか、
ここは観てほしい、というところがあれば。
森下 そうですねー。あの、さっき
「三角関係」っていう話が出ましたけど、
厳密にいうと、このドラマの関係って、
「四角関係」なんですね。
というのは、主人公の仁には、
現代の世界で意識不明の恋人がいるから。
あやや たいへんじゃないですか!
森下 たいへんなんですよー。
その恋人と、恋人に生き写しの野風を
中谷さんがひとり二役でやられるんです。
荒井 で、そこに綾瀬さんがからむ。
あやや たいへん!
荒井 中谷さんと綾瀬さんって
初共演じゃないですか?
あやや ああ、記憶にないですね。
たぶんはじめてだと思います。
で、どうなるんです?
森下 ええと、つまり、仁を中心に、本来の恋人と
恋人になっておかしくない女性がふたりいて、
しかも仁は恋愛の機微には鈍感、
という設定にしてまして、
だから、基本、恋愛的な動きは
女性からのベクトルになるんですね。
そこの、女どうしの駆け引きみたいなものが、
原作にはあまりないところなんですが、
書いてて、すごくたのしい。
あやや ああーー、いいですねー。
あの! そういえば!
森下さんとプロデューサーの石丸さんって、
『世界の中心で、愛をさけぶ』からの
コンビですよね?
森下 そうです。
あやや じつは今日、偶然、
『セカチュウ』のドラマの主題歌、
朝、歌ってたんですよ。
── ‥‥‥‥誰が?
あやや わたしが。
荒井 ‥‥‥‥で?
あやや これって、すごい運命的だなと思って!
── つぎのドラマ行きましょう。
荒井 行きましょう。
森下 どうぞ、『JIN−仁−』を
よろしくお願いしますー。


(続きます)

2009-10-19-MON

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