「ほぼ日」なりのリナックス研究。
リーナス・トーバルズの
インタビューもできそう。
発売前からオススメしていた本
『それがぼくには楽しかったから』が発売されてヒット中。
この本の世界に惚れた「ほぼ日」は、弱小なりに追跡研究!

「ほぼ日刊イトイ新聞」と「リナックス」。
似てるような気もするけれど、どのへんがだろう?

なお、リーナスさん本の書評などはこちらで読めます。

第1回 JUST FOR FUN.

第2回 人に仕事を任せる。

第3回 過渡期のテクノロジー。

第4回 開発者について。

第5回 お金もうけ以上の倫理観。

第6回 わたし自身の倫理を問いたい。

第7回 余暇時間まで、縛られていた。

第8回 時間の義務は、もうないんだ。

第9回 テレビは受け身の時だけ楽しい?

第10回 いちばん惹かれる問いは。


----ヒマネンさんは哲学者ですけれども、
  誰かほかの哲学者から影響を受けた、 
  ということはありますか。

ヒマネン
「ふたりの哲学者から、強い影響を受けています。
 でも、だからって、そのふたりと同じように
 ぼくがものを考えるということじゃないし、
 同じイデオロギーに
 染まってるというわけじゃないです。

 個人として、
 ものごとを常に驚きの目で見て、
 その見て考えたことを、
 まさに自分の理念として生きて、
 人が何と言おうと果敢に表現した
 という姿勢では、まず、
 プロトタイプのハッカーとも言えるのが、
 ソクラテスだと思います。
 それから、ブッダ。
 このふたりは、ずいぶん影響を受けました。


----どうして影響を受けたのかを、
  もう少し詳しくおしえていただけますか。

ヒマネン
「ぼくはソクラテスともブッダとも、
 考えをシェアしていないかもしれないです。
 でも、どういう種類の問いを
 発しているかということで、
 彼らにとても共感をします。
 彼らは、最も根本的な問いを作りますから。
 たぶん、彼らが出した答えは
 必ずしもよいものとは言えないかもしれません。
 でも、その問いは、すばらしいと考えます。
 
 そしてぼくが現代思想に
 あんまり熱狂的にならないのも、
 おんなじような理由からです。
 現代思想の哲学者たちは、言わば、
 まちがった問いに対して、
 正しい答えを出しているかのように、
 ぼくには見えるから」

 
----ソクラテスとブッダのいい問いは、
  ヒマネンさんにとって、例をあげるとなんですか。
 
ヒマネン
「ありすぎて(笑)。
 でも、まあいちばんシンプルなやつが、
 いちばんいいと思います。
 『HOW DO WE LIVE?』かな。
 
 哲学者として、
 持ちあわせるべき長所は、
 ふたつあるとおもうんです。
 ひとつは、
 「何を知らないかを把握してることで、
  で、知らなかったら語らない」。
 もうひとつは、
 「自分自身については語らない」ことです。
 だから、なかなか、ぼく自身のことに
 ついて話すことは・・・ちょっと、ねえ?
 恥ずかしいところも、あるんですけど(笑)」


----ヒマネンさんは、
  リナックス制作者をはじめとする
  ハッカーの倫理の登場を、
  どのぐらいの長さの視野で眺めているんですか?
  長期的?短期的?

ヒマネン
「まちがいなく長期的な視野から見ています。
 今年何が起きるのかという視野ではなくて、
 文化の変わっていくようなさまを
 見ているつもりです。
 文化が変わっていくことは、
 従来からの価値が変わっていくこととも
 つながっていますから、
 歴史的な側面も大切にしていきます。
 
 この本は、決して、
 未来学的な観点からは書かれていません。
 未来ではなく、むしろ、
 いま起きていることを述べました。
 
 プロテスタント的な文化と、
 ハッカー的な文化がいまは対立していて、
 そのどちらかを、われわれはいま
 選択するところだ、という状況じゃないでしょうか」


----ジャンクフードを食べながら、
  不規則な睡眠と生活のサイクルで、
  やりたいように仕事をするという
  リーナスのようなハッカーの仕事のやりかたに
  ヒマネンさんは興味を持ってると思いますが、
  ヒマネンさん本人は、
  どういうペースで仕事をされてますか?
  ま、イレギュラーなんだとは思いますけど。
  
ヒマネン
「わたし自身、ほんとうに
 どうしてこうやって日本に来たりして
 時差ボケにならないのかなあと言いますと、
 『いつもこういう生活をしてる』
 っていう型がないんですよ。
 
 いわゆる典型的なパターンの
 一週間と言われても、だから困っちゃう。
 いちばん大切なのは、
 クリエイティビティが発揮できるリズムと、
 時間に対する全体論的な関係なんじゃないかと
 思います。
 哲学的なものごとをやるためには、
 どういうリズムがいいのかな、というのと、
 それ以外の生活のリズムを大切にしてます。
 
 24時間仕事をして24時間寝る時もあるし、
 しめきりが迫っててやばいのに
 ガールフレンドと遊びにいっちゃう時もある。
 リーナスの生活もそうだとおもいますが、
 夜中の1時に起きる時もあれば、
 朝の8時に起きる時もあるっつうか。
 
 けれども、重要なのは、
 みんなが自由に自分のリズムを選べる
 っていうことだと思うんです。 
 自由に選べるなかで9時5時で
 仕事をする人もいると思うし、それは
 もちろんそれでいいと思いますけれども。

 ぼくにとっては、突然休むとか、
 そういう自分の裁量に任された時間が
 かなり必要なんですね」

  
  
ここまでで、ほぼ日なりのリナックスの研究、
ヒマネンさんへのインタビュー篇をおわりにします。

リナックス制作者たちのような
「ハッカー的倫理」に、どうして
いろいろな人が希望を覚えているのか?
について、ヒマネンさんの話で、
少し把握したかたがいるかもしれません。

ヒマネンさんそのものも、
ほとんどハッカーのようなものの考えかたをするようで、
話をしていて、とっても楽しかったです。

(あと少し、別テーマで
 この『リナックス研究』はつづくかもしれません)

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2001-07-27-FRI

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