爆笑問題の田中裕二さんは
いつも考えていることがあるそうです。
それは、「猫はどうしてかわいいのか」。
最近ではその謎に迫る本を出し、
猫好き仲間とは、いつも
愛猫のチーちゃん、ネネちゃんの話で
盛り上がっているそうです。
そんな田中さんに、
猫好き乗組員のとが
猫の魅力をうかがってきました。
田中裕二さんのプロフィール
1965年東京生まれ。
1988年に太田光と「爆笑問題」を結成。
政治から芸能界まで様々な社会現象を斬る漫才は、若者だけでなく幅広い年齢層に支持されている。
現在、テレビ・ラジオのレギュラー番組に出演する他、雑誌の連載も手がけている。
また、タイタンライブにも毎回出演を続けている。
後編 猫は正直だから。
- ふじた
-
『猫と田中』、おもしろかったです。
今回、この本を出そうと思われたのは、
どうしてでしょう。
- 田中
-
いや、これは、
ぼくは出そうと思ってない。
- ゆーないと・ふじた
- (笑)
- 田中
-
編集の人が、
20年以上太田と一緒に本を作り続けている人で、
何かにつけて、我々で本を作ろうとしてるんです(笑)。
今回も、
「田中さんは猫好きだから、猫の本出しませんか」
と言われて、そうなりました。
- ゆーないと
-
でも、充実した内容ですよね。
これだけちゃんと猫のネタがあるなんてすごい。
- ふじた
-
『猫ピッチャー』の漫画で有名な
そにしけんじさんとの共作漫画も入ってますね。
- 田中
-
そうなんです。
これはTBSの『サンデー・ジャポン』で
ご一緒した壇蜜ちゃんが、
『猫ピッチャー』をすすめてくれて、
読んだらほんとにおもしろかったから、
今回の漫画をお願いしました。
- ゆーないと
- ほかにも猫の漫画って読みますか?
- 田中
-
昔、小林まことさんの
『What's Michael?(ホワッツ マイケル)』
という猫漫画が好きでした。
あれは名作で、すごく共感しましたね。
それ以外はあんまり読んだことないです。
もっと言うと、猫カフェも行ったことないです。
仕事ではありますけど、
プライベートではないなあ。
猫グッズも集めないし。
だって、ぼくには猫がいるから。
- ゆーないと
- それで十分なんですね。
- 田中
-
そう。
チーちゃん、ネネちゃんがかわいいから、
猫カフェに行く必要もないし、
猫の漫画を見る必要もないし、
猫グッズを買う必要もない。
自分の猫がかわいくて、そこにいるので、
それだけでぜんぜんいいんです。
- ゆーないと
-
いろんな猫を見てみたいなぁ、という
欲望はそんなにないですか。
- 田中
-
それはあります。
街を歩いてると、無意識に猫を探しています。
あれ、猫かな?
と思ったら、ゴミ袋だった、
ということはしょっちゅうです。
- ゆーないと・ふじた
- (笑)
- 田中
-
歩いていて、
「ここ猫いそうだな」という場所を見つけて、
「ぜったいいるんじゃないの」って近寄って、
猫がいたときのうれしさ!
- ゆーないと
- せまーい建物と建物のあいだとかにもいますよね。
- 田中
-
そう、車の下とかもね。
ぼくは、岩合(光昭)さんの生き方が
いちばんうらやましいです。
そうだ、この前、芦ノ湖に行ったんですけど、
子どもたちと「ボート乗ろうか」って
乗り場に近づいて行ったら、
むこうから猫がやって来たんですよ。
「いらっしゃいませ 営業本部長」
という札をつけた、すごい猫に遭遇したの。
- ゆーないと
-
え、そうなんですか。
看板猫がいるんだ。
- 田中
-
その場でゴロンってして、
触らせてくれて。
(写真を見せてくださる)
- ふじた
-
いつもこうやって
猫の写真を撮ってるんですか?
- 田中
-
うん。つい立ち止まって
スマホで撮っちゃいますね。
- ゆーないと
-
私もよく猫を見かけるほうで、
そのたびに写真を撮るんですけど、
このあいだ、私が撮ってるのを見た外国人に、
「なんで日本人はいつも
猫の写真を撮るんだい? WHY?」
みたいに訊かれて、
なんて返せばいいかわかんなくて、
「We love cats!」
って言いました。
それしか言えなくて。
- 田中
-
(笑)
そういうふうな昨今の猫ブームって、
スマホ文化からきていると思いますよ。
昔も、猫を飼っている人は、
猫をかわいいと思っていたし、
それなりに人気があったんだけど、
スマホのおかげで
世の中に出る猫の写真や動画の数が
ものすごく多くなって、
みんなが猫をかわいいと思う機会が、
ぐんと増えたと思うんです。
- ゆーないと
- ああ、たしかに。
- 田中
-
昔は、街を歩いていて猫がいたって、
ふだんカメラを持ち歩いてる人なんて
ほとんどいなかったから、
猫好きのぼくでも
猫の写真なんか持ってなかったですよ。
それが今じゃ、猫に興味ない人とか、
今まで写真を撮ったことがない人まで
気軽にスマホでパシャパシャ撮ることができて、
インターネット上に載せられるから、
いろんな人が猫を見られるようになりましたよね。
スマホ文化の発達で、
猫のかわいさがどんどん伝達するんです。
- ゆーないと
-
そうか、それまでは、猫って、
街で見かけるか、飼ってる人の家とかでしか
見られないものだったのに、
今はかわいさがメジャーになったんですね。
- 田中
- そうそう。
- ゆーないと
-
昨年、ほぼ日でも「ドコノコ」という、
犬と猫のSNSのような
アプリを作ったんですけど、
それは、みんなが自分のところの犬猫や、
近所で見かけた犬猫の写真を
コメント付きで投稿して、
ながめてたのしむことができるんです。
- 田中
-
へえ。
ぼく、そういうものにうとくて、
何にもやったことないんですよ。
- ゆーないと
-
SNSに慣れていない方とか、
いろんな年齢の方が、たのしんでくださってます。
見てかわいいだけじゃなくて、
犬猫が迷子になったときには、
いなくなった場所から近い距離にいる人に
通知をすることができるんですよ。
- ふじた
-
(「ドコノコ」のアプリを見せながら)
あ、今「ドコノコ」を開いたら
「近所で迷子になった子がいます」と出ました。
- 田中
-
今いるこの場所の近くで?
迷子‥‥かわいそうだね。
- ゆーないと
-
はい。いなくなった場所とか、
その子の特徴が書いてあって、
近所の方が見かけたら、
飼い主にお知らせができるんです。
- 田中
-
いいですね、こういう仕組み。
昔は電柱にチラシを貼るしかなかったからね。
- ゆーないと
-
それの電子版みたいなことです。
みんなで地域で子どもを見守る
「昭和のやり方」みたいなものを、
今あえて犬猫でやってみよう、
という感じでやってます。
もしよろしかったら、ぜひ。
- 田中
-
いいですね。
(ドコノコを見ながら)
へえ~犬も猫もいっぱいいるんですね。
かわいい。
- ふじた
-
あの、田中さんは猫のかわいさって
どういうものだと思いますか。
- 田中
-
それね、ぼくずーっと考え続けているんですよ。
顔だったり、毛並みの柔らかさだったり、
フォルムであったり、
すべてがかわいいんだけど、
それはほかの動物にもいえるような気がするし。
何がいちばん、って考えると、
猫は嘘をつかないというか、
こんなに正直な生きものはいないんじゃないか、
と思えるところが、
猫のいちばんの魅力だと思います。
ゾウやクジラやライオンだってもちろん
正直だとは思うんだけど、一緒には住めないから。
人間が共に暮らせる動物のなかでも、
猫はよりピュアな生きものだと思うから
惹かれるんだと思います。
だいたい、人は勝てないですからね、猫には。
- ゆーないと
-
ああー。
偉大ですよね、猫って。
- 田中
-
そうなんですよ。
猫を飼ってる人は、
猫ファーストにならざるを得ないでしょ。
犬を飼っている人だと、
犬はかしこいしやさしいから、
人間の言うことを学んで覚えてくれて、
人間ファーストになったりもする。
だけど、猫を飼ってる人は、いつも猫ファースト。
猫の好きなように過ごさせている。
それしかできないから。
これが、猫の魅力なんだけど、
猫を興味のない人がいちばん理解できないのは、
そこなんですよ。
「犬のほうがいいじゃん。
だって、甘えてくれたり、
お手とかしてくれたり、芸してくれたり」って。
- ゆーないと
- 従順だし。
- 田中
-
ぼくは犬もほんとに好きだし、
かわいいと思うし、応えてくれることに
よろこびがあるのもわかるんですよ。
盲導犬とか、もう大尊敬してます。
ただ「違い」だけをあげるなら、
犬はちゃんと成長していったり、
学習していったりするんですけど、
猫は生涯、変わらず赤ん坊のまま。
ある意味、「猫かわいがり」を
ずっとできるんですよね。
- ゆーないと
-
たしかに。
まったく学習してくれないですからね(笑)。
- 田中
-
そんな存在って赤ん坊ぐらいしかないでしょ。
無償の愛のような感じ。
- ゆーないと
-
犬は気持ちが通いますもんね、ちゃんと。
猫は、わかってて無視するとか。
ちょっとイケズなところがある。
- ふじた
-
かと思うと、猫って、
こっちがすごく落ち込んでるときに、
寄り添ってくれたりしませんか?
たぶん、なんにも考えてないんだろうけど。
- 田中
-
うん、それはなんにも考えてないですよ、たぶんね。
人間が自分のいいように解釈をしちゃうの。
- ゆーないと
- 勝手に解釈しちゃうよね(笑)。
- ふじた
- そうですね(笑)。
- ゆーないと
-
聞いた話ですけど、
犬は群れで暮らす生きものだから、
人とすぐ仲良くなって、
一緒に暮らしてきたんだけど、
猫は人のお米を狙うネズミを捕ってくれるという点で、
人間と猫の利害が一致して、たまたま近くにいた。
ずっとその距離感で今日まできている、
という話があって。
- 田中
-
そうだと思う。
猫って距離感がちょうどいい。
常にワァーッと寄って来るんじゃないから、
たまにやってきた来たときのよろこびも大きいし。
- ゆーないと
-
言葉が通じないというのも、
もどかしい気持ちもありつつ、
逆に、わかんないからこそ
よりコミュニケーションが深くなるというか。
- 田中
-
みんなよく、「猫としゃべれたらな」って
考えるじゃないですか。
でも、しゃべれないほうがいいんじゃないかな。
ある程度、自分が勝手に
想像してるぐらいが、いいですね。
本当にしゃべれちゃったら、
けっこうショックなことを言ってるかもしれないからね。
- ふじた
- たしかに‥‥。
- ゆーないと
- 知らないほうがよいのかも。
- 田中
-
しゃべっても、
さっきの、ピコ太郎のところの
「おかえり!」ぐらいがいいです(笑)。
- ふじた
-
(笑)。あれには本当に驚きました。
ありがとうございました。
- ゆーないと
-
たのしかったです。
ありがとうございました!
(おわります)
2017-02-23-THU
好評発売中
『猫と田中』
爆笑問題 田中裕二著
(太田出版 税込1,620円)
太田はいつも天下国家や文学の
お笑いのことなど考えているけど、
僕はほんとうに何も考えていません。
なーーんにも! です。
でも、ただひとつ毎日考えていることがあります。
それは「猫はどうしてこんなにカワイイのか?」
その謎をずっと考え続けています。
(爆笑問題・田中裕二)