はじめまして。 | |
はじめまして。 よろしくお願いいたします。 |
|
山崎さんの肩書きは 「コミュニティデザイナー」 なんですね。 |
|
はい、一応コミュニティーデザイナーと 言っていますが、 いったい何をしているのか わかってもらえないことが多いです。 |
|
そうなんですか(笑)。 |
|
「コミュニティデザイナーです」と 名乗っているのは、じつは 名付けようがないから そう言っているだけなんです(笑)。 ざっくり言えば、 ひとが集まる場所に関わるお手伝いを まとめて「コミュニティデザイン」と呼んでいる、 ということなんですけれども。 |
|
おおもとの出発点は 建築のデザインだったのでしょうか。 |
|
はい、そうです。 建築の、景観デザインがもともとの専門でした。 大学では、公園や庭の設計について 学んでいましたが、 とちゅうで「このまま進むのは違うんじゃないか」 と思うようになりました。 というのも、 景観のデザインというのは そこにつくる建物もあわせて 「敷地にどんな風景をつくるか」を 考えるものだと思っていたのですが、 実際はそうではなかったんです。 |
|
違うんですか。 |
|
ええ。現実には、建物が建ったあとで 「周りを、きれいに整えておいてね」 と言われるような 仕事が多いことがわかりました。 |
|
ああ、なるほど。 建ったあとで、付け加えるように。 |
|
ええ、そうなんです。 ですからぼくは、公共建築を多く作っている 建築設計事務所に就職することにしました。 景観専門のデザイナーではなく、 建物をつくる立場から、 庭のことを考えればいいじゃないかと思って 勉強のつもりで入社したんです。 しかしそこで、建築設計事務所の現実を いろいろと経験させていただくことになりました。 つまり、マーケティング的なことと 建築デザインの考えは 相反することも多いのですが、 建物を設計するうえでは 両方を考えていかなくてはなりません。 それはとても大変でしたけど、 とても勉強になりました。 |
|
それは、鍛えられますねえ。 |
|
ほんとうにそうでした。 たとえば、公共の建築物をつくるときって、 誰の意見を基準にしてつくればいいのか、 はっきりわからない場合が多いんです。 「これが公園の正しいつかいかたです」 ということはありません。 公園は、いろんなつかいかたをして いいものですから。 結局、公共建築は 依頼された建築家が、自分の経験や考えから 「きっとこんな方針がいいはずだ」と 予測するようなかたちでつくることが多い。 |
|
ええ。 |
|
でも、マーケティング的な考えに立つと 「ユーザーが何を求めているのか わからないままにモノをつくるなんて、ダメだ」 ということになります。 |
|
そうですね。 |
|
でも、公共建築のユーザーは、 まだできていない公園やまだできていない図書館を つかう人を指しますので、 計画段階では、存在しないんです。 そこで、ぼくのいた事務所がはじめたのが、 ワークショップでした。 地域の住民の方に集まってもらって、 「将来ここに公園ができるとすれば、 どんな公園がいいですか?」 「この町は今後どうなったらいいと思いますか?」 といった話を聞いて、 そこからデザインのキーワードを導くのです。 それで、手応えもちゃんとあったので、 その事務所はものすごくたくさん ワークショップを開催する事務所になったんです。 |
|
へえぇ。 |
|
ぼくは最初、 ワークショップという手法自体に 馴染めない部分がありました。 でも、うまく問いかけるとワークショップって 住民のみなさんの思いを スムーズに教えてもらうことができます。 やっていくうちに、 だんだんこの手法はすごいな、と わかってきました。 ワークショップをつかった設計は それまでの公共建築の主流とは 異なるアプローチでした。 ぼくが独立を考えはじめたとき、 ちょうど事務所で そういったワークショップを 担う人がいなくなったときでもありました。 事務所のボスはもちろん建築家で、 もののかたちをつくるのが専門でしたから 「一緒に仕事していきませんか」と言って、 その事務所の近くに、 ワークショップなど 「もののかたちをつくること以外のことを やる事務所」 を作って独立しました。 それが「studio-L」という、 いまの事務所なんです。 |
|
はあー‥‥なるほど。 その話は、その順番でしないと わからないですね(笑)。 |
|
すみません、自己紹介が長くなっちゃいました。 |
|
いえ、とてもおもしろかったです。 景観のデザインというところから、 現実を見ながら軌道修正していったら、 結局「かたち」じゃない部分を担うことに たどりついた、ということなんですね。 |
|
そうですね。 |
|
実際、かたち「以外」の部分って 話題にされにくいですけど、 とても重要な割合を占めていますよね。 モノって、単体でモノであるはずがない。 周りとの関係があって、 はじめてそのモノになるわけで。 |
|
ええ、おっしゃるとおりです。 自分がこれまでやってきたことのひとつに 「公園をデザインする」ということがあります。 調べてみると、公園は、 4、5年経ったらほとんど誰も使わない さみしい場所になってしまっているという事例が 多いんですよ。 |
|
そういうとこ、ありますね。 |
|
でも、たとえば地域にいる人たちに その公園でいろいろなアクティビティを してもらうようにすると、 その活動のファンになった20~30人の人々が、 「今週も行こうかな」 と集まってきてくれます。 そんなことを続けていくと、 だんだん「人が集まる場所」として定着してきて、 公園が公園らしくなります。 |
|
うん、うん。 それも、「かたちじゃないほう」を サポートすることで、 モノを機能させるということですね。 |
|
はい、そうなんです。 「地域の総合計画」を依頼されたら、 住民の方にも計画づくりに入っていただき、 具体的な方針になる計画を立てるようにします。 「公園整備」を依頼されたら、 かたちの整備だけでなく、 公園を整備してくれる人々を育てる 養成講座も一緒におこなって、 将来的にも公園を管理してくれる人々が いるようにします。 試行錯誤しつつ、ですが、 そんなことを「コミュニティデザイン」という 名前で呼びながら、活動しています。 |
|
うん、なるほど。 よくわかりました。 |
|
いつも、説明がしづらいんですけど(笑)。 | |
(つづきます。) |
2013-01-10-THU |