第1回 出発前、断る理由ばかり考えてました。

イトイ ヒゲがのびないって聞いたけど。
もりかわ ヒゲも、ツメものびない。
イトイ のばしているヒマがない。
もりかわ ええ。
生きるために必要なこと以外は
からだが止めてしまううんですね、どうやら。
イトイ 冬眠だ。
もりかわ ああ。
イトイ そうか、断食っていうのは人工冬眠なんだ。
もりかわ ほんとにそうです、
「食べないならこことここの電源は落としますよ」
っていう仕組みがあるような気がしましたね。

イトイ おもしろいなぁ。
‥‥断食は、今回で2回目?
もりかわ はい、2度目。
イトイ やっぱり前回よりは、
落ち着いてはじめられたわけですか。
もりかわ いえ、そんなことはなかったです。
断食に入る前の晩、
「ほぼ日」に寄らせてもらったんですけど、
あのときなんかはいちばん憂鬱でしたから。
イトイ そうだったんだ(笑)。
テキスト中継の最初に写真がありますよね。
もりかわ 「笑いが弱弱しく見えるのは気のせい?」
っていうコメントがあったけど、
ぜんぜん気のせいなんかじゃなくて。
イトイ 憂鬱。
もりかわ ええ。‥‥怖い。
イトイ わかるんだ、二度目だから。
もりかわ もう、あのときはね、
ジェットコースターの最初の、あるでしょ?
カチャ、カチャ、カチャ‥‥って上がっていく、
まさにあの感覚ですよ。
イトイ (笑)
もりかわ おれ、またなんで、こんなことやってんだろ?
なんか急な仕事でいけなくなったりしないか?
風邪でもひいて中止にならないか?
そんなね、断る理由ばっかり考えてましたよ。
あの写真はそういうことを考えてる最中なんです。
イトイ なるほど(笑)。

もりかわ 忘れてるんですよね、1回目のときの辛さを。
でも、だんだん思い出してくる。
断食の1日目が、いちっばん辛いこととか。
イトイ 自分の経験でいうとね、
スカイダイビングの先生に「2回目は怖いでしょ」
って言われたことがあるんですよ。
1回目っていうのは恐怖を上回る緊張感があって
それでいっぱいなんだけど、
2回目にはその張りつめたものが減って‥‥。
もりかわ 恐怖がリアルに浮かび上がってくる。
イトイ 断食もきっと同じなんだよね。
もりかわ 怖いけど、いかなくちゃならない。
「ほぼ日」のみんなは「いってらっしゃい」って
明るく送り出してくれてるし。
イトイ きついなぁ(笑)。
でも逆に、テキスト中継っていうかたちにしたから
助かったっていうことあったでしょう。
もりかわ ありましたね。
イトイ メモリがつくっていうか。
「断食ってどうなの?」って思ってる
みんなのかわりにやっている感もありますよね。
もりかわ ええ、やっぱり自分の体験を
ちゃんと言葉にしなきゃいけないから‥‥。
もし「ほぼ日」の中継がなかったら、
散歩の途中で缶コーヒーの1本くらい
買ってしまったかもしれない。
イトイ 缶コーヒー、好きだもんね(笑)。
もりかわ で、「これは実験だから」
とかなんとか言いながら、飲んじゃう。
イトイ あー(笑)。
もりかわ そういうときの言い訳は思いつくんですよ。
「べつに誘惑に負けたわけじゃない、
 これは調査捕鯨みたいなもんだから
 ちょっと試しに飲んでみるだけだ」とか。
イトイ 調査捕鯨(笑)。
でも、やらなかった。
もりかわ はい、飲まなかったですね。
(続きます!)
 
 
2007-06-27-WED
 
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