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辻 |
すみませんね、ばたばたしてまして。 |
── |
「浅草大観光祭」のまっただ中ですのに、
お忙しいところ恐縮です。 |
辻 |
いやいや。もう、てんやわんやで(笑)。 |
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── |
辻さんは「浅草観光連盟」の
事務局長さんでいらっしゃるという。 |
辻 |
そうですね、はい。 |
── |
事務局長さんというのはどのようなお仕事を? |
辻 |
要するに雑用です(笑)。
いろんな催しを調整したりとか。
まあ、浅草にはタレントが多いものですから、
荒井さんみたいな(笑)、
もう噺家じゃない? っていうような人が
いっぱいいるので、そういう人たちをうまく、
こう、なんていうんですか、
それぞれ活躍していただけるような
場を作っていったりとか、はい。 |
── |
ああ、文扇堂の荒井さん。
すばらしい個性でした。 |
辻 |
ですからまあ、荒井さんなどから
昔の浅草の様子はたくさん聞かれたと思うので、
私はどちらかというと今の浅草のことを
お話したいと思ってまして。 |
── |
ありがとうございます。
あの、辻さんは薬局のお仕事も‥‥。 |
辻 |
はい薬局もやっております。
で、今の浅草のお話なんですけどね、
ちょっとこんなの持ってきまして。 |
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── |
これは? |
辻 |
これは去年、浅草寺の境内を
F1カーが走ったんですよ。 |
── |
へえええ、そんなことを。 |
辻 |
レッドブルというエナジードリンクが
スポンサーでしてね。 |
── |
ほんとに走ったんですか、浅草寺の境内を。 |
辻 |
はい、F1ドライバーの
デビッド・クルサードにも来てもらって。 |
── |
すごーい。 |
辻 |
まず、浅草寺でお祓いしてもらいまして。 |
── |
F1マシンを浅草寺でお祓い(笑)。 |
辻 |
安全祈願です。
お神輿をのせるフロートにマシーンをのっけて、
ちょうちんですとかいろいろ飾りまして、
うしろに浅草の芸者衆が並んで、
芸者衆に囲まれたデビッド・クルサードがいて、
仲見世をしずしずとF1マシーンが進むんです。 |
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── |
すばらしい‥‥。 |
辻 |
ちなみに、
そのお祓いのあとデビッド・クルサードは
ずっと入賞を続けたんですよ。 |
── |
へえー。 |
辻 |
うちのかみさんも、
「あなた、浅草寺ってすごいわよね」って。 |
── |
御利益が。 |
辻 |
はい、御利益が。
で、そのお祓いのあと、境内を走ったんです。 |
── |
すごいなあ。 |
辻 |
私はメカニックと一緒にタイヤ交換を
やらしてもらうはずだったんです。
でも実際のマシーンはとんでもない迫力で、
芸者さんたちと「すごいね、すごいね」
って言ってるうちに、あっという間に終わって
バババババッて行ってしまいました。 |
 |
── |
それは残念(笑)。
あの、そういう大胆な企画は、
周囲の反対などはなかったのでしょうか。 |
辻 |
荒井さんには怒られましたよ。
「お前、浅草寺は善男善女の集まるところで、
F1が来るとこじゃねえよ」って(笑)。
でも、F1マシーンとレッドブルのエナジー、
それと浅草は共鳴するはずだと、
私には自信があったんです。 |
── |
はい。 |
辻 |
それを荒井さんに話したら「なら、いい」と。
「お前さ、新しいことやるんであれば、
それがなんで浅草に必要なのか、
きちんと理論武装しなさい。
で、人になんか言われたときにゃ、
今のをちゃんと言えないといけないよ」
って。それはすごく勉強になりました。 |
── |
なるほどお、そうでしたか。
‥‥で、あの昔の、薬屋さんのお話を
もうすこしうかがいたいのですが、
辻さんの家は昔から薬屋さんで? |
辻 |
うちは元々紙屋だったんです。 |
── |
紙屋さん。 |
辻 |
ところが戦争でね、うちの親父は
ロシアあたりに行って、ずーっと取られてて、
その間、なんにも仕事がない、
じゃあ薬局でもやろうって。
父の弟が薬剤師だったので。 |
── |
お父様が戦争から戻ってきてからも
薬屋さんを続けられて、今に至るのですね。 |
辻 |
そうですね。
‥‥で、また今の浅草の話に戻りますが、
去年はF1で、今年はコメディなんです。
エノケンやロッパがいたころのような、
浅草発の笑いを単に懐かしいものではなく
作っていきたい気持ちがあって、
11月に「したまちコメディ映画祭」
というのをやるんです。
仲見世にレッドカーペットを敷いて
歩いてもらうという。 |
 |
── |
レッドカーペット、すごいですね。
浅草は似合うものであれば
どんどん新しいものを‥‥。 |
辻 |
そうです、受け入れていきたいんです。
みんな新しいもの好きなんで(笑)。 |
── |
今と未来の浅草のお話、ありがとうございます。
で、すみません、このインタビューが
「浅草今昔展」にちなんだものですので‥‥。 |
辻 |
ええ、ああ、はいはい。 |
── |
昔のこともうかがいたいのですが、
辻さんはどんなお子さんでした? |
辻 |
けっこうね、おとなしい子でした。 |
── |
あ、そうですか。 |
辻 |
私はおとなしかったんですが、
うちの親父っていうのが、これが元気で。
PTAにやたら出てきたがるんです。 |
 |
── |
(笑) |
辻 |
遠足とかって、みんなお母さんが
くるじゃないですか。うちだけ親父なの。 |
── |
(笑) |
辻 |
もう嫌でねー。なにが嫌だってね、
私の担任が女性の先生だったんですが、
その、すごいお酒が好きな先生で。
うちの親父もすごい酒飲みでね、
いっしょに近所を飲み歩いてるんですよ。
もうねー、子供心にね、
嫌だなあってほんとに‥‥。 |
── |
‥‥そうでしたか。 |
辻 |
先生が妙に学校で私によくしてくれて、
それがまた嫌で‥‥。 |
── |
‥‥はい。 |
辻 |
ただの飲み友だちなんですけどね。
浅草ですから、先生と親も
気さくに普通に友だちになるんでしょう。
でも当時、私はそれが嫌で嫌で‥‥。 |
── |
‥‥‥‥あ、あの、ええと‥‥。
‥‥とにかく、
これからも浅草では新しいことを
いろいろやっていくということですね? |
辻 |
はい、そうです、もちろんです。
たとえば浅草には川があります。
やっぱりこの川を使ってなにかやってみたいし。 |
── |
ますますお忙しくなりそうで‥‥。
辻さんの場合、ぜんぶのお仕事を
10とすると薬局屋さんのお仕事は? |
辻 |
うーん、3割くらいですかねえ。
薬局はかみさんががんばってくれてるんですよ。
うちは「ネオ薬局」っていうんですが、
「ネオママ」なんて呼ばれてね。 |
── |
ネオママ、いい響きです(笑)。
じゃあ辻さんは、
安心して観光連盟の仕事ができますね。 |
辻 |
昨日は冨士さんたちと
ミュージカルのことを話してきました。
東京藝術大学の女の子たちが
道成寺をテーマにミュージカルを作ったんです。
それを後押しすることになりまして。
せっかく台東区にある大学ですしね。 |
── |
そうですか、若い人たちのバックアップも。
辻さんは昔のことよりも、
今の浅草、これからの浅草に
目が向いていらっしゃるのですね。 |
辻 |
まあ、やっぱり、
引き継いでいくのは若い世代ですから。 |
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── |
そうですよね。 |
辻 |
あの、それと‥‥。 |
── |
はい。 |
辻 |
きょうの話と関係ないかもしれませんが、
いや、あの、えっとですね、
じつは、うちの下の娘が、
辻香織っていう、ちょっとあの、
歌手をやってまして。 |
── |
え? お嬢さん、ミュージシャンで。 |
辻 |
まあ、暇があったら、
ホームページでもみてやってください。 |
── |
はい、はい、はい、それはもう。 |
辻 |
その香織がですね、
香織の尊敬する早川義夫さんと、
浅草でライブをやるんですよ。
(※このライブは終了しました) |
── |
それはすばらしい。 |
辻 |
まあ、あの、そんないろいろね、
若い人たちにがんばってもらいたいな、と。
すみません、最後にこんな話で。 |
── |
いやいや、もう、ありがとうございました。 |
辻 |
いえいえ、たいしたものじゃなくて。 |
── |
いやいやいや。 |
辻 |
いえいえいえ‥‥。 |
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こうして、4人目の取材もぶじ終了。
あとで調べてみましたら、ありました、発見しました!
辻香織さんのオフィシャルサイトはこちらからどうぞ!!
江戸っ子のみなさん、お世話になりました!
江戸東京博物館の「浅草今昔展」は
11 月16 日(日)まで、
「浅草大観光祭」は
11月25日(火)まで開催されています。
この機会にぜひ足を運んでみてくださいませ。
「浅草今昔展」編は、これにて終了です。
またなにかたのしい企画展のうわさを聞いたら、
学芸員さんにお話を聞きに行ってまいりますね。
その日まで! |