こんにちは、「ほぼ日刊イトイ新聞」の奥野です。
先日、ダイヤモンド社から
『P.F.ドラッカー 完全ブックガイド』という本が
発売になりました。
その本には、2年半前に「ほぼ日」で連載した
上田惇生先生と糸井重里の対談
「はじめてのドラッカー」が「巻頭対談」として
収められています。
そこで、ふだんからダイヤモンド社さんに
いろいろお世話になっている奥野・オトヤ・西本が
編集担当の前澤さんに、お話をうかがってきました。 |
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── |
前澤さん、ご無沙汰しております!
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はい、ご無沙汰しております。
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── |
1年半くらい前でしょうか、
『「もしドラ」を書いた岩崎夏海さんに
「もしドラ」を5回も読んだオトヤが会いにゆく』
という
おかしなコンテンツにお付き合いいただいたとき、
大変、お世話になりまして。
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いえいえ、こちらこそ(笑)。
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── |
本日は、以前から前澤さんが編集されていた 『P.F.ドラッカー 完全ブックガイド』が
ついに発売されたと聞きまして、
さらには
「読者プレゼントのご用意もある」と聞きまして、
こうして
「プロモーションでごめんください」の枠で
取材に上がりました。
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はい、ありがとうございます。
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── |
それでは、さっそくで恐縮ですが
当コーナーの趣旨にキッチリのっとりまして
編集者である前澤さんから
この本の「ウリ」を
おおいにプロモーションしていただければと。
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はい! それではまず、ドラッカーといえば
「20世紀最大の思想家のひとり」
と呼ばれています。
最近では、アニメや映画にもなった青春小説 『もしドラ』で
知ったという読者も多いかもしれません。
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── |
うちのオトヤなど、そのクチですね。
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95年の生涯で、ドラッカーが執筆した本は
アンソロジーなど、
ご本人の承認を得た企画モノまで含めると
日本で発行されたものだけで
60冊ちかくにのぼるんですが‥‥。
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── |
すごい数です。
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その多くを、弊社が出版しています。
そして、そのほとんどを訳されているのが
この本の著者・上田惇生先生なのです。
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── |
上田先生が「ドラッカーの分身」と
呼ばれるゆえんですね。
それにしても「60冊」ですか‥‥。
初心者にとっては
高く険しい岩山がそびえ立つかのようです。
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そうでしょう? そこで‥‥。
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── |
ええ。
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この「完全ブックガイド」の出番なのです。
つまり『もしドラ』でドラッカーの考えに触れ
興味を持ったのだけれど、
そのあと、
どの本から読んだらいいか、わからない。
そういうかたって、けっこう多いと思うんです。
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── |
僕自身もそうですけど、
うちのオトヤなど、典型的にそのクチですね。
『もしドラ』に感激して5回も6回も読んだあと
いっしょに本屋さんへ行ったら
ドラッカーコーナーの前で
右往左往しているのを見ましたので。
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そういうかたに、ぜひ読んでいただきたいです。
次にどのドラッカーを読んだらいいかについて
道しるべとなる本を目指したんです。
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── |
なるほど、なるほど。
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具体的には、年代順にドラッカーの著作を並べ、
ドラッカー本人と
何百回もファクスや手紙のやり取りをした上田先生が
各作品の内容と読みどころを
エピソードを交えて、解説してくださっています。
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── |
ははー‥‥それじゃ、たとえば
僕が持っていて、みごとに「積ん読」化している
『断絶の時代』の頁から拾ってみましょう。
「ドラッカーは断絶は四つの世界で起こるとしました。
第一に、
新技術・産業が生まれ、現在の大産業が陳腐化する。
第二に、
グローバルなショッピングセンターが生まれる。
第三に、社会は多様な組織から成る組織社会となる。
第四に、知識が最大の財産となる」‥‥。
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はい。
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── |
いや、この本が「1968年に書かれた」というのには
ちょっと驚きました。
おっしゃっていることが
まさに、いま現在の世界で起きている問題というか、
まったく古びてないというか。
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そうそう、ドラッカーのすごさ、おもしろさは、
そういうところにあるんです。
あれほど読み込んでらっしゃる
上田先生でさえ
「ドラッカーには、いまだに発見がある」と
おっしゃいますし。
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── |
でも『断絶の時代』ってそんな本だったんですね。
あらためて読んでみたいと思います。
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さらには
2年半ほど前に「ほぼ日」で連載して大好評だった
糸井重里さんと上田先生の対談、
「はじめてのドラッカー」を
巻頭対談として掲載させていただいております。
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── |
これには僕たち、本当にうれしかったです。
なにしろ、日本で「ドラッカーと言えば」の
ダイヤモンド社さんが出す
「完全ブックガイド」の「巻頭対談」に
掲載されるだなんて。
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転載に際しましては、
最低限の調整をさせていただきましたが、
基本的にはあのときの対談のまま、です。
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── |
というか、
より丁寧な注釈がプラスされてますよね。
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ただし、
お詫びしなければいけないことが一点‥‥。
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── |
えっ、なんですか!?
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おまけコンテンツ「バー・ドラッカー」だけは
どうしても再現不能でした。
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── |
いや、そんな、
アレに関してはお気遣いなくといいますか、
単なるおもしろ企画でしたので‥‥ははは。
※バー・ドラッカー‥‥「はじめてのドラッカー」連載中、
ページ下部で展開し人気を博した
読者参加型の、おかしなおまけ企画のこと。
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でも、糸井さんと上田先生の対談のなかには
今から読み返すと、
ドラッカーの書名が、いろいろ出てくるんです。
まさしく「完全ブックガイド」の巻頭対談に
ふわさしいといいますか
あの対談があったから、
この本ができたといっても過言ではないんです。
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── |
そうなんですか?
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いつか、こういう本をつくりたいねという話は
社内でも、ときおり出ていたんです。
でも、あまりに大変そうな仕事なので
誰も手出しをしようとしなかったんです。
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── |
ははー‥‥。
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でも、あの対談をきっかけにして
「やっぱり、つくろう!」という機運が盛り上がり、
このたび、こうして。
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── |
では、構想期間をふくめると
だいたい2年くらいかかったというわけですか。
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無事できあがって、本当に、感慨深いです。
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── |
‥‥前澤さん。
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はい。
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── |
今日は、僕たちからもご報告があるんです。
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‥‥何でしょう?
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── |
それは、この男のことです。
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弊社のオトヤ乗組員。 |
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はい、先ほどから、私の目の前に。
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── |
1年半くらい前
『「もしドラ」を書いた岩崎夏海さんに
「もしドラ」を5回も読んだオトヤが会いにゆく』
という
おかしなコンテンツのなかで、
このオトヤは
「自分は、管理部門のイノベーションの実践として
大型二種免許の取得に挑戦しているが
これは、ドラッカー的にイノベーションなのか」
と、岩崎夏海さんに質問していたんです。
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はい、よーく、覚えております。
正直、ビックリしましたので。
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── |
岩崎さんは、すっと目を閉じ黙考されてから
静かに
「それは、イノベーションである」
と、オトヤの背中を後押ししてくれたんです。
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あのときは、本当にうれしかったですね。
目を閉じてから
けっこう間があったので。
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── |
‥‥迷ってたんですかね。
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質問が質問だけにね。
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── |
ともかく、その後、オトヤは
ドラッカーの著書は1冊も読んではいないが
『もしドラ』だけは
5回も6回も読んでいるという
「ドラッカリアン」ならぬ
「もしドラッカリアン」として
大型二種取得への挑戦を続けていたんです。
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え、あれからずっと!?
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── |
はい。そしてこのたび、めでたく‥‥。
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合格しました。
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うそ! ほんと?
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── |
オトヤさん、
今回のチャレンジを「苦節」で言うと‥‥。
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「2年くらい」スかね。
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── |
僕らも忘れかけていたころ、
社内全員に宛てたメールで「合格しました!」と。
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わー‥‥免許証、見たいです!
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はい、どうぞ。
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苦節「2年くらい」、これがオトヤの大型二種免許だ! |
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‥‥‥‥‥‥‥。
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いや、あのー、ここに「大二」と。
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わー、ホントだ! すごい!
写真、撮っていいですか!?
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写真? え、ま、かまわないスけど‥‥。
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── |
(前澤さん、いったい何の記念に‥‥)
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オトヤさん、ちなみに、そもそもなんですけど、
なんで「大型二種」だったんですか?
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自分、ふだんは管理部門の人間なんで
「大型二種」は必要ないんですね、業務上。
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ですよね。
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でも、自動車の運転が好きだってこともあって、
出張などの際に、
ドライバーを頼まれることが多かったんです。
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ええ、ええ。
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「大型二種」というのは
ダンプカーなどふつうの「大型」ではなく
「旅客」つまり
「人様」を乗せて走れる大型免許です。
ですから、そうした免許を持っていることで
社内外の人を乗せて走るときも、
よりいっそう
安全なドライビングを心がけられるのではと
そういう思いからの行動でした。
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── |
つまり、
観光バスとかタクシーの運転手になろうと
いうわけではなく。
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あとは、取材のときにあれだけ言っときながら
途中であきらめたら
「やっぱり取材用の発言かよ」と
思われてしまっても、仕方ないじゃないですか。
それは、自分的に許せなかったので。
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でも、よくあきらめなかったなと思いましたね。
なにしろ難しい試験でしょうし、
実際、何度か落ちてるのを知っていましたから。
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はー‥‥。でも、よく2年も‥‥ご苦労されて。
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ミラー確認の回数とか半端じゃないんです。
6点、確認するんですよ。
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── |
‥‥ああ、大型の場合は。
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6点確認して、最後、きちんと後ろを振り返って
本当にお客さんは大丈夫か、最終確認するんです。
乗用車の場合、目視は3点ぐらいじゃないですか、
せいぜい。
ようするに倍の確認が要るんスよ、大型って。
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‥‥はぁ。
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── |
ともかく、
それもこれも『もしドラ』を読まなければ
起こりえなかった「イノベーション」であると。
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はい。でも‥‥。
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でも?
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自分、どうしても『もしドラ』の「次」に
進むことができなかったんです。
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あ‥‥オトヤさんも。
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── |
なにしろ、日本語で読める著作だけでも
「60冊ちかく」ですものね。
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はい。
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── |
ただ、ドラッカーの著作ではないけれど
上田先生の書かれた『ドラッカー入門』は
ひとつの選択肢ですよね。
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はい、そう思います。
あるいは『もしドラ』の主人公「みなみちゃん」が
作中で読んでいた
『マネジメント [エッセンシャル版] 』を
手に取られるかたも、多いようですけれど‥‥。
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はい、でも自分は
この『完全ブックガイド』を読ませていただいて、
決めたんです。
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── |
決めたというと‥‥。
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次、読む本。
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おお! ‥‥どの本に?
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『経営者の条件』にしようかと思って。
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なんと!
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── |
‥‥それは、なぜですか?
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この本の『経営者の条件』のページの
上田先生のコメントに、こう書いてあったんです。
「ドラッカーは、組織のメンバー全員が
自らを律する帝王学を身につけ、
トップのように動かなければ
組織の成功はない、と言うのです」と。
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‥‥はい。
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自分、休日の活動として
ママさんバレーの監督をやってるんですけど、
昨日まで素人だった人もいる
ママさん選手たちと勝利を目指すために
大切なことが書いてあるんじゃないか
という気がして。
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── |
そっちの理由でしたか‥‥。
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以前、言ったかも知れませんが、
子どもたちのバレーボールの指導者になるのが
僕の将来の夢のひとつなんです。
だから「経営者」と「指導者」って
共通する考えも、いろいろとあると思うんです。
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‥‥『経営者の条件』という本は
「エグゼクティブ」について書かれているんですが、
「エグゼクティブ」って
直訳すれば「できる人」というニュアンスなんです。
つまり
「人に言われるまえに、自分でやれる人」
「人の面倒を見る人」なので‥‥合ってますよ。
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── |
やったじゃないですか、オトヤさん!
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いま、僕は、そこにすごく興味があるんです。
人をまとめる‥‥みたいなことに。
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オトヤさん、がんばってください!
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(思いもよらない展開になってる‥‥)
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そして、ぜひ『経営者の条件』を読んでいただいて
その感想を、私たちに聞かせてほしいです。
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はい、何年かかるかわかりませんけど、
がんばって挑戦してみますね!
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<おわり> |