この本を僕がはじめて読んだのは、
10年ぐらい前、大学生のときになるんですけど、
そのとき文庫本で買った本が
もうボロボロになるぐらい何回も読んでます。
村上春樹さんの本で最初に読んだのは
『ノルウェイの森』なんですが
その時に、登場人物たちの会話が、
とにかくひたすらステキだなと思いまして。
だから、ストーリーというよりは、
村上さんの作品は、
とにかく登場人物たちの会話をたのしんでます。
小説って背表紙のところに
軽くストーリーが書いてありますよね?

この話は、それを読んでも、
どんな話かよくわかんないんですよ。
それで、僕は本を選ぶ時、
キャラクターの会話を読むんです。
その会話が面白いか面白くないかで
自分が好きそうな小説かどうかを判断するんですけど、
村上春樹さんの作品は、それがすごくて。
読んでいるときに、
人が会話をしてる感じが頭の中に出てくるし、
読んだあと、自分のしゃべり方が
村上春樹(作品調)になるぐらい影響を受けまして
僕、昔は自分のことを
「俺」って言ってたんですけど
村上春樹さんの作品を読みはじめてからは、
「僕」になりました(笑)。
まあ、そういう意味で影響を受けてます。
この小説の中に
主人公たちがハワイに行くシーンがあるんですけど、
けっこう尺を長くとってるわりには
ストーリーがぜんぜん進まないんですよ。
そのハワイでの何でもない生活の期間というのが
読んでてものすごく安らぐんです。
仕事で追われてたりとか、疲れてる時とかに、
擬似的にハワイで
のんびりしているような気分になれるんですよね。
それも多分、村上さんの会話のテンポのよさとか
状況表現の上手さだと思うんですけど。
だから、僕はそこばっか読んでますね(笑)。
ただラジカセをひとつ買って、
砂浜でそのラジカセを聴きながら
1日過ごすだけ、とか書いてありますからね。
そんな何でもない描写を
こんなに面白く書けちゃう方は、
そうはいらっしゃらないと思います。
この話は 『風の歌を聴け』
『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』
の「羊三部作」の続編にあたるんで
その流れを全部読まないと
村上作品はわかんないよという人も
いるかもしれないですけど
僕は、とにかくこのハワイのシーンと
登場人物の会話が好きなんですよね。 |