あのひとの本棚。
「ほぼ日」ではときどき糸井重里が「あの本が面白かった!」とか
「これ、読んどくといいよ」と、本のオススメをしていますが、
これを「ほぼ日」まわりの、本好きな人にも聞いてみようと思いました。
テーマはおまかせ。
ひとりのかたに、1日1冊、合計5冊の本を紹介していただきます。
ちょっと活字がほしいなあというとき、どうぞのぞいてみてください。
オススメしたがりの個性ゆたかな司書がいる
ミニ図書館みたいになったらいいなあと思います。
     
第32回 blanc.さんの本棚。
   
  テーマ 「自分の基盤となっている5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
ミュージシャンとして活動していくうえで
考えかただったり生きかたにおいての
基盤となっている5冊を紹介いたします。
経済の本が多いのですが、
どの本も何かしらかのキーワードで繋がることに
自分でも驚きました。
   
 
 

『マニュファクチャリング・コンセント』
ノーム・
チョムスキー

                 
           
 
   
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僕は大学で演技と政治経済を専攻していて、
そのときにノーム・チョムスキーと出会うんですね。
彼は「言語はもともと人に備わっているもの」という
言語機能の初期状態についての理論
「ユニバーサル・グラマー(普遍文法)」や
「ジェネラティブ・グラマー(生成文法)」を説いた人で、
そういう言語学をやってるような人が
マスメディアに関するこの本を出したときに
すごく驚きました。
「この人はスゴイ!」って思ったほど(笑)。
マスメディアで取り上げられることが
すごく大きい力を持つということが書いてあるんです。
テレビとかで痩せる食材として取り上げられる
「納豆」とか「バナナ」とか、
それこそ最近だと「新型インフルエンザ」なんかのことを
イメージしてもらえればわかると思います。

さらに言うと、報道なんかも
そういう大きな力が働いているとも思うんです。
いまっていろいろなマスコミがあって
どのニュースを読む、見るかは
消費者が選り好みができる時代だと思うんですね。
そうすると、マスコミもいろいろとやらないといけない。
だって新聞売れなくなっちゃいますから。
だから、なんかドラマチック仕立てだったり、
ストーリー仕立てだったりして記事を作り上げるわけです。
そういうこととは無縁な、
価値のあるニュースを書きたいとライターが思っていても
売り上げに繋がるほうを優先されちゃうから
難しいのが現状なわけで。
マスコミであっても、なかなか
上司のハンコをもらうまでが大変だと思うんですよ(笑)。

やっぱり英語の方がスッと入ってくるので、
今回ご紹介する本は原書で読んでいるものが多くて、
これも、そうですね。
最初に読んだときは
「あ、マスメディアっていうのはこういうものなんだ」
ってショックでした。
それこそ、眠りから目が覚めて
自分が違う人間になった気がするほどの衝撃を受けました。
こんな時代だからこそ、いま読んでもらいたい本です。
日常生活しているうえで
誰にでも関係のあることだと思いますから。

 

カナダ人2名、日本人2名のバンド
モンキーマジックとして活躍する傍ら
ご自身のソロ名義「blanc.(ブラン)」としても
活動しているボーカルのメイナードさん。
なんとモンキーマジックは、
全員が宮城県仙台市に住みながら活動を続けてるんです。

そんなメイナードさんが
blanc.としてのセカンドアルバムを
6月10日にリリースしました。





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バンド形態のモンキーマジックとはまた違った側面を見せる
ハウスとエレクトロニカ主体のアルバムとなっています。
また、タイトルの「canvas」っていうのは
またいろいろな意味が込められていそうです。
そういったことをメイナードさんにお訊きしました。

じつは、1枚目のアルバムを「canvas」っていう
タイトルにしようかと思ってたときがあったんです。
でも、「new world」っていう案が出てきて
「そっちのほうがいいな」と思ってそっちにしました。
「じゃあ、つぎがcanvasかな」って。
まずは新しい世界を見せてから
キャンバスに色をつけていこうと。
blanc.って「白い」っていう意味があるんですね。
だからblanc.のcanvasだと白いキャンバス。
響きと意味合いも含めて好きだったんですよ。
このblanc.っていうのは、何もないところから生み出す
というコンセプトにしようと思ってたから、
今回のアルバムは色を着けてもいいかな、
っていうレベルになったと思いますね。

今回のアルバムでは、自分の中にある
「プロデューサー」というキャラクターを
もうちょっと育ててあげたいなと思ったんです。
だから今回は、ゲストボーカリストふたり、
SayuleeちゃんとAMWEちゃんに歌ってもらいました。
ふたりともすごく魅力あるボーカリストで
オリジナリティがあるんですよ。
個性があってかっこいい。
その彼女たちのために曲を作ってあげたほどです。
AMWEちゃんが歌っている12曲目の
「solstice」は彼女をイメージして作りました。
で、ほかの曲といっしょに何曲が提示したときに
彼女は見事その曲を選んでくれたんですよ。
ほんと偶然というかラッキーというか。
こう見えない何かが合致した感じでした。

もっともっといろいろなボーカリストと
やってみたいんですよ。
そういうフィーチャリングからいろいろ発展して、
いろんなプロジェクトが動かせそうな気がするので
そこから楽しいことをまずしてみたいですね。

あと1曲目「coast」のビデオクリップがあるんですが、
なかなか不思議な作品に仕上がりました。

 

いろいろなものをピアノ線で宙づりにしてるんですが、
ジャケット写真ではあえてピアノ線を消してないんです。
コンピュータを使えば最終的には
消すこともできるんですが、それをやっちゃうと
全部がコンピュータでやってるように思われちゃうから
あえて消さずという方向にしました。
なんかややこしい時代になったなぁ(笑)。
blanc.のオフィシャルサイトで全部観ることができますので、
ぜひ観てみてください。

メイナードさん、ありがとうございました。
セカンドアルバム「canvas」は現在発売中です。
ポップだけど、とっちらかった感じではなく、
「blanc.ワールド」と呼べるような
共通の世界観で括られた曲の数々を
ぜひともお楽しみくださいませ。

blanc.の公式ページはこちら。
ニューアルバム「canvas」の試聴ができる
myspaceはこちら

2009-06-17-WED

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