あのひとの本棚。
「ほぼ日」ではときどき糸井重里が「あの本が面白かった!」とか
「これ、読んどくといいよ」と、本のオススメをしていますが、
これを「ほぼ日」まわりの、本好きな人にも聞いてみようと思いました。
テーマはおまかせ。
ひとりのかたに、1日1冊、合計5冊の本を紹介していただきます。
ちょっと活字がほしいなあというとき、どうぞのぞいてみてください。
オススメしたがりの個性ゆたかな司書がいる
ミニ図書館みたいになったらいいなあと思います。
     
第35回 大森美香さんの本棚。
   
  テーマ 「心が自由になれる5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
小説も好きなんですけど、読み始めると物語にとらわれて
つらくなってしまうことがあるんです。
没頭して、登場人物の気持ちになりすぎたりして。
今回は、そうはならずに解放してくれる本を選びました。
ちょっと今は、
いろんな仕事が一気に終わって脱力しているところなので、
そういう本ばかりになったのかもしれません。
「人生何でもアリですよ」「もっと自由でいいよ」
そう語りかけてくれるような5冊を選びました。
   
 
 

『あたまわるいけど学校がすき
こどもの詩』
川崎洋(編集)

                 
           
 
   
Amazonで購入
 

読売新聞に川崎洋さんの
「こどもの詩」という欄がありまして、
それを読むのをいつも楽しみにしていたんです。
これは、それをまとめた一冊ですね。
コーナーに寄せられる
子どもたちの詩もすばらしいんですけど、
川崎さんの一言コメントが
いつもすごく温かくてすてきでした。
5年ほど前に川崎さんはお亡くなりになってしまって‥‥
このコメントが読めないのはほんとに残念です。



これを買ったのはたしか、
『風のハルカ』という朝ドラを書く前か、
ちょうど書いてるくらいの時期でした。
主人公の子供時代からの変遷を書いていくときに、
ちょっと参考にしたのを覚えています。

この本は泣きながら読むことになるんですよ、必ず(笑)。
とくに最初のほうに載っている
母親をテーマにした詩なんかは、もう‥‥。
やっぱり無償の愛が入ってるんですよね。
すごい純粋で。
実は昨日、この取材にお持ちすると思って読み直してたら、
やっぱり‥‥(笑)。
お恥ずかしい話なんですけど、
泣いちゃうんですよね、大好きな一冊です。
結局、昨日も頭から終わりまで読んでしまいました。
これとかね、

あとはこれとか、すごいかわいいんですよ。
読みますね。

 くつってはんたいはくと
 けんかしてて
 ちゃんとはくと
 デートしてるんだよ

‥‥ああ、なるほどなあって。
自分もちっちゃいころっていろいろ考えてたんですよね。
「私もこういうこと考えた時があった」
って思い出すのが楽しくて。
今はやっぱり大人の事情とか忙しさで
いろいろがんじがらめになっているけれど、
自由に考えてた時がちゃんとあったんだよねなあ、と。
子ども時代って、不自由なんですけどね。
親の庇護で生きているからすごく不自由なんだけど、
でもやっぱり、何も知らない分、
発想はものすごく自由で豊かだったなって思います。
ほかにもオススメの詩はたくさんあるんですけど、
きりがないのでご自分でぜひ読んでみてください。
疲れているときには、とてもいいと思います。

 
大森美香さんの近況

『カバチタレ!』(2005年、フジテレビ)、
『不機嫌なジーン』(2005年、フジテレビ)、
『風のハルカ』(NHK連続テレビ小説2005年)、
『エジソンの母』(2008年、TBS)、
『ブザー・ビート
 ~崖っぷちのヒーロー~』(2009年、フジテレビ)、
映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)、
映画『ヘブンズ・ドア』(2008年)、
映画『カイジ』(2009年)などなど、
数々の脚本を手がけてきた大森美香さん。

そんな大森美香さんが脚本と監督も手がけた映画、
『プール』が9月から絶賛公開中です。




『かもめ食堂』と『めがね』のチームによる新作!
と聞いて、われわれほぼ日乗組員も当然ながら、
けっこうな人数が映画館に足を運びました。
フードスタイリストは飯島奈美さんですから、
それはそれはもう、
おいしそうな料理が次から次に登場して、
そのたびにお腹がグウグウ鳴ってたいへんでした。
‥‥と、われわれの感想はともかく、
すでに観られた方もたくさんいらっしゃると思いますが、
あらためてこの映画のお話を監督にうかがいましょう。
まずは『プール』の見どころから。



「 "人と人がいつも一緒にいることだけが
  幸せかどうかなんてわからない"
 という小林聡美さんのセリフが
 映画の中にあるんですけれども、
 この映画自体が、人と人とのつながりって
 どうなんだろうということを
 すごくシンプルに静かに描いているなと
 脚本の段階から思っていました。
 抱き合ったり、好きだよって言うだけじゃなくて、
 例えばご飯を一緒に食べたり、
 ただ隣にいて本を読んでいたり、
 それだけでもやっぱり伝わるものはあるわけで。
 でも、そこをどうしても、
 今の私たちは疑いがちなんですね。
 電話やメールで連絡を取り合っているのに、
 すごく不安になってしまったりしますよね?
 もっとシンプルな世界に行けば、
 "離れていても相手のことを想っている"
 ということが素直に信じられるかもしれませんよ?
 ‥‥ということが伝わるといいなあと、
 この映画を作りながら思っていました。
 すごく緩やかな流れで進むこの映画の中で、
 観ている方がそういうことをどこまで
 拾ってくださるかはわからないですけれども、
 伝えたいのは、そういう部分ですね。
 ただ、感じ方は自由ですから。
 ご自分のご家族のことを思いながらでもいいし、
 "こういう料理をあの人と一緒に食べたい"
 と思っていただくだけでも楽しんでいただけるかと。
 あとはそう、この映画の登場人物たちと一緒に、
 本当にタイのチェンマイまで旅行に行っているような、
 そんな気持ちで観ていただけると
 うれしいなと思いながら作ってました」

どうしても飯島奈美さんの料理のことが
気になってしまうのですが、
いかがでしたか? 飯島さんの料理は。



「おいしかったですよー。
 本当においしかったです、幸せでした。
 劇中で出てくる料理は、みんなおいしい。
 撮影とは別で
 飯島さんがご飯を作ってくれる会というのがあって
 そのときに日本食も作ってくださったんですが、
 それもおいしかったです。
 ‥‥あ、そういえば私、
 ひとつだけ食べてない料理があるんですよ。
 お鍋があったでしょ? 加瀬亮さんが作る鍋料理。
 トマトと、すごい大きな鶏肉と、
 野菜がいろいろ入ってて、
 レモングラスが風味付けとして入っている‥‥。
 あれは食べられなかったんですよねえ。
 おいしそうでしたよねえ、残念です(笑)」

役者さんたちの静かな演技もすばらしかったです。
現場の雰囲気はいかがでしたか?



「伽奈さんが映画が初めてで、
 すごく緊張して現場に入られてたんですけれども、
 小林聡美さんやもたいまさこさんが
 一緒にご飯に連れていってあげたり、
 みんなでご飯食べたりして、
 だんだん馴染んでいったんです。
 その感じがそのまま映画に出ていると思います。
 小林さんともたいさんは連続ドラマのお仕事で
 何本かご一緒させてもらっているんですけど、
 やっぱり映画の現場で会うと、
 "あ、やっぱり映画女優さんだな"
 という雰囲気があってすてきでした。
 加瀬亮さんとは初めてのお仕事だったんですけど、
 一番ディスカッションしたのは加瀬さんですね。
 "こういうふうにしたい"というのがいろいろあって、
 現場全体を見てくれて。すごく楽しかったです。
 それと、ぜひお話ししておきたいのは、
 小林聡美さんのギターの弾き語りですね。
 いや、女優さんってすごいって思いました(笑)。
 劇中の曲をご自身で作詞作曲されて、
 弾き語りまでしてもらって。
 あれ、ワンカットで撮ったんです。
 "演技するよりもうずっと緊張する"って
 ご本人はおっしゃってました(笑)。
 その意味では、小林聡美さんの
 新しい表情もご覧いただけると思います」

大森監督、ありがとうございました。
小林聡美さんの弾き語りは、すばらしいですよー。
飯島さんの料理は、見ているだけでもおいしいです。
おなかを減らして映画館へどうぞ。
映画を見終わったらタイ料理店へ行くのがオススメです。
(われわれはそうしました)

上映スケジュールなど、
詳しくは『プール』の公式サイトで、ご確認を。

 
 

2009-10-20-TUE

メールを送る ほぼ日ホームへ 友達に知らせる
 
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN