菅原さん |
(集まった東京観光写真倶楽部の部員を前にして)
東京観光写真倶楽部、
新年のプロジェクトを提案します。
それは「箱根駅伝」のドキュメントというか、
撮れるものを全部とってしまおう!
というものです。
じつはぼく、この企画、かなり前のめりなんです。
そもそもぼくは大阪の大学出身ですし
箱根駅伝は縁もゆかりもないのですが、
三浦しをんさんの『風が強く吹いている』
という箱根駅伝をテーマにした小説を読んで以来、
ここ数年、箱根駅伝を観戦するのを
正月の密かな楽しみにしていたのです。
そして箱根駅伝の時期になると
ガイドブックを買ってチェックするんだけど
ぼくも撮ってみたいと、つねづね思っていたんです。
そんなこともあったので「ほぼ日」さんから
この企画を聞いた時、
「それはやりたい!」と即答しました。
西本さんと話したのは、
「箱根駅伝の全区間、全大学、全選手を撮影しよう」
というものです。
ただ、ぼく一人で箱根駅伝の
全てを撮りつくすことはできません。
そこでこれまで40回以上、
一緒に撮影旅行に出かけて
いろんな街のアーカイブを撮り続けてきた、
東京観光写真倶楽部のメンバーにも
協力してもらおうと思ったのです。
実はここにいる、
東京観光写真倶楽部の部員の川北さんは
法政大学で箱根駅伝を目指していた
元長距離選手なんですよ。
選手の目線で箱根駅伝を語れて撮れる貴重な戦力です。
|
川北さん |
わたしも4年間法政大学で
箱根を目指して走ってました。
2年生の時にメンバーに入って走れそうだったのですが、
本番直前に故障してしまって走れませんでした。
箱根駅伝というのは
ぼくにとって永遠のあこがれの届かなかった世界。
いまだに夢で練習している自分が浮かんできます。
箱根が終わるとほとんどの選手が
競技から引退して社会人になります。
実業団に行く人は走ることが仕事になります。
同じ走るにしてもこれまでとは違う生活が待っている。
これが最後のレースという
せつなさを持ちながら走っている人が多いのです。 |
|
|
ほぼ日 |
これはよく聞かれることだとは思うのですが
箱根駅伝を走っている時、
選手はどんな気持ちなんでしょう? |
川北さん |
走っている選手に聞くと
「とにかく声援がすごい」と。
200km以上、絶え間なく声援が続くレースは
世界中見渡しても箱根駅伝だけです。
走っている選手は意外と
「今日の夕飯はなんだろう?」
とか考えていますが、
選手の調子によっては
覚醒レベルみたいなものがあって
集中力が高まって、
意識ははっきりしてるんだけど、
周りが静かに見えるときや
周囲が一枚もやがかかったような状態に入ります。
そういうとき、なぜか沿道の方と
波長があって目があうことがあるんですよ。
|
菅原 |
母校が箱根駅伝を走るとか、
家族や親類が走るという特別な方以外は
おそらく漠然と箱根駅伝を眺めていたと思うんです。
今回はせっかくの機会なのでガイドブックを読んで
撮影に望んでもらいたいと思います。
そこには箱根駅伝を走るであろう、
全選手のデータが掲載されてます。
事前に自分の区間を走る
選手の顔と名前を覚えておくだけで
選手が目の前に現れた時に
「きたーっ!」と興奮するはず(笑)
そうやって撮った写真は
漠然と選手をフレームに入れて撮った写真とは
絶対、違うはずなんです。
|
川北さん |
走っている選手としては
「●●大学頑張れ」という声援も嬉しいのですが、
一番、選手がうれしいのは名前で呼ばれることです。
これは本当に力が出ます。
|
菅原さん |
特にベースボールマガジン社のガイドブックには
趣味や好きな芸能人だけでなく、
勝負メシまで書いてある(笑)。
それを読んでいるだけで、
「この子は今朝も勝負メシのカステラを
食べて走っているはずだ」
と思うだけで、選手との距離感が違ってくるはずです。
最終的には全ての写真をセレクトして
みんなで鑑賞ができるようにしたいと思ってます。
全区間、全大学、全選手の写真ですから
箱根駅伝は10区間20校200名の選手が走りますから
最低でも200枚ですね(笑)。
おそらく1000枚は超えることになるんじゃないかな。
プリントするだけでも大変なことになりそうです。
そして、みなさんが撮影してセレクトした写真は
Numberさんを通じて出場大学の陸上部にお送りして
選手に渡していただく予定です。
|
ほぼ日 |
とはいえ、ランナーを撮るには
それなりの準備が必要です。
ということで、強力な助っ人を用意しました。
数多くの箱根駅伝オタクの中でも一目をおかれている
通称「駅伝マニア」さんという方です。
|
|
|
|
この方、毎年一人で箱根駅伝全区間、
全大学、全選手を写真におさめているんです。
ただ、2012年の箱根駅伝は10区の青山学院の選手だけを
取り逃がしてしまったそうで、
今度の箱根駅伝はリベンジに燃えているとのこと。
ですので、たとえ、みなさんが撮り逃がしたとしても
この人が最後の砦として撮影してくれるはずです。 |
部員 |
一人で全区間をまわるなんて
そんなことが可能なんですか? |
駅伝マニアさん |
すべて地下鉄や電車の移動で可能ですよ。
2012年の移動はこうでした。
朝8時のスタートを大手町で見届けてから
ダッシュで8時3分大手町発の三田線を目指します。
選手が8時にスタートした瞬間に
ぼくの箱根駅伝もスタートするのです。
そして三田線の田町が5km地点。
ここはまだ集団で移動してます。
そして田町から川崎に移動して
3回目の1区をみます。
このあたりで先頭集団が
バラバラになったところを撮って
次は保土ヶ谷で2区をみます。
保土ヶ谷は2〜3区の中間地点くらい。
そして3区は藤沢、4区は大磯と
JRで移動しながら撮影していきます。
そして5区は小田原駅の近くに行きます。
3区か4区をあきらめれば
山に入ることもできるのですが、
箱根登山鉄道も乗車まで1時間待ち、
タクシーで行こうにも交通規制で入れないので
往路はここで終了。
|
部員 |
復路は箱根に泊まるのですか? |
駅伝マニアさん |
本当は箱根に泊まって
芦ノ湖からの6区のスタートも見たいのですが
まずは始発で箱根湯本までいき
徒歩で塔ノ沢という温泉街で選手を待ち構えます。
そこからは前日同様、7区大磯、8区藤沢と戻って
9区は新子安もしくは横浜駅前で見て
田町で10区アンカーの選手を撮影します。
そしてゴールの大手町に向かうわけですが
ゴール付近は歩けないほど人がいるので
選手の撮影は難しいですけれども
レース終了後には大手町のいろんな場所で
各大学の監督や選手が
OBや関係者に挨拶をするんですが、
これも箱根駅伝の風物詩のひとつ。
大手町まで来られる方は
ぜひご覧になるといいと思います。 |
|
|
菅原さん |
ということはsuicaのチャージは
ギンギンに入れておくべきなんだね。
|
駅伝マニアさん |
そこ、結構、ポイントです!
オトナチャージしておいてください。
ただ、ぼくの移動パターンでみんなが移動すると
全部同じ写真になってしまいます。
ですので、みなさんは一駅ずらしてもらうと
今回の企画の場合はいいかもしれませんね。
|
部員 |
電車の移動だけでなく、
駅からコースまでの移動が大変そう。
|
駅伝マニアさん |
往路は先頭と最後尾の選手との差は
それほどでもないのですが、
復路は最後尾の選手が
なかなか来ないことがよくあります。
復路は駅まで走ることが多いです。
ですから、箱根駅伝では
ランニングシューズが必須です。
そして、長時間の移動も苦にならないように
機材も軽くしておく必要があります。
|
菅原さん |
それでは当日の装備や機材について
お話をしましょうか。
駅伝マニアさんのアドバイスを参考に
ぼくも箱根仕様で機材を揃えましたから。 |
|
|