僕は、「空白のある旅行」が好きです。
ここで言う空白とは、旅行の予定を決めすぎず、
なにかしらの「遊び」を残しておくこと。
宿をあらかじめ予約しないとか。
夕飯のお店を現地で決めるとか。
行き先をその場まかせにするとか。
そういう「遊び」が旅にあると、
じぶんの予期せぬことがたまーに起こるんです。
この予期せぬことを僕は、
ちょっと大げさですが、
「おのミラクル」と呼んでいます。
たとえば4年前、こんなことがありました。
僕はあるアニメ映画が好きで、
その映画のモデルになったとされる
場所へ行きたいと思い、
オーストラリア メルボルンへ
ひとり旅をすることにしました。
旅の目的地 メルボルン グレートオーシャンロード
僕はこの旅において、
海外旅行を何度か経験していること、
オーストラリアは比較的安全だということ、
7泊8日の旅程でレンタカーを予約していたことから、
事前にホテルを予約しませんでした。
どうしようもなかったら、車中泊でもよいかと。
旅行初日。
羽田から深夜便で経由地のシンガポールへいき、
2、3時間のトランジットを経て、いざメルボルンへ。
ジャンボジェット2階の一番後ろ、
列に2席しかないエコノミー席に座って、
隣はどんな人かなーと思っていたその時。
座席ベルトがポンと僕の方に飛んできて、
「んっ?」と顔を見上げると、
恰幅がよく、丸メガネ&ちょびヒゲのおじさま。
この瞬間、僕は「勝った」と思いました。
だって、このお隣の男性、
僕の好きなアニメ映画の主人公に
そっくりなんですもの。
この隣のおじさま ヘンさんと、
僕は拙い英語で世間話を始めました。
君は日本人?とか、
おれの上司は日本人なんだとか、
大阪は行ったことあるとか、
何しにメルボルンに行くの?とか。
いろいろ話した後、
「宿はどこに泊まるんだい?」と聞かれ、
「宿は決めてないんだ」と答えると、
「そうか。そうしたらうちに来る?」とのこと。
?
「うちに来る?」
一瞬、大丈夫かなーと
不安が頭をよぎりましたが、
こんなにありがたいお誘いはないと思い、
お家へお邪魔することにしました。
そうしてお招きいただいたお家がここ。
2LDKのマンション。
「この部屋を寝室に使ってね」と通された部屋。
駐車場もあるから使っていいよとのこと。
左から2番目のクルマがこの旅の相棒。
僕の拙い英語では理解できなかったのですが、
ヘンさんは市内でホテル暮らしだそうで、
使ってないマンションがあるから好きに使っていいよと
言ってくれていたのです。
僕はそれから約1週間、
ヘンさんのお部屋を拠点に、
メルボルン滞在を満喫しました。
最終日には、ヘンさんご夫婦と息子さん、
そして息子さんのお友達という英語オンリーの
中華料理ディナーに呼んでいただいたりして。
(※はじめて英語だけのディナーを経験しました)
8日間を通して、メルボルンに住んだら
こんな気分なんだろうなーと、
普通の旅行ではありえない
貴重な体験をさせていただきました。
映画のワンシーンを彷彿とさせる 「ロックアードゴージ」
他にもこんなことがありました。
とある年末、
「本場の讃岐うどんを食べに行く!」
というテーマ以外は何も決めず、
香川県へ飛びました。
お昼過ぎに高松空港へ到着し、
そのままタクシーに乗って、
有名うどん屋さんへ直行。
「これを食べるために来たんだ!」
と思えるほどのうどんをいただき、大満足した後、
とくに予定を決めていなかったので、
はて、どうしようかなと思いました。
まずは最寄の駅に行こうと思い、
「この辺りにタクシー乗り場かバス停はありますか?」
とお店の周りを掃除していた
40歳前後の男性に話しかけたところ、
その近くでお仕事をしていた
おばちゃんが唐突に一言。
「あらーちょうどいいわねー、
社長に乗せてってもらいなさいよー」
「あーそうだねー。
そうしたら乗っていきますかー?」
???
導かれるままにクルマに乗せていただき、
車内でその男性とお話ししていたら、
どうやら先ほどおいしくいただいた
有名うどん屋さんの社長さん!
(おばちゃんはたしかにそう言っていたのですが、
直接聞くまで意味を理解できてなかったのでした)
感謝と恐縮の気持ちを抱きつつ、
社長さんと車中で世間話をしていたときです。
「今日はどちらへ行かれるのですか?」
「琴平(金比羅さんのある町)まで行こうかと思ってます」
「そうですかー。宿はどちらに?」
「それが決めてなくって」
「決めてないの!?年末だしそれはまずくない?」
と言った次の瞬間、クルマを路側帯に停めて、
社長さんは電話をかけ始め、
僕のお財布事情を考慮してくれた上で、
ネットワークを駆使して
琴平町にあるホテルを予約してくれました。
もう何も言えねえ・・・です。
その後、社長さんはホテルまで送ってくださり、
精一杯の感謝の気持ちをお伝えすると、
「いいのいいの。旅行楽しんでねー」と言って、
颯爽とお帰りになられました。
かっこいい。
あんな人になりたい。
もちろんご紹介いただいたホテルが
素敵だったことは言うまでもありません。
ホテルにチェックインした後、余韻に浸りつつ、
夕時の金刀比羅宮をゆっくりと登りました。
釜玉うどん。最高です。
金刀比羅宮からの眺め。
今までお話ししたことは、もしかしたら、
運がよかっただけなのかもしれません。
いや、運がいいだけなんだと思います。
こんなラッキー、毎度起こるわけでもありませんし、
万人にオススメできる旅行の仕方でもないのは承知です。
ただ、なぜなのかは説明できないのですが、
旅行に「空白」をつくったとき、そうでないときよりも、
おのミラクルが起こっている気がします。
その結果、想像以上に、旅行がたのしくなる。
予定をたくさん組む旅行も好きですし、
バックパッカーのように自由に放浪するのも憧れる。
なんとなくその中間くらいで、
じぶんにとってちょうどいいのが
「空白のある旅行」かもと解釈しています。
さて、今年はどこへ行こうかなー。
(以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!)