ぼくは、静岡県の三島市というところ出身です。
「三島市」‥‥
と聞いて、知らない人の方が多いと思います。
おおざっぱに説明すると、
太平洋側の、日本の真ん中あたりです。
新幹線の駅でいうと熱海のとなり。
伊豆の玄関口とも言われている場所です。
東海道五十三次の宿場町としても有名ですね。
そんな三島で、ぼくが特に好きな場所が
「源兵衛川」です。
なんだか人の名前みたいですが、その通り。
源兵衛さんという人が河川工事をしたので、
その名前が付けられたそうです。
街の中を流れるキレイな小川で、
川の上には歩いて渡れる石が並んでいます。
水のせせらぎと鳥のさえずりに耳を傾けながら
そこをぽんぽんと渡るのが好きなんです。
一歩一歩、石を渡っていくごとに
嫌なことを忘れ、心の雲が晴れていく気がします。
今は三島を離れて東京で暮らしていますが、
三島に帰った際は必ず、源兵衛川へ癒され荷行きます。
都会に暮らす今だからこそ、
水の尊さを、より感じるようになったのかもしれません。
この時期は水量も増えてきて、夜にはホタルも飛び交い、
一年で最も好きな時期です。
といっても、景観の良い小川は、全国各地にあると思います。
この源兵衛川がちょっと特別なのは、
日本一の山・富士山からの湧水が流れているところ。
おおむかしに富士山が噴火した際、
その溶岩が三島まで流れてきたといいます。
それが長年かけて地層となりました。
富士山に染み込んだ雪解け水や雨水が
ゴツゴツとして隙間の多い溶岩石の地層を通って、
末端付近にある三島市周辺で湧き出しているんですね。
そのため、
三島には水が湧き出している池や川が数多くあります。
この時期に水量が増えてくるのは、
冬に積もった雪が徐々に溶け出してくるからなんです。
なので、冬の水量は少なく、夏は多い。
さらにいうと、年によっても違う。
数年に一度しか湧き出さない池もあり、
湧水はキマグレでナゾが多く、神秘的。
そんな、ころころと違う顔を見せる
まるでそれ自体が生き物かのようなところも好きなんです。
また、その水で三島市民の生活も支えられています。
蛇口を捻れば、おいしい湧水がジャブジャブ出てきます。
難しいことはわかりませんが、
この水が“おいしい水”と呼ばれる成分の条件を
たっぷり満たしているんだとか。
ぼくはコーヒーが好きでよく飲むのですが、
三島で作るコーヒーはひと味違う。
同じインスタントコーヒーを使っても、
三島の水で作ったコーヒーはよりおいしいんです。
もちろん料理だっておいしくなります。
お風呂に入ればお肌もツヤツヤに!
そうそう、三島といえばうなぎが有名です。
遠くから食べに来る人で、連日行列を作る名店もあります。
でも、三島でうなぎは生産していません。
いったい、どうして有名に?
これも、三島の水が関係しています。
三島の水にうなぎを一週間ほど入れておくと、あらふしぎ。
うなぎがとっても美味しくなるというのです!
まるで魔法ですね。
料理をよりおいしくしてくれる、
まるで調味料のような水が好きなんです。
水が生み出す風景、
水が湧き出すメカニズム、
水によって作られる生活、
全部ひっくるめて
三島の水が好きなんです。
さらに三島には水に関する歴史的建造物も多く、
そもそも静岡と水の関わりはもっと深くあるのですが‥‥、
それはまた、いつかどこかで。
「あ、三島ってちょっと良いかも‥‥!」
って思った人は、是非三島の水に触れあいに来てください。
きっと好きになるはずですよ。
関東や関西を新幹線で忙しく飛び回っている人も、
三島で途中下車して寄り道なんて、いいかもしれません。
おっと。
でも、新幹線の「のぞみ」に乗ってはダメですよ。
三島には止まりませんからね。