もくじ
第0回プロローグ 行政文書保全指導員になるまで。 2016-06-28-Tue
第1回「指導・助言」とは、できるように考えること。 2016-06-28-Tue
第2回無理をしないかたちで、どうやるか。 2016-06-28-Tue
第3回今を未来に伝えるために。 2016-06-28-Tue
第4回地域の資料を守る仲間をふやしたい。 2016-06-28-Tue

ことばに込められた思いをどのように残していくのかに関心があります。
多くの人に伝わる表現方法をまなび、
自分の伝え方をみつめなおしたく、塾に参加しました。

防塵マスクや刷毛などの、資料レスキューグッズは、
すぐ手の届くところに、まとまっています。

未来に伝えるために。
地域資料保全に挑む。

担当・uno

大規模自然災害などにより被災した資料を、
保全し、復旧への作業を行う活動は、
阪神・淡路大震災以降、全国で行われています。

「資料レスキュー」と呼ばれるこの活動の
対象は、古文書や植物標本、写真など、
その活動によりさまざまです。

2011年5月から、行政文書のレスキューを中心に、
回数は多くありませんが、参加しています。

こういう活動があることを多くの方に知ってもらえれば、
より多くの資料が残っていくのではないか…と考え、
活動が日常の一部となっている、林さんに
話を聞いてみようと思いました。

行政文書のレスキューの初期段階では、
新聞紙や段ボール、ビニールひもなどを使ったりと、
生活の身近なものも用いられているのですが、
そのような方法については、
本やウェブでも見ることができるので、
なかなか記されない、
活動に対する思いや資料を残すことについて聞きました。

プロフィール
林 貴史(はやし・たかし)さんのプロフィール

プロローグ 行政文書保全指導員になるまで。

2015年9月10日。
関東地方に、大雨が降りました。
のちに「関東・東北豪雨」と呼ばれる豪雨です。

鬼怒川の1か所で堤防決壊し、
7か所で溢水・越水が起こるなどの水害が起こりました。
その結果、茨城県常総市では市域の約3分の1にあたる、
約42平方キロメートルが浸水しました。(*1)

浸水は、常総市役所にもおよびました。
市役所の行政文書を永年保存するための書庫には、
床上92センチの浸水がありました。

書庫を管理している、市の総務課の方は、
土嚢づくりをしていたら浸水が始まったと聞き、
大急ぎで、棚から文書を取り出したそうですが、
保存していた約1万数千点のうち、
半数の行政文書が水損してしまいました。

行政文書は、その自治体が、
いつ、どのような運営だったのかを知ることができる、
将来に引き継いでいくべき、
市民の貴重な財産です。

この貴重な財産を救うために
常総市職員や茨城県内の関係機関の職員をはじめ、
県内外のボランティアなどのべ200人が協力し、
10月上旬には行政文書を第一分庁舎に運びこみました。

現在では体制を整え、第一分庁舎で、
月曜日から金曜日までと第一土曜日に、
水損文書の復元作業が行われています。

作業は、カビの除去のためエタノールで洗浄して、
フロアに平置きし、送風機を使って風を当てて乾燥させます。
そののち、ページを1枚ずつ丁寧に開いていきます
(水損の程度により異なる工程をとることもあります)
(*2)。

作業を行うにあたっては、
東日本大震災による津波で被災した行政文書の復旧を
行った機関等が助言や技術指導をし、
また、作業に用いる物資を支援しています。

作業は、市の職員のほかに、
シルバー人材センターから派遣会員、
新たに雇用した臨時職員、
非常勤特別職として委嘱した行政文書保全指導員、
随時受け入れているボランティアにより、
行われています。
(見学も随時受け入れているそうです。
常総市役所総務課にお問い合わせください)。

復旧作業を行う体制はさまざまですが、
経験者を非常勤特別職として、自治体が委嘱することは、
わたしの知っている範囲では、初めてです。

行政文書保全指導員を委嘱された、
林貴史さん。

週に3日程度、水損した行政文書の復旧や
その作業の見学者へ、作業の説明を行ったりしています。

わたしが林さんと初めて会ったのは、
2011年5月、釜石市での行政文書の復旧作業の時でした。
常総市での行政文書の復旧作業にも、
少しですがお手伝いに行っています。
なので、全く知らないわけではないのですが、
受け入れてもらう側から受け入れる側にかわるのは
どのような思いなのか、関心を持ちました。

活動のきっかけはなにか、
ふだんはどんなことをやっているのかなど、
改めて聞いてみたことを、全4回で紹介します。

(つづきます)

謝辞:
常総市での水害記録等については、
常総市役所総務課の倉持さまにご教示いただきました。
ここに記して、感謝申し上げます。

*1 『平成27年9月 関東・東北豪雨 常総市災害記録
   忘れない9.10』 2016年3月 常総市発行 より引用

*2 『広報常総』2016年6月号の4ページから5ページに、
   「関東・東北豪雨からの再生」との記事があり、
   これまでの経緯がまとめられています。

第1回 「指導・助言」とは、できるように考えること。