2015年9月10日。
関東地方に、大雨が降りました。
のちに「関東・東北豪雨」と呼ばれる豪雨です。
鬼怒川の1か所で堤防決壊し、
7か所で溢水・越水が起こるなどの水害が起こりました。
その結果、茨城県常総市では市域の約3分の1にあたる、
約42平方キロメートルが浸水しました。(*1)
浸水は、常総市役所にもおよびました。
市役所の行政文書を永年保存するための書庫には、
床上92センチの浸水がありました。
書庫を管理している、市の総務課の方は、
土嚢づくりをしていたら浸水が始まったと聞き、
大急ぎで、棚から文書を取り出したそうですが、
保存していた約1万数千点のうち、
半数の行政文書が水損してしまいました。
行政文書は、その自治体が、
いつ、どのような運営だったのかを知ることができる、
将来に引き継いでいくべき、
市民の貴重な財産です。
この貴重な財産を救うために
常総市職員や茨城県内の関係機関の職員をはじめ、
県内外のボランティアなどのべ200人が協力し、
10月上旬には行政文書を第一分庁舎に運びこみました。
現在では体制を整え、第一分庁舎で、
月曜日から金曜日までと第一土曜日に、
水損文書の復元作業が行われています。
作業は、カビの除去のためエタノールで洗浄して、
フロアに平置きし、送風機を使って風を当てて乾燥させます。
そののち、ページを1枚ずつ丁寧に開いていきます
(水損の程度により異なる工程をとることもあります)
(*2)。
作業を行うにあたっては、
東日本大震災による津波で被災した行政文書の復旧を
行った機関等が助言や技術指導をし、
また、作業に用いる物資を支援しています。
作業は、市の職員のほかに、
シルバー人材センターから派遣会員、
新たに雇用した臨時職員、
非常勤特別職として委嘱した行政文書保全指導員、
随時受け入れているボランティアにより、
行われています。
(見学も随時受け入れているそうです。
常総市役所総務課にお問い合わせください)。
復旧作業を行う体制はさまざまですが、
経験者を非常勤特別職として、自治体が委嘱することは、
わたしの知っている範囲では、初めてです。
行政文書保全指導員を委嘱された、
林貴史さん。
週に3日程度、水損した行政文書の復旧や
その作業の見学者へ、作業の説明を行ったりしています。
わたしが林さんと初めて会ったのは、
2011年5月、釜石市での行政文書の復旧作業の時でした。
常総市での行政文書の復旧作業にも、
少しですがお手伝いに行っています。
なので、全く知らないわけではないのですが、
受け入れてもらう側から受け入れる側にかわるのは
どのような思いなのか、関心を持ちました。
活動のきっかけはなにか、
ふだんはどんなことをやっているのかなど、
改めて聞いてみたことを、全4回で紹介します。
(つづきます)
謝辞:
常総市での水害記録等については、
常総市役所総務課の倉持さまにご教示いただきました。
ここに記して、感謝申し上げます。
*1 『平成27年9月 関東・東北豪雨 常総市災害記録
忘れない9.10』 2016年3月 常総市発行 より引用
*2 『広報常総』2016年6月号の4ページから5ページに、
「関東・東北豪雨からの再生」との記事があり、
これまでの経緯がまとめられています。