もくじ
第1回「言語復興の港」のこと 2016-06-28-Tue
第2回デザイナーのゆりえー 2016-06-28-Tue
第3回絵描きのふーみー 2016-06-28-Tue
第4回何を残すか 2016-06-28-Tue
第5回責任持って、にぎってる 2016-06-28-Tue
第6回なろうとしてこうなった 2016-06-28-Tue

立命館大学の研究員です。琉球のことばの研究をしています。
課題2が、すがすがしいほどのできなさだったので、課題3では、仲間のことばを借りて、お届けします。

たのしげな人たち

担当・山田真寛

「何もしなければ」近い将来なくなってしまう ことば
ことばに また元気になってもらうための プロジェクト
プロジェクトは、 ことばが話されてる島の人たちと、
デザイナーと、絵描きと、それと フィールド言語学者
言語学者が 聞きます。あなたたち、なんで 楽しいの?

第1回 「言語復興の港」のこと

ふーみー
「何もしなければ」もうすぐなくなってしまう言語の復興
っていうプロジェクトは、どうやってはじめたの?
最初はことばそのもののことばっかり研究してたんだよね。
まーさー
ことばの研究は、
2005年に日本のICUっていう大学を卒業して、
アメリカの大学院で理論言語学を研究してたのが始まり。
人間はなんでしゃべれるのか、を説明する理論を作ってた。
ゆりえー
理論を作ってた。

まーさー
大学院を2010年に卒業して、
文科省のお金で3年間自由に研究できる
っていう身分になったときに、
何か新しいことを始めようと思った。
それで、フィールドに出て行って、
全然知らない言語を一から記述する
っていうのを始めたんだ。
ふーみー
それで与那国島に。
まーさー
いや、最初はお世話になってた先生についてって、
宮古島に行くはずだったんだけど、
同僚が与那国島に行くよって言うから、
あんまり何も考えずにほいほいついてった。
ゆりえー
ほいほいついてっちゃったんだ。
まーさー
そう、最初の2年くらいはその同僚と、
与那国のことばの文法書書こうぜって言って、
一緒に通ってたんだけどね。
その同僚がフランス人で、フランス帰っちゃって。
ふーみー
え、急に?
まーさー
いや、フランスで就職が決まって。
ふーみー
へー。
まーさー
それで、僕が一人でやることになったんだ。
最初そんなつもりなかったんだけど。
それからだんだん島の人と仲良くなって、
一緒に何かやろうかって、
それで消滅危機言語の復興っていうのを、
始めることになったんだ。
ふーみー
この辺はずっと与那国在住…。

まーさー
その頃はね、一か月与那国にいて、
三か月くらい内地帰ってきて、学会行ったりとかして。
あ、2011年はね、アメリカに住んでたわ。
理論言語学で、学生の頃にやり残したことを…。
ふーみー
え、そうなの?
まーさー
ニュージャージーに半年、シカゴに半年。
そのときもアメリカから与那国に通ってたよ。
ふーみー
またアメリカに住んでたんだ。
んー、私たちもそうだけど、すごい移動っぷりだね。
まーさー
で、文科省の研究者の身分が
3年で終わっちゃうときに、
その…焼き鳥屋で、広島大学の…。
ふーみー
就職が。
たまたま隣に座った人が広島大学の先生だったの?
まーさー
いや、研究会の懇親会みたいなところで、
「僕、来年無職なんです」「じゃ4月から来てください」
みたいな感じでお仕事作ってくださって。
ふーみー
ふんふんふん。
まーさー
その次の年、2014年に京大で就職が見つかって来たときに、
科研費の助成金に応募できるようになったから、
島の人たちと一緒にやる消滅危機言語のこと、
ちゃんと研究にしようって思ってね。
ちょっとやりはじめたくらいだったかな。
ふーみー
ふーん。
まーさー
ほとんど誰も何にもやってないことだったから、
けっこうやれることが多くてさ、考えながらだけど。
ふーみー
難しいことだけどチャンス、みたいな。
まーさー
そうそう。100個やって、90個くらい失敗して、
1個くらいうまくいくっていうのを繰り返してる感じかな。
ふーみー
ふんふん。
まーさー
今みたいなプロジェクトのかたちは、
GK京都でデザイナーやってるなぐなぐと話したことからだ。
一緒にごはん食べたときに、
最近こういうことやってんだっていう話をして、
なんとなく誘ったんだよね「与那国行かない?」って。
ふーみー
なんで与那国に誘ったの?
まーさー
論文書いてもさ、そんなもんみんな読まないから。
ふつうの人でもおもしろいようなことをやりたいんだよね、
みたいなことを言ったんだな。
で、なぐなぐが考えてくれて、
GK京都に何回か相談しに行ったんだ。
それでいろんな人が、
入れかわり立ちかわり話を聞いてくれて。
ふーみー
うんうん。
まーさー
それで最終的に、なぐなぐとはまーが
一緒に与那国行くことになって、
とにかく島の人たちと話そう
って二人が提案してくれたんだよね。
ゆりえー
コミュニケーションは大切。
まーさー
僕もデザインのこととかまったく知らなかったから、
ワークショップやってデザインの話してよって頼んだ。
で、そのあとに懇親会やって、
島の人と食べたり飲んだりしようって。
ふーみー
飲んだり食べたり、それは楽しそう。
まーさー
人がいっぱい来てくれるように…
じゃあ、来てくれた人と一緒にバッジ作ろうって、
なぐなぐとはまーが。
ふーみー
うんうんうん。
まーさー
与那国のことばでバッジ作ったらおもしろいじゃんって。
で、ただバッジ作るだけだともったいないから、
じゃあそれに、ことばのこと書いたリーフレットみたいな
ふろくつけようって言って、僕がそれを作った。
あれが最初だな、ちょっとしたことばの解説と、
おもしろいものをセットにするっていうの。

ふーみー
ふんふんふんふん。
まーさー
ワークショップもことばの解説付きバッジも、
島の人たち楽しそうにしてたからさ、
あ、これいけるかもって思ったんだな。
ふーみー
ふんふんふんふん。
まーさー
そのあと2015年にハワイであった学会で、
とくちゃんも、島の人と一緒にやる言語の復興
やりたいわって言ってたんだ。
ゆりえー
そこでことばチームの仲間が。
まーさー
そうそう。具体的になんかやろうかっていうときに、
とくちゃんのフィールドの沖永良部島に、
島のことばで物語を書いてる人がいるから、
そのお話を絵本みたいな形にしようってことになったんだ。
ふーみー
ふんふんふんふん。
ゆりえー
その沖永良部の絵本のデザイナーで、あたしが入ったんだね。
まーさー
僕らが始める前に、
僕が最初に京大に来た時のホストの先生が、
宮古島のことばで絵本をつくってたんだよね。
ゆりえー
そうそう。
あたしが働いてるコンテンツ作成室の共同研究で。
まーさー
宮古島の幼稚園の先生の創作物語で、
僕らの沖永良部のケースと似てるから、
真似してみたら、
もっといいものがつくれるんじゃないかって。
それで僕らも共同研究に採択されて、
ゆりえーがデザイナーやることになったんだよね。
ふーみー
なるほどー。
まーさー
で、琉球の島の消滅危機言語の話なんかをしてたら、
山本史さんていう人が竹富島の「星砂の話」
っていう民話の絵を描いていると…。
ふーみー
あ、私ここで出てきた。
まーさー
おもしろい人らしいというのを…。
ゆりえー
ふーみーに会ったのは、安心のデザインっていう、
病院のデザインをしているプロジェクトがあってね。
私も同じようなことをやりたいって思ってたから、
そのプロジェクトのセミナーに参加したんだけど、
それで、からだの学校っていう、
福島でやってるプロジェクトの絵を
ふーみーが描いていててね。
まーさー
それはふーみーが仕事でやってたの?
ふーみー
そう、京大と京都芸大の共同のプロジェクトで。
まーさー
あー、なるほどー。
ふーみー
京大の医療域学の先生とかスタッフの人が、
福島でアプリケーションとか、ノートとかをつくって、
それで健康管理ができるようなプロジェクト。
まーさー
絵はなんで?あ、京都芸大で非常勤やってたから?
ふーみー
そう、ビジュアルのデザインの担当で、
私の先生と一緒にキャラクターデザインとか、
イラストをそこで描いてた。
まーさー
ふむふむ。
ふーみー
その先生から、
琉球の民話の絵本とか描いてるんだったら、
京大にこういう人たちがいるよ、
みたいな感じで紹介されて。
まーさー
あー、宮古の絵本のことを聞いてたわけね。
ふーみー
そう、それで会ってみたいなーって思ってたら、
その安心のデザインのセミナーで会えた。
それで、まーさーがシフォンケーキ焼くから
食べにおいでって言われて、会いに行って、
そこから「言語復興の港」が…。
まーさー
そう、桟橋と火を焚く灯台くらいはこの辺で。
ふーみー
(笑)いいよ、港っていい名前だね。
ゆりえー
いいよね。

ふーみー
どうやって決めたの?よし、どんどん逆インタビューしよう。
ゆりえー
なんで港にしたの?
まーさー
いやいや(笑)。
最初は助成金の申請書を書くときに、
「研究プラットフォーム」って言ってたんだよ。
ふーみー
ふんふん、駅のプラットフォーム。
まーさー
人とか、ものとか、
やり方とか考え方とかが集まるところっていう意味で。
それをしばらく使ってたけど、
そういえば琉球の島をしばらくフィールドにするのに、
あそこ、今は鉄道って沖縄のゆいレールしか走ってないさ、
プラットフォームとかないさって。
ふーみー
だったら、港だろうって。
いいやんねー。
ゆりえー
いい、いい。
まーさー
で、しばらくいろいろ港のことを考えてさ、
人が集まって、同じ船に乗る仲間になって、
新しいところに出発してとか、
持ち帰ったものを他の船が利用するとか、
嵐のときは港の中で力をつけられる、とか、
このプロジェクトの姿にしっくりきたんだな。
ふみゆり
ぴったりだねー。
第2回 デザイナーのゆりえー