山形県の山辺町という、
人口1万5千人の田舎町に、
日本中の足元を彩る「じゅうたん」があります。
そのじゅうたんを
つくっている会社の名前は、
「オリエンタルカーペット」。
昭和10年、1935年に
じゅうたんの製造をはじめ、
今年で創業81年目を迎える
老舗のじゅうたんメーカーです。
もしかすると、
知らず知らずの内に、
オリエンタルカーペットでつくられた
じゅうたんの上を歩いてきた人も、
多いかもしれません。
歌舞伎座、新国立劇場、
ホテルオークラ、帝国ホテル、
東京証券取引所、京都迎賓館、
清水寺、アメリカ合衆国大使館…
そんなたくさんの場所に
敷き詰められたじゅうたんは、
この会社の手によって、
ひとつずつ、つくられています。
実はわたくし、
このじゅうたんやの、
息子です。
5代目代表取締役社長、
渡辺博明の次男坊です。
ただし、
息子なのですけれども、
今は東京でまったく、
違う仕事をやっています。
むしろ今まで、
実家がじゅうたんやということが
コンプレックスで、
ずっとそれを避けたり遠ざけたりしながら、
思春期を過ごしてきました。
ようやく最近、
二十代の後半に差しかかって、
その苦手意識のようなものが、
変化してきました。
そして今あらためて、
うちのじゅうたん、
やっぱり、すごくいいぞ。
これはほんとうに、色んな人に、
喜んでもらえるものなんじゃないだろうか。
今更かもしれないけれど、
このじゅうたんに、関わっていきたい。
何か出来ることを、やっていきたい。
そんなことを、
真剣に思うようになりました。
今回、この「ほぼ日の塾」の場を借りて、
あらためて父親に、
今までちゃんと聞けなかった、
「じゅうたんのはなし」を、聞いてみました。
そしてその様子や、
話を聞くために訪れた
山形のじゅうたん工場の風景を、
親友のカメラマンに、
写真におさめてもらうことにしました。
この出来事や気持ちを文章にして、
かたちとしてこの場に残すことが、
じゅうたんと関わっていく
最初の1歩目になる、そう思えたのです。
そんな経緯ではじまった、
じゅうたんやの父と息子による、
はじめての、じゅうたんのはなし。
全4回です。
お付き合い頂けましたら、うれしいです。
撮影:Kodai Kobayashi
(つづきます)