もくじ
第1回ラグビーは日本らしいスポーツ? 2016-06-28-Tue
第2回ラグビーのみどころは? 2016-06-28-Tue
第3回ラグビーのルールというか原則。 2016-06-28-Tue

「ほぼ日の塾」の生徒のなかで、
おそらく一番ベンチプレスを挙げます(120kg)。
どうぞよろしくお願いいたします。

「ルールがわからない」

ラグビーのイメージは?
そう聞かれたとき、ほとんどの人が
このように返すのではないでしょうか。
(あとは「痛そう」とか‥‥)

たしかに、決してカンタンではありません。
むしろ、むずかしいかもしれません。

しかもラガーマンったら強引だから、
「とりあえず観たら面白いよ!」
なんてことを言いますよね(笑)。

たしかにラグビーを
初観戦した人はみんな言います。
「ルールがわからなくても面白かった!」と。

その人たちはルールなんて知らなくても、
「会社の同僚に誘われたから」とか
「友だちが試合に出るから」とか、
そんな理由でスタジアムに行くことが多い。

たとえば、ルールを覚える近道のひとつに、

選手のなかに
「彼氏」か「息子」を
つくってしまう

という手があります。
もちろん「妄想」で、です(笑)。
じぶんの彼氏や息子を応援しに行くうちに
だんだんとルールを理解していくのです。

「理論は現実に従う」
なんてドラッカー先生も言っていますが、
ラグビーだって、ルールを覚えるよりも
まずは試合を観てみることが
スタートだと思うのです。

‥‥とはいえ、あらかじめ
ラグビー観戦の醍醐味やルールを
知っておきたいものですよね。

そこで。このコンテンツでは、
ラグビーがどんなスポーツなのか、
どこに注目して観ればいいのか、
ルールはどんなものなのかを
書いていきたいと思っています。

そんなエラそうなことを言うわたし、
大学のときはラグビー部に所属していました。
そして、いまは社会人として
コピーライターの仕事をしながら
早稲田大学高等学院という高校の
ラグビー部のヘッドコーチをしています。

ラグビーをやってきた者として、
ことばという武器をつかって、
ラグビーの魅力をお伝えできたらと思います。

このコンテンツのゴールは、
「けっきょく、ルールよくわかんないけど、
 とりあえずなんか観に行きたくなった!」
です。では、スタート!

第1回 ラグビーは日本らしいスポーツ?

ほとんどの球技といわれるスポーツは、
「制限することによって面白くしている」
と言えるかもしれません。

サッカーは手を使ってはいけない。
バスケはドリブルをしなければいけない。
野球は打順を守らなくてはいけない。
テニスはラケットで打たなければいけない。
ハンドボールは蹴っちゃいけない。

ところが、です。

ラグビーは、あきれるほどに
「自由すぎるスポーツ」なのです。

パスもキックもしてしまえ。
ボールを持って何歩でも走っていい。
だれがいつボールを持ってもいい。
ポジション固定もしなくていい。
目の前に敵がいたら吹き飛ばしていい。
ボール以外の道具は使わない。

しかも球技最多人数の、
30人もの人たちがグラウンドで
ひしめき合ってる。

‥‥なんて野蛮な
スポーツなのでしょう(笑)。
(よく言えば、「シンプル」です)

しかし、だからこそ、
「自由であるためのルール」が
いくつか存在しているスポーツなのです。

よく「アメフトとのちがいは?」
と聞かれることがあります。

「ボールを前に投げちゃいけないのが
 ラグビーだよね?」

はい、そのとおりです!

「ラグビーって防具をつけてるよね?」

いや、それはアメフトです。

おなじ楕円のボールを使っていて、
タックルをするということで
似ているからかもしれません。

あくまでも個人的な考えですが、
ラグビーとアメフトは、
「発祥の起源」がちがうのだと思います。

アメフトは、文字通り、
アメリカが生んだスポーツ。

アメリカという国は、
「裁判社会」と言われますよね。
裁判というのは、
攻撃と防御が分かれていて合理的です。

いわば「合理的」を好むのが
アメリカと言えるかもしれません。

アメフトは、
ボールを持っていない人に
タックルすることがあるから防具をつける
何メートル進んだのか、ちゃんと数える。
どちらが攻撃でどちらが守備なのかを
ハッキリさせている(野球もですね)。

いっぽうで、ラグビーは、
「自由すぎる」と言いましたが
「混沌」のスポーツ。

おなじイギリス発祥のフットボール、
サッカーのように攻守が
どんどん切り替わっていきます。
そして、プレーがあまりとまらない。
(レフリーもとめないようにしている)

だから、1秒たりとも目が離せません。

スピード感のあるラン。
するどいタックル。
美しく速いパス。

「ラグビーのスタジアムは静かだ」
なんてよく言われることがありますが、
みんな、息をのんで、夢中なのです(笑)。

もちろんトライのシーンなどでは、
大歓声で盛り上がりますのでご安心を。
(あの南アフリカ戦もそうでしたよね)

ちなみに、
ラグビーは日本的なスポーツだと
勝手に思っています。

よく知られていることですが、
欧米ののこぎりは押して切って、
日本ののこぎりは引いて切りますよね。

アメリカのスポーツも、
「前に押していく」ものが多い気がします。
野球もホームから前方に打ちますし、
アメフトも前にボールを投げていい。

ラグビーは、引く。
ボールを最前線にして、
うしろに戻しながら、進む。

水泳でいえば、日本人は
平泳ぎが得意であるように思うのですが、
あれも、自由形やバタフライのように、
ぐんぐん前に進むのではなく、
いちどうしろに「引きます」よね。

ラグビーには、
日本庭園の枯山水のように
「引き算」の美学があるんですよね。

ほかにも、
ONE FOR ALL,ALL FOR ONE
ということばも、
「自己犠牲の精神」を好む
日本らしいスポーツだと思います。
(本場イギリスではあまり言わないそうです)

こんなふうに、
日本発祥ではないラグビーですが、
どこか日本人の肌に合っている、
そんなふうに(勝手に)思っています。

第2回 ラグビーのみどころは?