もくじ
第1回「継げ」と言われたことはない 2016-06-28-Tue
第2回農業は好きですか? 2016-06-28-Tue
第3回とはいえ、農業のいいところ 2016-06-28-Tue
第4回前例を覆していくのがかっこいい 2016-06-28-Tue

1981年生。
東京生まれ、宮城育ち、東京住まい。
日本農業経営大学校専任講師。
イチローファン歴20年超。
活字と漫画を読むのが好き。
「ほぼ日」で好きなコンテンツ:おれボテ志、恋歌口ずさみ委員会、連ドラチェック、見たぞシリーズ。

俺たち農家の末っ子長男

担当・オノフミ

東京の品川駅から15分のところに、
農業経営者を目指す若者が通う学校があります。

農家の跡継ぎもいれば、
仕事を辞めて農業に賭けてきた人もいる。
ハタチもいれば30代もいる。
都会のど真ん中には珍しい学校です。

年齢も経歴もさまざまな学生がいる
この日本農業経営大学校ですが、
今回は高校卒業後すぐに農家を継ぐと決断して
熊本と山形からやってきたマサとシンにインタビューします。
どうしてその若さでその決断をしたの?
聞き手は、2人のゼミの優柔不断な担当教員であり、
「ほぼ日の塾」塾生のオノです。

プロフィール
マサさんのプロフィール
シンさんのプロフィール
オノさんのプロフィール

第1回 「継げ」と言われたことはない

オノ
2人は、卒業後は農業をすると決めて
日本農業経営大学校に入学してきたわけだけど、
親から農業を継げって言われてきたの?
2人
一回も言われたことない。
オノ
多分、「継げ」って言われてる人もいると思うよ。
シン
どっちかっていうとそっちのほうが多いですよね。
「わたし継げって言われたからしかたなく継ぐんです」とか
「家が農家で俺が継ぐしかないんですよ」って感じの人。
マサ
でも俺もシンもさ、
継げって言われてやるわけでもないし、
跡継ぎいなくておれが長男だからやるしかないって
いうわけでもなくない?
シン
俺は最初はそうだったよ。
長男だから。
マサ
そうやったん?
俺別にそんなことねーなー(笑)。
オノ
「継げ」って言われてるわけではないけど、
俺が長男だから継ごうって思える、
そこのところが知りたいんだよね。
継ぐべきものを持たない身としては。
シン
お父さんからは言われないけど、
まわりからは言われてたもん。
お母さんからは言われてたし、
あとはおじさんとか、おばさんとか。
そっち方面からは正月とかに帰ると
「いやー、これからは農業だろうな!
Aファームいいぞ、Aファーム!」
みたいなのはめっちゃ言われてた。
オノ
それはわりと本気のメッセージなんだよね?
シン
でもあの人たちは、本当にAファームがいいって
思ってるから言ってるとは思う。
どうせ、家は俺が継がないといけないなって
前から思ってたから。
オノ
そのときの「家」っていうのは
「Aファーム」じゃなくて「シンくんの実家」?
シン
実家ですね。
オノ
仕事はなんであれ継ぐのは俺、姉ちゃんではないなと。
つまり、「誰かが継がなきゃいけない家」
っていうのがあるわけでしょ。
2人はお姉さんが2人いる
3人きょうだいの末っ子長男だけど、
お姉さんたちって進路選択とかのときにどう言われてるの?
もしかして私が継がなきゃいけないかも
って思ってるのかな。
シン
なんでも好きにしろって言われてるんじゃないですか。
オノ
それはみんな一緒に同じことを言われてるんだ。
でもシンくんは継がなきゃって思うんでしょ?
やっぱりまわりから言われてるっていうのが大きいのかな。
シン
でも前からAファームにはよく遊びに行ってたしなあ。
田植え終わっておつかれーっていって焼肉を食べる、
さなぶりっていうのがあるんですよ。
そういうのも絶対毎年俺行かされて、
ちっちゃい子ってそういうのになかなか行かないから、
おー、シンー!みたいなことも言われて楽しかったから。

近かったから。Aファームが近かったから。
近いんすよ。
農業じゃなくて、Aファームが近かったんすよね。

オノ
近いっていうのはキーワードかもしれないね。
シン
だって徒歩1分や2分であるもん。
Aファームの事務所が。
オノ
シンくんはやっぱり俺が継がなきゃいけないな
って思ってたって言ったでしょ。
でもマサくんは俺はそうでもないって言ったじゃない。
なんで「農業やろう」って思った?
マサ
なんか、実家の農業を守ろうじゃなくて、
「家は守ろう」って思うんですよね。

まあ別に農業以外でもなんでもいいじゃん
って話になるんですけど、
まあ将来の夢があり、「お金持ちになりたい」と。
お金持ちになるんだったらいろんな職業がありますけど、
現状一番障害なく上に立てる職業は
父が経営している農業だったから。

シン
でも世襲制じゃないって言われたんでしょ。
マサ
世襲制じゃないからこそですよ。
オノ
からこそってどういうこと?
マサ
自分の能力があればあるほど上に行けるんすよ。
シン
それは他の職業でもいえるんじゃない?
もっと儲かることなんていくらでもあるよ。
マサ
一番最短でいけるところはどこかな
って考えたら農業なんだよね。
オノ
農業以外の選択肢ってどんな職業があった?
マサ
警察官と先生かな。
シン
先生って、絶対体育の先生だろ。
オノ
あー、剣道やってたし、体育教師ね。
これは「最短」ではないの?
マサ
公務員は給料が決まってるから。
オノ
つまり、お金持ちになりたいっていう目標のためには、
ちょっと天井が見えてると。
マサ
のびしろがもうそこで決まっちゃうじゃないですか。
それだったらリスクを冒していこうと。
農業やろうって言いだしたときは、
そこまでは考えてなかったと思う。
オノ
言い出したときのそもそものきっかけは?
マサ
家を守ろうってことですよ。
でもまあ農業じゃなくてもいいかなって思ってて、
でもお金持ちになりたいなーって考えて、
親父が社長してるからやっぱり農業かなと思って。
世襲制じゃないけど、
能力さえあればいいんだろ、と思って、
能力を高めるためにこの学校に勉強しに来たわけですよ。

でも、農業力をつけようと思って
この学校に来たわけではないです。

※マサとシンが通う日本農業経営大学校について
東京都港区にある、
農業経営者を目指す若者のための私塾。
1学年定員20名の2年制、
学生は全員、川崎市にある学生寮で生活する。
2013年に開校、2016年春には第4期生が入学した。
学生の出身地は全国に散らばる。

カリキュラムは経営力、農業力、社会力、人間力の
4領域についての座学と、
夏に3、4ヶ月おこなう農業実習・企業実習からなり、
卒業時には就農後の経営計画を策定する。

これまでに卒業した1期生、2期生は
みな全国各地での就農を果たしている。

webサイトはこちら⇒日本農業経営大学校

第2回 農業は好きですか?