- オノ
- 2人は、卒業後は農業をすると決めて
日本農業経営大学校に入学してきたわけだけど、
親から農業を継げって言われてきたの? - 2人
- 一回も言われたことない。
- オノ
- 多分、「継げ」って言われてる人もいると思うよ。
- シン
- どっちかっていうとそっちのほうが多いですよね。
「わたし継げって言われたからしかたなく継ぐんです」とか
「家が農家で俺が継ぐしかないんですよ」って感じの人。 - マサ
- でも俺もシンもさ、
継げって言われてやるわけでもないし、
跡継ぎいなくておれが長男だからやるしかないって
いうわけでもなくない? - シン
- 俺は最初はそうだったよ。
長男だから。 - マサ
- そうやったん?
俺別にそんなことねーなー(笑)。 - オノ
- 「継げ」って言われてるわけではないけど、
俺が長男だから継ごうって思える、
そこのところが知りたいんだよね。
継ぐべきものを持たない身としては。 - シン
- お父さんからは言われないけど、
まわりからは言われてたもん。
お母さんからは言われてたし、
あとはおじさんとか、おばさんとか。
そっち方面からは正月とかに帰ると
「いやー、これからは農業だろうな!
Aファームいいぞ、Aファーム!」
みたいなのはめっちゃ言われてた。 - オノ
- それはわりと本気のメッセージなんだよね?
- シン
- でもあの人たちは、本当にAファームがいいって
思ってるから言ってるとは思う。
どうせ、家は俺が継がないといけないなって
前から思ってたから。 - オノ
- そのときの「家」っていうのは
「Aファーム」じゃなくて「シンくんの実家」? - シン
- 実家ですね。
- オノ
- 仕事はなんであれ継ぐのは俺、姉ちゃんではないなと。
つまり、「誰かが継がなきゃいけない家」
っていうのがあるわけでしょ。
2人はお姉さんが2人いる
3人きょうだいの末っ子長男だけど、
お姉さんたちって進路選択とかのときにどう言われてるの?
もしかして私が継がなきゃいけないかも
って思ってるのかな。 - シン
- なんでも好きにしろって言われてるんじゃないですか。
- オノ
- それはみんな一緒に同じことを言われてるんだ。
でもシンくんは継がなきゃって思うんでしょ?
やっぱりまわりから言われてるっていうのが大きいのかな。 - シン
- でも前からAファームにはよく遊びに行ってたしなあ。
田植え終わっておつかれーっていって焼肉を食べる、
さなぶりっていうのがあるんですよ。
そういうのも絶対毎年俺行かされて、
ちっちゃい子ってそういうのになかなか行かないから、
おー、シンー!みたいなことも言われて楽しかったから。近かったから。Aファームが近かったから。
近いんすよ。
農業じゃなくて、Aファームが近かったんすよね。 - オノ
- 近いっていうのはキーワードかもしれないね。
- シン
- だって徒歩1分や2分であるもん。
Aファームの事務所が。 - オノ
- シンくんはやっぱり俺が継がなきゃいけないな
って思ってたって言ったでしょ。
でもマサくんは俺はそうでもないって言ったじゃない。
なんで「農業やろう」って思った? - マサ
- なんか、実家の農業を守ろうじゃなくて、
「家は守ろう」って思うんですよね。まあ別に農業以外でもなんでもいいじゃん
って話になるんですけど、
まあ将来の夢があり、「お金持ちになりたい」と。
お金持ちになるんだったらいろんな職業がありますけど、
現状一番障害なく上に立てる職業は
父が経営している農業だったから。 - シン
- でも世襲制じゃないって言われたんでしょ。
- マサ
- 世襲制じゃないからこそですよ。
- オノ
- からこそってどういうこと?
- マサ
- 自分の能力があればあるほど上に行けるんすよ。
- シン
- それは他の職業でもいえるんじゃない?
もっと儲かることなんていくらでもあるよ。 - マサ
- 一番最短でいけるところはどこかな
って考えたら農業なんだよね。 - オノ
- 農業以外の選択肢ってどんな職業があった?
- マサ
- 警察官と先生かな。
- シン
- 先生って、絶対体育の先生だろ。
- オノ
- あー、剣道やってたし、体育教師ね。
これは「最短」ではないの? - マサ
- 公務員は給料が決まってるから。
- オノ
- つまり、お金持ちになりたいっていう目標のためには、
ちょっと天井が見えてると。 - マサ
- のびしろがもうそこで決まっちゃうじゃないですか。
それだったらリスクを冒していこうと。
農業やろうって言いだしたときは、
そこまでは考えてなかったと思う。 - オノ
- 言い出したときのそもそものきっかけは?
- マサ
- 家を守ろうってことですよ。
でもまあ農業じゃなくてもいいかなって思ってて、
でもお金持ちになりたいなーって考えて、
親父が社長してるからやっぱり農業かなと思って。
世襲制じゃないけど、
能力さえあればいいんだろ、と思って、
能力を高めるためにこの学校に勉強しに来たわけですよ。でも、農業力をつけようと思って
この学校に来たわけではないです。
※マサとシンが通う日本農業経営大学校について
東京都港区にある、
農業経営者を目指す若者のための私塾。
1学年定員20名の2年制、
学生は全員、川崎市にある学生寮で生活する。
2013年に開校、2016年春には第4期生が入学した。
学生の出身地は全国に散らばる。
カリキュラムは経営力、農業力、社会力、人間力の
4領域についての座学と、
夏に3、4ヶ月おこなう農業実習・企業実習からなり、
卒業時には就農後の経営計画を策定する。
これまでに卒業した1期生、2期生は
みな全国各地での就農を果たしている。
webサイトはこちら⇒日本農業経営大学校