- 糸井
- この対談を、だれがどう料理するかの材料だとしても、
入りは「お天気がいいですね」じゃなくて、
「売れてますね」ですね(笑) - 古賀
- ありがとうございます(笑)

※古賀さんの共著書である『嫌われる勇気』(心理学者、アルフレッド・アドラーの思想を物語形式で紹介した一冊)は、現在、発行部数100万部を超えるベストセラーになっています。
- 糸井
- 裏方商売のつもりで生きてきた人にとっては、
おそらく、不思議な実感ですよね。 - 古賀
- はい。おっしゃる通りです。
とはいえ、100万部もいけば、
さすがに僕も天狗になるだろうと思ってたんですが。 - 糸井
- その数字ですよね(笑)
- 古賀
- はい(笑)

- 古賀
- もうちょっと偉そうに世の中に発信したり、
もの申すみたいな活動を、
躊躇なくできるようになるのかな?
と思ってたんですが。 - まったく、できないですね。
- 糸井
- はい。
- 古賀
- 「俺の話を聞け」という欲求が、
僕にはほんとにないんです。
「この人の話を聞いてください」なんですよ、基本的に。
今も、次にこの人というか、
好きになる人を捜し回っている状態です。
僕がマイクを渡して、
「大きな声で言ってください!」というような。 - 糸井
- それは、ストレートに伝わってきます。
- 古賀
- そうですか(笑)

- 糸井
- 何でしょうね。世の中には、売れると、
声を高くしたり、切り替えたりする人が
多すぎるんでしょうかね。
ラーメン屋さんでも、繁盛すると、
国の税制とかについて語りだすじゃないですか。 - 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- 僕自身もそれはずっと心配してたことで。
自分の場合は、なったんですよ。 - 古賀
- どのくらいのタイミングでですか?
- 糸井
- 30歳そこそこで。

- 古賀
- へええ!
- 糸井
- ならなかったつもりでいたのに、なってるんですよ。
過剰に攻撃されたりすると、
盾のつもりで肩を張るんですね。 - 古賀
- わかります。
- 糸井
- それで、お座敷があって座布団があったら、
その上に座る、みたいなことをするようになるんですね。
例えば、ちょっと気持ちが良くてやっちゃうのは、
女子大での講演とか。
でも、話すことなんかあるはずないじゃないですか。 - 古賀
- はい、思います。
- 糸井
- なのに「やってくださいよ〜」なんて言われると、
鼻の下を長くして「そう? 行こうか?」なんつって。
結局のところ、楽しいのは控え室までで。 - 古賀
- (笑)
- 糸井
- いざとなったら、
僕の話を聞く気のある人がいるとも思えないし、
これはやってはいけないことをやったかなと。
あとは、テレビ。
ハッキリとやってよかったなとは思うんです。
でも、そのお陰で、余計な拍手やら、非難やらを受けて。 - 古賀
- 拍手も余計ですか?

- 糸井
- 余計ですよね。
過分に褒められたりすると、
そんなことないよ、って言えなくなるんです。
褒められたくてしょうがないというのは、
若い時は当然、ありますけど。 - 古賀
- はい。
- 糸井
- だんだんと、何をやってたかとか、
何を考えてたとか、
自分でわかるようになりますからね。 -
「天才だね」とか、「言葉の魔術師だね」とか、
言われても、当時は特に否定しなかったです(笑)。
わからないけど、無意識で。
でも、今は、ああ原寸大がいいなって思います。 - (つづきます)