- 糸井
- 「ほぼ日80人の塾・実践編」の教材になるということも
知っててしゃべってるわけだからね。
でも、誰がどう料理するかの材料を作るにしても
入りは「お天気がいいですね」じゃなくて、
「売れてますね」ですね(笑) - 一同
- (笑)
- 古賀
- ありがとうございます(笑)
- 糸井
- これは、やっぱり、
一種裏方商売のつもりで生きてる人にとっては
不思議な実感で、おそらく。
それ、あんまり経験してしゃべってる人も
いないと思うんですよね。 - 古賀
- そうですね、はい。
昔から100万部いけば
さすがに俺も天狗になるだろうと思ってたんですよ。 - 糸井
- その数字ですよね(笑)
- 古賀
- そのタイミングがきたら、
もうちょっと偉そうに世の中にいろいろ発信したりとか、
ものを申すみたいな活動を躊躇なくできるようになるのかな
と思ってたんですけど、全くできないですね。
実感がないのか。

- 糸井
- 躊躇していたんですか(笑)
- 古賀
- 言いたくなるんだろうなと思ってたんです。
「俺の話を聞け」っていうのが、僕はほんとにないんですね。
「この人の話を聞いてください」なんですよ、基本的に。 - 糸井
- うん、そうですね。
「その人が考えてることを、僕はとても好きなんです」とか
それは自分のメッセージで入り込みますもんね。 - 古賀
- はい。その中で何かしらの技術だったりとか
その人の声を大きくして伝える時に
こうした方がいいというメソッドは積み重ねてるので
そこについて大声で言いたくなるだろうな
と思っていたんですけど、それが未だに全くなくて。
僕がマイクを渡して「大きな声で言ってください」
みたいな人を捜し回ってる状態です。

- 糸井
- それは、そのままストレートに伝わってきます。
何でしょうね。
今までの人が声を高くしたり
切り替えたりするってことが多いすぎたんでしょうかね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- ラーメン屋さんでも繁盛すると
国の税制についてとか語りだすじゃないですか。 - 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- 僕もそれはずっと心配してた。
自分の場合は、なったんですよ、きっと。
なったかならないかのことについて考えてって
なんなかったつもりでいたのに、なってるんですよ。 - 古賀
- どれぐらいのタイミングですか。
- 糸井
- 30歳そこそこで。
- 古賀
- へええ。
- 糸井
- なってないと思ってるのに、過剰に攻撃されたり
無視されたりするというのが聞こえてくるので
それに対して矛と盾で言うと、盾のつもりで肩を張るんですね。

- 古賀
- わかります。
- 糸井
- そんなところに俺はいないよっていうか
そこまでチンケな人間じゃないみたいなことは言いたくなって
お座敷があって座布団があると座るって
みたいなことをするんですよね。
特に何だろうな、ちょっと気持ちが良くてやっちゃうのは
アシスタントやってる子なんかも喜ぶし
女子大で講演してもらえませんかみたいなのがある時。
言うことなんかあるはずないじゃないですか。 - 古賀
- はい、思います。
- 糸井
- なのに「やってくださいよ」なんて言われると悪い気しなくて
鼻の下長くして「そう? 行こうか?」なんつって。
結局のところ、楽しいのは控え室まで。

- 古賀
- (笑)
- 糸井
- いざとなったら、時と場合によっては
そんなに僕の話を聞く気がある人がいるとも思えないし
これはやってはいけないことをやったかなというような感じで。 - 糸井
- あとはテレビですよね。
テレビは仕事で、帯でやってたから
その道具建てがあると人に会えたりするということがあるので
それはもうほんとにハッキリと、良かったなと思うんですね。
でもそのお陰で、余計な拍手やら余計なそしりやらを受けて… - 古賀
- 拍手も余計ですか。
- 糸井
- 余計ですよ。だって、そんなじゃないですよ。
褒められたくてしょうがないのは、若い時は当然ありますけど
そんなじゃないですよね。過分に褒められたりするというのが
そんなことないって言えなくなるんです。
黙ってることによって認めるみたいな。
無意識では営業上のこともあったのかもしれないけど
わかんないです。
昔に戻ってみても、意識できてなかったことだと思いますね。
何をやってきたかとか、何を考えたかって
だんだんと自分でわかるようになりますから。
ああ原寸大がいいなって思うのであって。