対談は、『田中泰延が会社を辞めたほんとうの理由、
迷走王ボーダーとブルーハーツ』に出てきた、
THE BLUE HEARTSの『リンダ リンダ』をかけながら、
田中さんを迎え入れるところからはじまります。
「♪どぶねずみみたいに美しくなりたい」
- 糸井
- ‥‥あれ? 来ないね(笑)。
「♪写真には写らない 美しさがあるから」
(♪リンダリンダ!)
- 田中
- (踊りながら部屋に入ってくる)
(♪リンダリンダリンダ!)
- 一同
- (爆笑)
- 糸井
-
あぁ、よかった(笑)。
いやいや、ようこそいらっしゃいました。
私達、ファンなんです。
- 田中
-
いえそんな、とんでもない。
よろしくお願いします。
- 田中
-
糸井さんとは1週間ぶりで、
大阪でお目にかかりました。
- 糸井
-
いや、ありがとうございます。
放っておいたら、この人、
1人で喋ってくれるから(笑)。
- 田中
- いや、そんな、漫談師じゃないんですから。
- 糸井
- なんか聞かなくてもいいんじゃないですかね。
- 田中
-
いや、もう今日は本当に、
何喋っていいかわからないので、
聞かれたことをこう、とつとつとね、
言葉少なに答えようかなと思ってます。
- 糸井
-
今日も、いつものようにですけど、
いくつかの紙袋に手土産が入ってて、
「手土産研究家の田中さん」っていうふうに
僕は認識しています。
- 田中
- いつそんなことになったんでしょうか(笑)。
- 糸井
-
いやいや(笑)、どうしてあんなに手土産を?
営業やってらっしゃったんですか?
- 田中
-
いやいや、まったくやったことないですけど、
やっぱり貰うとうれしいっていう経験が
すごく大きくて。
- 糸井
- 大きくて。
- 田中
-
まぁ自分が持っていくものは
だいたいつまんないんですけど、逆に、
このほぼ日さんに伺った時は
メッチャいいもの貰えるじゃないですか。
- 糸井
- そんなのあったかなぁ(笑)。
- 田中
-
いや、本当に。
ジャム貰ったりね、
あと、カレーの恩返し貰ったりね、
なんかあのぅ、
なんかやっぱり紙袋をくれはるんですよ。
- 糸井
- あぁ、なるほど。
- 田中
-
で、やっぱり貰うとうれしいし、
あと、家族喜ぶんでね。
- 糸井
-
あぁ、あぁ。
家族って言葉が田中さんの口から出てきたのは、
ちょっと珍しいですね。
- 田中
- 珍しいですね(笑)。
- 糸井
- やっぱり、やっぱり無職になってからですね(笑)。
- 田中
- そうですね。そうなんです。
- 糸井
-
田中さんが、
「僕が持ってくるものは
だいたいつまんないものです」って
言った後に、僕も「うん」って言っちゃうと、
後で文字になるときに「どうしようか」って
なるかもしれないんですけど(笑)。
- 一同
- (笑)
- 田中
-
(笑)。
でも、「つまんないものです」って言うの、
すごいいいコミュニケーションだと思うんですよ。
それは受け取った側が、
「いやいや、そんなことないですよ」
って言うんじゃなくて。
昔、田村正和さんに、
喜んでもらえるだろうと思いつつね、
田村さんがテレビドラマの中で
乗ってた車のミニカーを、
「つまんないものですけど」って渡したら、
田村さんがそれを見て、
「本当につまらないね」(笑)って、
あの口調で(笑)。
- 糸井
- あぁ、あぁ。
- 田中
-
でも、言いながらもね、
ちょっとこう鞄にしまっていたんですよ、
楽屋に置いていかないで。
だから、それ、すごいいいなぁと思って。
- 糸井
-
「つまんない」の、そのハードルを
ものすごく下げた状態で、
だいたい田中さんは選んでこられますよね。
- 田中
- そうですね(笑)。
- 糸井
-
ああ、手土産で言うと、今だからもう言える秘密が
僕らの間に1つありますね。
お花見問題。
- 田中
-
はいはい。
大問題ですね。
- 糸井
- あれ、言っていいですかね。
- 田中
- ええ。
- 糸井
-
電通関西支社で田中さんがおられた部署は、
なんていうんだろう、良く言えば豪傑な人の集まった、
梁山泊みたいな所でしたよね。
- 田中
-
もう、はぐれものの集りで。
堀井さん(:堀井博次さん)っていう親玉が
40年ほど前に現れて、
東京の、秋山晶さんとか、土屋耕一さんとかが
作っているカッコいい広告に対して、
京都や大阪のこの関西のノリで、
とにかくカウンターパンチを
食らわせようということで。
で、どんどん人が集まっていって、
本当、梁山泊みたいな集団になってしまって。
- 糸井
-
そこで、若手として存在している田中さんの案内で、
そのチームのお花見に行くっていう日が
あったんですよ。
「あ、俺、行く行く」って言って。
- 田中
- はいはい。
- 糸井
-
で、ツイッターとツイッターのメッセージで、
どこでどう待ち合わせするかとか交換して、
で、「やぁやぁやぁ、どうもどうも」って言って
会ったわけですね。
そしたら、
その時も紙袋下げてるわけです(笑)、複数の。
- 田中
- (笑)
- 糸井
-
で、あの時は後で渡したのかな、僕に。
「つまらないものですが、
これは糸井さんにお渡しするものなんですけれども、
荷物になりますから、
そのまま僕が帰りまで持っています」って。
もう1つ、重いものを持っているんです。
で、それは、一升瓶なんですね。
「あの梁山泊の方々は、
とにかく酒さえあれば機嫌がいいので、
申し訳ないですけど、
勝手に用意させていただいたんで、
本当に申し訳ないんですけど、
これは糸井さんからの差し入れだっていうことで、
お渡しする時だけこれを持っていただけませんか」
っていう、
何その歌舞伎のプロンプターみたいな(笑)。
で、この人は何十年営業畑にいたんだろう?
と思ったんですけど、
営業畑にはいないんですよね。
- 田中
- まったく行ったことがないんですよ。
- 糸井
- なんですよね。で、出掛けて行って。
- 田中
-
そのお酒っていうのは、
一応大阪のデパートで買ったんですけど、
開けるとのしに大きい筆文字で、
「糸井」って書いてあるんですよね。
- 糸井
-
もうすでに(笑)。
だから、もう、なんていうの、
いいんだけど、騙されてるような気がする(笑)。
- 田中
- この小賢しさっていうね(笑)。
- 糸井
-
で、なんていうの、
その念の入り方があんまりなんで、
もう笑うしかなくて(笑)。
ただその梁山泊の連中は、
人を疑うことにかけてもなかなか手練れだし、
ここは田中さんに任せておこうと思って。
僕は芝居ができない人間なんで(笑)、
言われた通りに「これ」って言って渡したら、
案の定、湧くんですよ。
- 田中
-
みんなが、「ワーッ!」って。
酔っ払いだから、
その包みの紙をグシャグシャって取って開けると、
のしに大きい筆文字で、「糸井」って書いてあって、
お酒が出てくるから、「ウワァーッ!」って(笑)。
- 糸井
- すごいんだよ。
- 田中
- その喜び方の浅ましさ(笑)。
- 糸井
-
ガソリンを、こうなんていうの、
焚火に投入したみたいに。
で、これだったら、
持ってきたほうがいいんだなぁっていうのを
思いましたね。
あれ、東京の集いでやったら、
「あぁ」って言ってお終いですよね、きっとね。
- 田中
- あぁ、なるほど。
- 糸井
-
「あぁ、どうもどうも」みたいな。
で、今まで飲んでた酒を普通に飲み交わして、
どこか置いておかれますよね。
- 田中
-
あのときはもう瞬時に開けて、
ひょっとしたら、
糸井コールが起きるんじゃないかくらいの勢いで。
- 糸井
- そうですね。
- 田中
-
「酒あるぞ!」って全員一斉に注いで、
一気に飲んでましたね。
- 糸井
-
そう。
で、そのメンバーは馬鹿じゃないんです。
- 一同
- (笑)
- 糸井
-
その、そこがいやらしいところで(笑)、
馬鹿じゃないっていうのと、
馬鹿が同一平面に2つ置いてあるんですよね。
- 田中
- なんでしょうね、あの人たちは。
- 糸井
- 「なんでしょう」なんですよ。
- 田中
-
堀井さんもひどかったんですよ、あの日。
「あれぇ?田中、お前、うちに20何年いて、
何もせぇへんやつかと思ったけど、
糸井を連れて来たな」って。
ひどいですよね(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 田中
- これはひどい(笑)。