もくじ
第1回ちゃんと大人になれているかな? 2017-12-05-Tue
第2回うなぎのはなし。 2017-12-05-Tue
第3回仕事のはなし。 2017-12-05-Tue
第4回将来のはなし。父親のはなし。 2017-12-05-Tue
第5回結婚のはなし。 2017-12-05-Tue
第6回不安のはなし。家族のはなし。 2017-12-05-Tue
第7回大将との話を終えて。 2017-12-05-Tue

1994年生まれ。学生です。
水泳、空手、チェロ、生徒会活動、
シンガーソングライター、広告会社のインターン。
今日まで色々なことに挑戦してきました。
今度は「書くこと」に挑戦します。
よろしくお願いします。

大将!大人ってなんでしょうか?

大将!大人ってなんでしょうか?

担当・川西

「自分は大人になれているんだろうか?」
そんな疑問を抱いた23歳の若者がいました。
現在はもちろん、将来のことで悩みがいっぱい。
そんな若者が自分がかっこいい大人だと思う
うなぎ屋「駒沢 宮川」の大将に会って、大人にまつわる話を聞くことに。
うなぎの話からはじまり仕事、結婚、家族の話。
色々なテーマから「悩み」や「不安」と向き合うヒントを探っていきます。
全7回。ごゆっくりお楽しみください。

第1回 ちゃんと大人になれているかな?

来年の4月、わたしは「社会人」になる。現在、23歳。
大学を卒業して、いよいよ仕事をするからだ。

この「社会人」という得体の知れない肩書きが
わたしは怖い。そして、この怖いという感情は
ある不安が生み出しているのだと、うすうす気づいてる。

「おれ、ちゃんと大人になれてるのかな?」という不安だ。

社会人になる頃の自分は大人になっていると思っていた。
もっと本音を言えば、かっこいい大人になってると。

たとえば14歳のときに想像していた23歳の自分は
こんなイメージだった。色々なことをよく知っていて
「あの頃は子どもだったな。」なんて昔の自分を
懐かしんだりできるほど成長していて、余裕もあって、
キラキラしていて、なんだか頼もしい存在。

ところが14歳の自分と現在の自分はあまり変わってない
ように思える。とても困ったことなのだが、事実だ。

23歳になった今の私には、これまで大きな成長をしてきた実感もなければ、答えの分からない問いで頭はいっぱいに
なり、余裕なんてない。焦りもあり、苦悩の連続だ。

このまま、会社に就職していいのだろうか?とか。
ちゃんと誰かに喜んでもらえる仕事をできるのか?とか。
いま付き合っている恋人と、そう遠くない未来に
結婚するとして、豊かな家庭を築けるのか?とか。
ましてや、子どもを養い、親になるなんて・・・。
今の自分が、このまま歳を重ねていくならば、
それらをできるとは到底、思えない。

こんなことを日々、考えている。ポツリと思った。
「23歳のおれ、かっこわるい…」と。

ところで、その思い描いていた「かっこいい大人」って
なんだろう。このひと、かっこいいと思った大人って
誰だっけ・・・と考えてみる。

まず最初に、こういう時にありがちなことだが
「父親」がぼんやりと浮かぶ。
しかし純粋にかっこいいというのと、少し違う気もする。
一旦、このカテゴリーからはずしておくことにした。

そのつぎに、浮かんだ人が2人いた。

1人はシンガーソングライターの浜田省吾さん。
中学生の時にラジオで「路地裏の少年」を
聴いて以来、ずっと憧れている大人だ。
浜省のように男らしくて、繊細な感性も持ち合わせて、
誰かを楽しませたり、心を揺さぶれる大人になりたい。
そんな風に思っていた。
紛れもなく、わたしにとって「かっこいい大人」である。

もう1人は17歳のときから4年間アルバイトをしていた
うなぎ屋の大将だ。

うなぎが好きだったとかではなく、
浜田省吾さんのようなミュージシャンになりたくて
バンド活動をしていた時に音響機材を
借りるお金が必要ではじめたバイトだった。

12席ほどある家族経営のうなぎ屋で
先代のお父様からその店を継いだ2代目の大将と
女将と大女将の3人でお店を切り盛りしている。

風呂敷で包んだうな重を自転車に乗って
出前をするのがわたしの役割だった。

そんなバイトをするなかで
頭から水をかぶったのかと思うくらい、汗を流して
火鉢のまえで、うなぎを焼いている大将の姿を見て
胸を打たれた。「かっこいいな。」って。

仕事をしている姿だけじゃなくて
閉店後に女将さんや3人のご子息とおしゃべりをしたり、
一緒に遊んでいる姿もかっこよく感じたものだ。
水で割った焼酎をゆっくりと飲みながら
ご子息が小学校の授業で描いた絵を見ていた
やさしい眼差しはやわらかく、幸福感に満ち溢れていた。
当時、高校生だった私は
そんな大将から余裕や頼もしさを感じた。

そんな大将や女将さん、ご子息に会いたくて
アルバイトを辞めてからも年に一度は店を訪ねる。

そうだ。大将はかっこいい大人だ。

思い出しているうちに、大将に仕事や家族のことを
聞いてみたくなった。
そんな話、一度も聞いたことなかったけれど
大将と話すことで、今の自分が抱える問いと
向き合うヒントをもらえる気がする。
それは大人になれるヒントとも言えるかもしれない。

しかも、うなぎは冬が一番おいしい。
話を聞きに行くならば今が最高のタイミングだと確信した。

さっそく大将に連絡をして
会って話を聞かせてほしいと伝えると快諾してくれた。
うなぎも焼いてくれると言ってくださった。うれしい。

翌日、ご子息へプレゼントするケーキを買ってから
約束の時間より少し早めに着けるように
わたしは店へ向かった。
しっかりとうなぎを味わえるように、お腹をすかせて。

(つづきます。)

第2回 うなぎのはなし。