もくじ
第1回【基礎編①】ツッコミという料理スキルをみがく文化 2017-12-05-Tue
第2回【基礎編②】「あほちゃう!?」と言わずにおれない率直さ 2017-12-05-Tue
第3回【活用編①】相手を観察するからこそ、うまくいく 2017-12-05-Tue
第4回【活用編②】失敗はすべてネタだと思い込むこと 2017-12-05-Tue

編集やライター以外の仕事が増えてきているいま、ほぼ日の塾に乗っかって、「書くこと」をあらためて考えています。ちなみに、山梨の県民性で私が言えるたしかなことは、お寿司が好きな人が多いことです。

関西人は一日にして成らず。

担当・ゴトウナナ

私の職場や友人グループには、
何人かの関西人がいます。

私自身は山梨県出身、大学からずっと東京に暮らし、
それほど県民性や出身によるアイデンティティが
つよくはありません。

たぶん、その環境が影響もしていると思うのですが
時々、関西人にあこがれに近いものを
感じることがあるんです。

同僚がふと発した自然な関西弁を耳にしたとき、
「ほんとのやつだ!」と
なぜかちょっとうれしくなる。

「ガハハハッ!」と、あっけらかーんと笑ったり
テンポよくツッコミを入れるようすに
その場の空気が明るくなるのを感じる。

人との距離が近くて、サービス精神旺盛なイメージ。
関西出身でないみなさん、そんな姿に、
ちょっといいな~と、思うことがあったりしませんか。

私はふだん、ちょっとふざけて関西弁をつかうことが
あるのですが、そうすると少しだけ、
自分もノリのいい人になった気がします。
もしかしたら、そんな関西性の“ちょい足し”効果は
ほかにもあるんじゃないか‥‥? 

そのヒントをこの機会に得ようと、
いまは東京で暮らす、関西度のことなる3人に
関西性について語ってもらいました。

関西性をより具体的にしていく【基礎編】、
きっと明日から役だつ【活用編】に分けて、
全4回でお届けします。

<座談会メンバー>
エエデ君:
T女史の友人、30代。生まれは広島、
小学校から高校卒業までを大阪と神戸の中間地・西宮市で
過ごし、バリバリの関西人気質に。
今回の企画に「ええで~」と二つ返事したことから命名。

オカン:
私の同僚、京都出身。18歳まで碁盤の目の中で育ったことを
誇りにしている小学生二人の母。
自分では関西性は濃くないと思っているが、
関西仕込みと思われるオヤジギャグは止まらない。

T女史:
私の同僚、長野出身。職場ではブルドーザーの異名をもつ、
30代の仕事できるウーマン。大学と大学院の6年間を
大阪で過ごす。そこで関西人の洗礼にあい、
生きのこる道を模索したことが、そのつよさの一因か。

第1回 【基礎編①】ツッコミという料理スキルをみがく文化

――
えー、関西にゆかりのあるみなさん、
本日は私のために雑談をしにお集まりいただき
ありがとうございます。
でもこういう雑談の中にこそ真実が現れるにちがいないと‥‥
エエデ君
ほんで、「ほぼ日」ってなんなん?
――
‥‥え??
オカンT女史
うそ、知らんの?
エエデ君
人生で初耳やわ、「ほぼ日」。
でもなんかおもろいこと言うてるから
人が集まるんやろなあ、なんやわからんけど。
みんな
(笑)

※ほぼ日を検索するエエデ君

――
関西の爆笑をとるようなおもしろさとは
ちがうかもしれないけど。
エエデ君
「趣(おもむき)がある」ほうのおもしろさってことやな。

せやけどさ、関西の「おもろい」も、
最後笑いに落とすだけじゃないねん、本質的には。
オカン
おおー、さっそく語る。
エエデ君
おれも最初広島おって、西宮行ったときは
わからんかったけど、そっから大学で広島戻ったときに、
そこはわりと西日本からまんべんなく人が来てるとこやって、
いろんなやつとしゃべってて「人の話にオチがないな」
っていうのが最初の印象。
みんな
(笑)
エエデ君
だいたいオチってなんやねん? て言われるんやけど、
‥‥それはうまいこと言われへんねん。
オカン
わからんのかい。
T女史
エエデ君が、みんなと話す中で一番好きなんは、
話がころげていって、最後おもしろいところというか、
すぽっといい感じのところにおさまる感じだよね。
エエデ君
笑いになることが一番わかりやすいけど、
まあ起承転結みたいな、ああなるほどね、と。
そのオチが(広島には)ないなと思った。

小学校から高校までのうちに、
おれはオチがわかる人間になったんや。
みんな
(笑)
エエデ君
意識せずとも、オチをつけてしゃべれるようになる。
それはすげー、大阪で特徴的やったわ。

そや、おれ、小学生のときにマンガ書いてて。
実家掃除してて久しぶりにその漫画みつけて読んだら、
見事にぜんぶオチがついとってん。すごいやろ。
T女史
へえー。
エエデ君
で、おもろいには2つ、要素があるねんで。
――
ほう‥‥?
エエデ君
話じたいがおもろいのと、話し方がおもろいのがある。
素材がおもろいのと、料理がうまいのと。
つまり料理がうまいほうが、オチがあるっていう話な。
T女史
これ料理したらおいしい素材なのに、
なんでおまえそれおもろくない料理の仕方すんの?
ってやつに、エエデ君は厳しいよね。
エエデ君
そやねん! それ腹立つ!
みんな
(笑)
エエデ君
ほらあいつ、高校の、名前わすれたけどなんやったっけ、
なんか料理してたらコップ割れてグッサリ手切ったから
病院行ってなんとか縫ってもらって事なきをえたんやけど、
それ縫ってもらったんが耳鼻咽喉科やった、
え、その針だいじょぶやろか? みたいな話をする
女の子がおったんやけど、そいつの話し方がバリへたくそで。

「なんか、救急車で運ばれたんが耳鼻咽喉科でえ~」って、
‥‥そらぁ最後にもっていけや!!
みんな
(笑)
エエデ君
うまいこと料理できてないのに腹立つねん。
T女史
わかる~。
――
京都的にはそのへんの感覚どう?
オカン
うーん、まあ腹立ちまではしないかも。
もったいないなあ、とは思うけど。

オチはあったほうがいいんだけど、
大阪ほど抑揚を求めないというか。
友達どうしでダラダラ話してても平気なんだよね。
たいしておもしろくなくても、ケラケラ笑うし。
エエデ君
そうなんやなあ。
T女史
なんか大阪行って思ったのは、オチがつけれない人って
飲み会とかで話す権利がない感じになる。
エエデ君
ハッハッハッ! わかる。みんな聞いてへんもんな。
――
ひー、それはきつい‥‥。
そういう人はどうしろと?
T女史
私は、「ツッコミ」っていう方法を。
オカン
方法(笑)。さすがやね。
自分の生きていく術を編み出した。
――
サバイバル。
T女史
そうしないとほんとにしゃべれないんだもん。
おもしろくないこと言ったときの温度感がこわくて(笑)。
だから、これはツッコミ系、もしくはだれかが言ったのを
拾ってボケるしかないと。

料理を始める人は別の人で、それに対してアレンジしていく
っていうやり方じゃないと私は生きていけない、と。
エエデ君
まあツッコミへたなやつも腹立つけどな。
――
あー、お笑いではツッコミがだいじって聞いたことが。
エエデ君
そう。おもろくなるのはツッコミやから。
笑いが起きんのは、ボケじゃなく
ツッコミのとこなんすよ、だいたい。

つまり「普通のこと」ではないような
なんかおかしいことをちょっと言うのがボケで、
ツッコミはそれがおかしいよ、って言う役。
それがおかしいんだって認知したときに、
みんな普通とちがうんだ、と思うから「おもろい」と思う。
――
なるほど~。
エエデ君
なんや若いお笑いコンビがおもろくないときあるやろ。

それは、ボケばっかりしとるから、
普通のことかおかしいことか
こっちにようわからんから、おもろくないの。
オカン
なんかそれは説得力あるな。
エエデ君
あとこっち(関東)の人で、「おもしろいっしょ?」
みたいな顔で話す人おんねんけど、
それツッコミがないとおもろくならへんからな!
――
いや、顔の問題はべつな気が(笑)。
「おもろい」の仕組みがわかったところで
次いってみましょう。

(つづく)

第2回 【基礎編②】「あほちゃう!?」と言わずにおれない率直さ