明るくて、負けずぎらい。  クルム伊達公子さんの、 ふつうは無理な道のり。

ワンチャンスで流れが変わる。

糸井 もう、あれですね、年齢のことは、
ほんとうに関係ないって
言いたくなっちゃいますね。
伊達 もう、今年42になるんですけど(笑)。
糸井 はぁ、40を過ぎて、さらに2つ。
信じられないなぁ(笑)。
伊達 このあいだも、フェドカップっていう
国別対抗戦の試合をやってたんですけど、
相手国の監督さんと同い年だったんですよ。
一同 (笑)
糸井 はぁーー。
伊達 監督さん、お腹とか、
こんなに大きいんですけど。
糸井 ふつうの40代は、そうなってて
おかしくないってことでしょう。
伊達 日本人はあそこまで行かないと思うんですけど。
でも、同い年だったんですよね。
糸井 前にイチローさんが言ってたんですけど、
選手どうしの体力の衰えとか、
トレーニングの話とかは
ほとんど気にしないそうなんですけど、
オフに地元に帰ってきたときに同級生たちが
「最近、腹が出てきて」とか言うのを聞くと、
ああ、そうかって思うんですって。
伊達 へぇー。
糸井 つまり、それが生理的な年齢を表してるから、
それを聞くと、自分の肉体的なことを
あらためて意識するって。
伊達 ふーん、なるほどー。
糸井 ま、いずれにせよ、伊達さんの場合は
ちょっと参考になりませんけど。
伊達 (笑)
糸井 「肉体年齢」みたいなことでいうと、
かなり若いんでしょうね。
あの、最近の体重計って、
ずいぶん若いです、みたいなウソを
気軽についてくれるじゃないですか。
伊達 はい、ついてくれますよ。
わたし「18歳」です。
糸井 「18歳」!
伊達 家の体重計の、なんでしたっけ、
体脂肪とかといっしょに計ってくれる、
あの、体年齢、みたいなの。
糸井 「18歳」ですか。
伊達 はい。だいたい「18歳」か「19歳」。
糸井 じゃあ、そうなんじゃないですか(笑)?
伊達 はははは。
糸井 ぼくも「37歳」とか言われて、
ごますられてますけど、
10代は聞いたことがないなぁ。
伊達 そうですか。「18歳」です(笑)。
糸井 すごいですねぇ。
なにとなにとなにに気をつけてます、
みたいなことって、山ほどあるんでしょうけど。
伊達 いや、そうでもないですよ。
そんなに気をつけてないです。
糸井 気をつけてないんですか。
ほんとですか。
伊達 いまのほうが気をつけてないというか、
テニスをやめてたとき、
わたし、マラソンやったんですけど、
そのときのほうがむしろ徹底してました。
糸井 食生活とか?
伊達 そうですね。
一時期ずいぶんやってましたけど、
テニスをはじめてからは、基本的なことだけです。
まぁ、自然なものを食べるようにするとか、
試合前は炭水化物を多めに摂るとか、
試合終わったらタンパク質を多めに摂るとか、
もうほんとに基本的なことぐらいで、
なにを食べないようにするとか、
そういうことはとくにしてないですね。
糸井 専属のお医者さんとか、栄養士さんとか
メディカルなんとかみたいな人とか、
そういう人もいないんですか。
伊達 いないですね。
やっぱり、個人でやってるので、
もうほんとに、自分の判断で。
ツアーのときは、ずっと旅をしてるので、
基本的には、ずっと外食ですよ。
糸井 「外食」(笑)。
伊達 さすがにコンビニで買って済ませる、
みたいなことはしないですけど。
特別なお店で特別なものを食べてるわけじゃないです。
糸井 そうですかー。
なんか、ものすごく自己管理ができてて、
「だからこそやれてるんです」って言ってもらって、
「そうでしょう、そうでしょう」
って言いたかったんだけど(笑)。
伊達 すいません(笑)。
糸井 なんなんですかね?
天才なんですかね、体が。
伊達 いやー、なんですかねぇ。
糸井 ちなみに、お好きな食べ物は?
伊達 なんでも好きですね!
好きな食べ物が多すぎて選べない。
糸井 精神的に元気なんですねー。
伊達 ふふふふ、
食べること、大好きなんですよ。
糸井 その、「なにが好きですか?」って訊かれて
「なんでも好きですね」って
パーンとうれしそうに言うのは、
そうとうお好きなんですね、食べることが。
伊達 はい、ほんっとに好きですね(笑)。
日本食ももちろん好きですし、
イタリアンもフレンチも。
糸井 じゃあ、外国に行ったときも、
食べ物に不自由することもなく。
伊達 まったく大丈夫ですね。
逆に、若いころは、
「和食、和食」っていう感じだったんですけど、
いまは何ヵ月か日本食なしでも耐えられます。
いや、耐えられるっていうか、もう‥‥。
糸井 好き嫌いがなくなってる。
伊達 はい(笑)。
糸井 若いころのほうが、好き嫌いがあったというか、
食生活にもこだわっていたわけですか。
伊達 そうですね。
10代、20代のころは、かたくなだったというか、
「こうでなきゃいけない」って思うことが多くて、
食べず嫌いな部分も多かったから、
すごく和食を食べることにこだわってたんですけど、
まぁ、テニスをやめて、
いろんなところに行く機会も増えて、
いろんなことが解放されたというか。
アフリカに行ったら、アフリカの食べ物を食べるし。
なんか、その国に行ったら、
その国のものが一番おいしいんだなと。
糸井 ああ、なるほど。
伊達 たとえば、衛生的に大丈夫かな?
と思うようなものでも、
食べてみたらすごく美味しかったり。
和食にこだわっていた20代のころだったら
絶対食べなかっただろうなと思うんですけど、
なんかそうやって食べてみると、
やっぱり、その国で、その国の人がつくったものが
やっぱり一番おいしいんだなって
いうのもわかってきましたし、
そういうふうにしてやってると、どこ行っても、
その国のものを食べたいと思うようになってきたし。
糸井 年をとるごとに、広がっていった。
伊達 はい。
糸井 それは、旦那さんの影響もありますか。
伊達 そうですね、彼は食べることに
あんまり興味がないので、
「食」についてはあんまり影響ないですけど、
ものの考え方、ものの見方、
っていうことについては、たぶん。
糸井 なんていうか、頭が柔らかそうですよね。
伊達 そうですね。
自分が柔らかく、広く、なったのは
彼のおかげもあると思う。
  (つづきます)

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2012-06-26-TUE