『CHE.R.RY』
 YUI

 
2007年(平成19年)

前の彼との
恋歌があり過ぎて、
どれで投稿しようか
迷っていたのですが。
  (ペンペン)

恋しちゃったんだ
たぶん 気づいてないでしょう?



大学一年生で知り合った彼とは
言葉を交わした瞬間に
「あ、この人とは合う」と確信がありました。

普段は言葉数の少ない私でしたが、
彼とだと、会話ができる。
飾らず、そのままの自分でいられる。

当時恋人がいた私ですが、彼の出現により、
恋人の前で自分がいかに無理をしていたかがわかり、
別れてしまいました。

それほど、彼の隣は居心地が良かった。

彼も同じように思っていたみたいで、
付き合うようになるまで
そう時間はかかりませんでした。

一緒に講義を受けて、一緒に帰って、
時には講義をサボって遊びに行ったりして。

そばにいたい、という気持ちが募り、
親を説得して、約1年後には
彼と一緒に住むようになりました。

ずっと一緒にいられることが嬉しくて、幸せで。

勉強も、家事も、バイトも、苦じゃなかった。
真夏の夜中に、近くのコンビニで
アイスを買って食べるのが、ささやかな贅沢だった。

不満も、不安も、なかった。ない、はずだった。

だけど今思うと、あったんだと思う。
ちっちゃなちっちゃなヒビみたいなのが、
心に少しずつ入ってた。

それが明らかな亀裂となったのは、
大学3年生になる頃でした。
勉強、バイト、家事、そこに加わった、シューカツ。

アピールがうまくなかった私は、
なかなか内定が取れなかった。
リーダーシップのある彼は、すんなりと内定が取れた。

家事は任されっぱなし。論文もある。バイトもある。
様々なストレスが重なってしまい、
私は実家に帰りました。

離れたことで落ち着きを取り戻した私は、
やっとのことで内定を頂くことができました。
そして大学の卒業とともに、同棲も正式に解消。

私達は、友達に戻りました。

彼のことが嫌いになったわけじゃなかった。
でも、恋心はもうなかった。
彼の何が悪かったのか、なんであんなに辛かったのか、
今考えても、きちんと答えることはできません。

友達に戻ってからも、
年に2、3回は会っていました。
やっぱり彼は私の良き理解者で、
人間としてとても尊敬ができた。
いい関係だと思っていました。

でも、彼の存在のせいで、
私は恋をできずにいました。
彼よりも私を理解して、
受け止めてくれる人はいない、と思ってた。

焦って探したりもしたけれど、
ほのかな片思いのまま終わったり‥‥。

恋ってなに?
好きな人に好きになってもらえるなんて奇跡、
本当に起こるの?

そんな気持ちのまま、
気付けば、彼と付き合った年数分、
時が流れていました。
4年間、結局独りだった。

しかし去年、学生時代のバイト仲間と
10年ぶりに再会した飲み会で、
来ていた1人と意気投合し、
あれよあれよという間に付き合うことになりました。

ブランクがあったし、もう傷つきたくなかったし、
アプローチされても、信じて傷付くのが怖くて、
私はたくさん予防線を張っていました。

でもそんなの知らないよとでも言うように、
その人はすんなり、私の心に入ってきてくれた。

そして「ありのままが好きだから」と、
今の私を全部受け入れてくれました。

私はこのコーナーが大好きで、
いつか送ろういつか送ろう、と思ったものの、
前の彼との恋歌がたくさんあり過ぎて、
どれで投稿しようか迷っていました。

けれど、いざ送ろうとした時に思い付いたのは、
今の彼から、初デートのお誘いメールをもらった時に、
頭の中に流れたこの曲でした。

恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう?

アプローチされた、と言いましたが、
既にその時、私も彼に恋をしていたのです。
彼はきっと、気付いてなかったはずです(笑)。

まだ付き合って半年ですが、
ぽかぽかと暖かい気持ちを毎日、感じています。

(ペンペン)

ああ、よかった。
よかったですね。
んもう、よかったよ!
いつだって、いまの恋がいちばんです。

それから、アタックされるということは、
こっちがすでに好きなことが多いですね。
好きじゃなきゃ、
ピンとこない行動で終わってしまい、
こっちが「こりゃアタックだ」と
気づくことができないと思う。

この投稿の「余談」として、
(ペンペン)さんはこんなことを
書き添えてくださいました。

「余談ですが、この前元彼と偶然街で出会い、
 恋人ができたことを報告しました。
 良かったな、と前と変わらない笑顔で
 言ってくれた。良かった」

ナイスです〜。

傷つくのが怖くて張ってる予防線ってね、
すっごい強固だと思い込んでたでしょ。
でも本人が思っているよりもずっと脆いんです。
脆いといっても、だれでも触ればぼろぼろと崩れる、
ということではなくって(それはちょっと困る)、
ある人が、ある方法で、ある方向から、
「ぽん」と押すと、扉が開く、みたいな感じ。
錠前と鍵みたいな感じかなあ。
次の恋の鍵って、ちゃんと傷ついて
ちゃんとその傷に向き合ったものに与えられるんです。

(ペンペン)さんよかったですね。
ぼくはこの曲を知らなかったんですが
すごくみずみずしい曲でした。

この曲、好きなんです。
『CHE.R.RY』。
YUIさんのアルバムではなく、
iTunes Storeで一曲だけ買ってPCに入れています。
‥‥若い人が聴く曲なのでちょっと恥ずかしいですけど、
いい曲だなーと思って。
ついでに余談ですが、
ずいぶん前、みんなでカラオケに行ったとき
にお願いして
『CHE.R.RY』を歌ってもらったことがあります。
たいへん愛らしく歌ってくれました。
(武井さんもいたよ。だから聴いたことあるんだよー)

という話はともかく、
ほんとに「んもう、よかった!」な投稿でした。
よかったよかった。
男友達だったら肩や背中をばんばんたたいてあげたい。

恋する相手が見つからない人に向かって、
「いつかきっとすてきな出会いがあるはず」って、
そんなの、軽はずみには言えませんよね。
でも、(ペンペン)さんの投稿を読んでたら、
こうは言えると思いました。

「意気投合のチャンスはふいにやってくるよ。
 だからね、つねに、油断をしない」

たしかに、たしかに。
「運命の出逢い」と「意気投合」は
頻度や重要度がまったく違うようだけど、
男女の接点においてはほぼ同義だなあ。

あと、ここに届く投稿において、
じつは「運命の出逢い」とほぼ重なる
気さくなキーワードとして
しばしば登場するのは、
「気をつかわない」「なんでもしゃべれる」
「ホッとする」「かっこつけずにすむ」
などなど‥‥。

武井さんの
「強固な扉のように思えても
 ある方向からの力でポンと開く」という
知恵の輪理論も、とてもよくわかる。

うん。投稿もすばらしいですけど、
うちの委員たちもいいこと言ってるなあ。
あ、すいません、自コンテンツ自賛。

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2013-11-13-WED

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