神戸国際大学の教授であり、
編集者、翻訳者でもある
北京出身の毛丹青(マオ・タンチン)先生が、
ほぼ日に遊びに来てくださいました。
糸井とは、今回が初対面です。
毛先生が北京で創刊した雑誌に
「ほぼ日手帳」を取り上げてくださったことで
ご縁ができました。
「外から見た日本について」
「ほぼ日手帳が中国で人気がある理由」
などについて話してくださったのですが、
先生の話はわかりやすく、
糸井との共通点もたくさんあって、
とてもおもしろい対談になったんです。
全4回、どうぞご覧ください。
INDEX
- 第1回:ほぼ日をはじめたきっかけ。
2016-10-30-SUN - 第2回:「恵まれた20年」だったかもしれない。
2016-10-31-MON - 第3回:キーワードは「LIFE」。
2016-11-01-TUE - 第4回:「手作り」とはなにか。
2016-11-02-WED
※この対談の様子は、毛先生が総編集長を務める雑誌
『在日本』3号(11月発売予定)にも掲載されます。
INDEX
- 第1回
ほぼ日をはじめたきっかけ。
2016-10-30-SUN - 第2回
「恵まれた20年」だったかもしれない。
2016-10-31-MON - 第3回
キーワードは「LIFE」。
2016-11-01-TUE - 第4回
「手作り」とはなにか。
2016-11-02-WED
※この対談の様子は、毛先生が総編集長を務める雑誌
『在日本』3号(11月発売予定)にも掲載されます。
毛丹青(マオ・タンチン)
1962年北京生まれ。
北京大学東方言語文学科卒業。
中国社会科学院哲学研究所助手を経て、
1987年三重大学に留学。
商社勤務などを経て、
日中バイリンガルによる執筆活動を開始する。
2009年より神戸国際大学教授に就任。
2011年より日本を紹介する雑誌『知日』を
北京で創刊、主筆を5年間務める。
2016年には日本文化を紹介する『在日本』を創刊。
代表作は『にっぽん虫の眼紀行』
(法蔵館/1998年・文春文庫/2001年)。
中国語の翻訳者としても活躍し、
仏教書『歎異鈔』や、
村上春樹『女のいない男たち』の翻訳も手掛ける。
第4回:「手作り」とはなにか。
第4回
「手作り」とはなにか。
- 毛丹青
- 私が作っている雑誌『在日本』には、
中国語版と日本語版があります。
なぜ日本語版を出し続けているかというと、
その理由は、日本の若者に
メッセージを送りたいと思っているからなんです。
われわれがどういうふうに
日本を見ているのかを
逆に見ていただきたいと思ってまして。
- 毛丹青
- 私が作っている雑誌『在日本』には、中国語版と日本語版があります。
なぜ日本語版を出し続けているかというと、その理由は、日本の若者にメッセージを送りたいと思っているからなんです。
われわれがどういうふうに日本を見ているのかを逆に見ていただきたいと思ってまして。
- 糸井
- ああ、なるほど。
- 毛丹青
- というのも、
私は大学で教職にも就いてますが、
日本の若者がちょっと
内向きになっていると思うんです。
海外旅行にも留学にも行きたがらない。
そういうのは、私はあまりよくないと思う。
相手を知ることは自分の想像力を
豊かにすることであるということを、
強いメッセージとして送りたいんです。
日本人と中国人がお互いにリアルタイムで
生活を共有し合うような時代が
すぐそこにきていると思うんです。
だから、「ほぼ日手帳」も
ほぼ同じ時間で
受け入れられていくと思いますよ。
ある日突然中国で、
日本よりたくさん
売れるようになるという時代が‥‥。
- 毛丹青
- というのも、私は大学で教職にも就いてますが、日本の若者がちょっと内向きになっていると思うんです。
海外旅行にも留学にも行きたがらない。
そういうのは、私はあまりよくないと思う。
相手を知ることは自分の想像力を豊かにすることであるということを、強いメッセージとして送りたいんです。
日本人と中国人がお互いにリアルタイムで生活を共有し合うような時代がすぐそこにきていると思うんです。
だから、「ほぼ日手帳」もほぼ同じ時間で受け入れられていくと思いますよ。
ある日突然中国で、日本よりたくさん売れるようになるという時代が‥‥。
- 糸井
- あるかもしれませんね。
「この手帳、もともと日本のらしいよ」ってね(笑)。
はぁー、おもしろいな。
先生みたいな中国人は多いんですか。
- 毛丹青
- 少ないんじゃないでしょうか。
私はちょっと異端児ですし、30年も日本にいますから。
簡単に紹介させていただきますと、
もともと留学生として来日しましたが、
半年も経たないうちに学校をやめて、
それから魚屋さんに働きに行ったんです。
遠洋漁業に出かけて行って、
大儲けをさせてもらいまして。
- 毛丹青
- 少ないんじゃないでしょうか。
私はちょっと異端児ですし、30年も日本にいますから。
簡単に紹介させていただきますと、もともと留学生として来日しましたが、半年も経たないうちに学校をやめて、それから魚屋さんに働きに行ったんです。
遠洋漁業に出かけて行って、大儲けをさせてもらいまして。
- 糸井
- ええ?(笑)
- 毛丹青
- 糸井さんが「ほぼ日」を
立ち上げたころですね。
魚を日本に売る仕事をしていたんですが
そのうち、中国が成長して
経済がよくなってきたので、
漁民が中国に売ったほうがいいと言い出して、
日本に魚を売る商売はできなくなりました。
それまでに儲かったお金をどう使ったかというと、
私は文学青年だったものですから、
1年間の放浪の旅に出かけたんです。
ほぼ1年間、車で寝泊まりをしながら
47都道府県全部まわりました。
それが16年ほど前です。
- 毛丹青
- 糸井さんが「ほぼ日」を立ち上げたころですね。
魚を日本に売る仕事をしていたんですがそのうち、中国が成長して経済がよくなってきたので、漁民が中国に売ったほうがいいと言い出して、日本に魚を売る商売はできなくなりました。
それまでに儲かったお金をどう使ったかというと、私は文学青年だったものですから、1年間の放浪の旅に出かけたんです。
ほぼ1年間、車で寝泊まりをしながら47都道府県全部まわりました。
それが16年ほど前です。
- 糸井
- 47全部?
- 毛丹青
- 全部です。
鉄道も、単線の大体7割は乗りました。
- 糸井
- すごい。
- 毛丹青
- そうでしょ、私、実は鉄道マニアです。
超マニア、ハイパーマニアなんです。
それに、自分の足で見に行かないと、
日本についての文章を書こうと思っても、
見たことがないことは書けないですから。
それで文章を書きはじめたら、
私の恩人でもある、文藝春秋社の前社長の
平尾さんという方が
私の存在に気づきはじめてくれたり、
それから亡くなった河合隼雄先生が
非常におもしろいと言ってくださったり。
それで書いていた文章を本にまとめて
中国で出したら、若者たちに受けたんです。
「これはいけるぞ」と。
そういう流れがあって今日に至ります。
- 毛丹青
- そうでしょ、私、実は鉄道マニアです。
超マニア、ハイパーマニアなんです。
それに、自分の足で見に行かないと、日本についての文章を書こうと思っても、見たことがないことは書けないですから。
それで文章を書きはじめたら、私の恩人でもある、文藝春秋社の前社長の平尾さんという方が私の存在に気づきはじめてくれたり、それから亡くなった河合隼雄先生が非常におもしろいと言ってくださったり。
それで書いていた文章を本にまとめて中国で出したら、若者たちに受けたんです。
「これはいけるぞ」と。
そういう流れがあって今日に至ります。
- 糸井
- 今のお話を聞いていて、
スタートがぼくとちょっと似てるなと思いました。
ぼくはまだ広告の仕事があったときに
「ほぼ日」をはじめてるわけです。
つまり、ここに全移行する前に、
まずは趣味的にはじめて、
「もし潰れたとしても大丈夫」
という安心感のなかでスタートしています。
追い詰められずにはじめたということが
「楽しいからやりたいんだ」
という気持ちを保てたと思っています。
そこは先生と同じですね。
『在日本』は今、どれくらいのペースで
出しているんですか。
- 糸井
- 今のお話を聞いていて、スタートがぼくとちょっと似てるなと思いました。
ぼくはまだ広告の仕事があったときに「ほぼ日」をはじめてるわけです。
つまり、ここに全移行する前に、まずは趣味的にはじめて、「もし潰れたとしても大丈夫」という安心感のなかでスタートしています。
追い詰められずにはじめたということが「楽しいからやりたいんだ」という気持ちを保てたと思っています。
そこは先生と同じですね。
『在日本』は今、どれくらいのペースで出しているんですか。
- 毛丹青
- 『在日本』を創刊して
まだ1年足らずですけど、
1号、2号が既に出ていて、
10月には3号が出ます。
大きな特徴としては、先ほども言いましたが、
日本語版も出すということです。
『知日』を5年間やってきたけれど、
日本語ダイジェスト版が
1冊のみで終わりましたから。
今は機が熟したと思っています。
われわれが感じたものから
日本人読者も必ず何かのヒントを
得てくれるという自信がついたので、
こういうスタンスで続けていこうと思っています。
- 毛丹青
- 『在日本』を創刊してまだ1年足らずですけど、1号、2号が既に出ていて、10月には3号が出ます。
大きな特徴としては、先ほども言いましたが、日本語版も出すということです。
『知日』を5年間やってきたけれど、日本語ダイジェスト版が1冊のみで終わりましたから。
今は機が熟したと思っています。
われわれが感じたものから日本人読者も必ず何かのヒントを得てくれるという自信がついたので、こういうスタンスで続けていこうと思っています。
- 糸井
- いいですね。
おもしろいです。
- 毛丹青
- 雑誌名に「在」という言葉を付けていますが、
われわれが日本にいるからこそ
できることがあると思っています。
そこにいて初めてわかることがある。
ちょっと哲学的なコンセプトなんです。
今日は、「手作り」をテーマに
いろいろうかがいましたが、
結局、手作りって、
どういうことだと思われますか。
- 毛丹青
- 雑誌名に「在」という言葉を付けていますが、われわれが日本にいるからこそできることがあると思っています。
そこにいて初めてわかることがある。
ちょっと哲学的なコンセプトなんです。
今日は、「手作り」をテーマにいろいろうかがいましたが、結局、手作りって、どういうことだと思われますか。
- 糸井
- ぼくは、「手作り」というのは
全体性だと思います。
脳と口、脳と指先だけで
コミュニケーションができると
みんなが誤解しているのが、
今の時代だと思うんですけど、
「手作り」というのは、実は、
手やら足やら、今日歩いてきたエリアやら、
全部が入ってできるものだと思います。
- 糸井
- ぼくは、「手作り」というのは全体性だと思います。
脳と口、脳と指先だけでコミュニケーションができるとみんなが誤解しているのが、今の時代だと思うんですけど、「手作り」というのは、実は、手やら足やら、今日歩いてきたエリアやら、全部が入ってできるものだと思います。
- 毛丹青
- まったく同感ですね。
私は身体運動だと思っています。
- 糸井
- 身体性、うんうん。
又聞きで聞いたんですけど、
中国では、書のエリート教育は
小さいときからはじまっていて、
そういうのを徹底的に学ばされる子は、
体操も習わさせられるそうですね。
- 糸井
- 身体性、うんうん。
又聞きで聞いたんですけど、中国では、書のエリート教育は小さいときからはじまっていて、そういうのを徹底的に学ばされる子は、体操も習わさせられるそうですね。
- 毛丹青
- あ、そのとおりです。
- 糸井
- そうですか。
その話は、ぼくにとって
すごく大きなヒントになったんです。
書というのは手先じゃなくて、
脳でもなくて、
全体の神経を通す道そのもの、
流れそのものだということを聞きましたが、
「手作り」もそういうものだと思いますね。
- 糸井
- そうですか。
その話は、ぼくにとってすごく大きなヒントになったんです。
書というのは手先じゃなくて、脳でもなくて、全体の神経を通す道そのもの、流れそのものだということを聞きましたが、「手作り」もそういうものだと思いますね。
- 毛丹青
- 私もそう思います。
日本語の中には、
手にまつわる表現が多いですね。
- 毛丹青
- 私もそう思います。
日本語の中には、手にまつわる表現が多いですね。
- 糸井
- 「手触り」とか。
- 毛丹青
- 「上手」とか「下手」とかね。
いいも悪いも全部「手」が関わる。
- 糸井
- 先生は文学作品を訳してらっしゃるので、
たくさんの言葉をやりとりされていますが、
雑誌の仕事のほうは、
その言葉の分量を減らしても
通じるようにできてますよね。
そこがおもしろいですね。
- 糸井
- 先生は文学作品を訳してらっしゃるので、たくさんの言葉をやりとりされていますが、雑誌の仕事のほうは、その言葉の分量を減らしても通じるようにできてますよね。
そこがおもしろいですね。
- 毛丹青
- はい。雑誌では、言葉のダイエットを
しないといけないと思っています。
- 毛丹青
- はい。雑誌では、言葉のダイエットをしないといけないと思っています。
- 糸井
- 言葉はあとから作られたものなんで、
その前にある何かでも
コミュニケーションができてたはずなんです。
さらにおもしろくしていくために
言葉ができたはずなんで、
逆に言葉とか数式だとかに
縛られてしまうのはよくないなと。
- 糸井
- 言葉はあとから作られたものなんで、その前にある何かでもコミュニケーションができてたはずなんです。
さらにおもしろくしていくために言葉ができたはずなんで、逆に言葉とか数式だとかに縛られてしまうのはよくないなと。
- 毛丹青
- その考え、よくわかります。
- 糸井
- ちょっとオマケみたいな話なんですけど、
「ほぼ日手帳」の次にやってることがあって、
「ドコノコ」という
アプリをスタートさせたんです。
- 糸井
- ちょっとオマケみたいな話なんですけど、「ほぼ日手帳」の次にやってることがあって、「ドコノコ」というアプリをスタートさせたんです。
- 毛丹青
- 「ドコノコ」。
- 糸井
- はい。犬や猫の写真アルバムが見られる
アプリなんです。
自分のところの子や、
散歩中に出会った子などの
いろんな写真を登録しておけて、
ほかの人にも見てもらえるんです。
エリア登録ができるから、
迷子を捜すときにもお役に立てます。
今、すでにアメリカとか
ヨーロッパでもやってる人が出てきています。
多少はコメントも入れられますが、
ほぼノンバーバルの
コミュニケーションができます。
文字数を少なくすると犬猫が
主人公のままでいられます。
つまり人間同士の面倒くさい付き合いを‥‥。
- 糸井
- はい。犬や猫の写真アルバムが見られるアプリなんです。
自分のところの子や、散歩中に出会った子などのいろんな写真を登録しておけて、ほかの人にも見てもらえるんです。
エリア登録ができるから、迷子を捜すときにもお役に立てます。
今、すでにアメリカとかヨーロッパでもやってる人が出てきています。
多少はコメントも入れられますが、ほぼノンバーバルのコミュニケーションができます。
文字数を少なくすると犬猫が主人公のままでいられます。
つまり人間同士の面倒くさい付き合いを‥‥。
- 毛丹青
- しなくていい(笑)。
なるほど。
- 糸井
- 言葉を減らしていって通じるおもしろさ、
それからグローバルに伝わること、
近所という地域性、
これらを全部重ねたものをやりたくて
はじめたんです。
- 糸井
- 言葉を減らしていって通じるおもしろさ、それからグローバルに伝わること、近所という地域性、これらを全部重ねたものをやりたくてはじめたんです。
- 毛丹青
- いいですね。
おもしろいです。
- 糸井
- いずれ中国でも、
あらゆる犬と猫は
ここに入ってくれたらいいなと思っています。
ぜひワンちゃんや
ニャンちゃんと暮らしている人に
教えてください。
- 糸井
- いずれ中国でも、あらゆる犬と猫はここに入ってくれたらいいなと思っています。
ぜひワンちゃんやニャンちゃんと暮らしている人に教えてください。
- 毛丹青
- 実は私も猫を飼ってたんですけど、
2年ほど前に亡くなって、
私と嫁さん、今ものすごくペットロスなんです。
- 毛丹青
- 実は私も猫を飼ってたんですけど、2年ほど前に亡くなって、私と嫁さん、今ものすごくペットロスなんです。
- 糸井
- そうでしたか。
もしよろしければこのアプリ、
「思い出ブック」も作れますよ。
誕生日と亡くなった日と、
思い出の写真をたくさん入れておけます。
そうすると、みんなが、先生のとこの猫を見て、
「あ、この子だったんだ」
とわかりますし。
- 糸井
- そうでしたか。
もしよろしければこのアプリ、「思い出ブック」も作れますよ。
誕生日と亡くなった日と、思い出の写真をたくさん入れておけます。
そうすると、みんなが、先生のとこの猫を見て、「あ、この子だったんだ」とわかりますし。
- 毛丹青
- ああ、いいですね。
- 糸井
- ぜひ。
- 毛丹青
- 今日は本当にありがとうございました。
楽しい時間でした。
これを機にまた何かできればと思っています。
- 糸井
- ぜひ、よろしくお願いします。
ぼくも、重なるものがたくさんあって、
楽しかったです。
どうもありがとうございました。
- 糸井
- ぜひ、よろしくお願いします。
ぼくも、重なるものがたくさんあって、楽しかったです。
どうもありがとうございました。