升ノ内朝子さんはギリシャ・アテネに暮らす
イラストレーターです。
ほぼ日の「やさしいタオル」のデザインも
手がけてくださっているんですよ。
そんな升ノ内さん、ギリシャのすてきなところを
みなさんに知ってもらいたいと、
現地で心を掴まれた風景やできごとを
イラストに描いてくれることになりました。
遠い国から届く絵ハガキをながめるように、
いろいろ想像して楽しんでくださいね。
不定期連載です。
時々日本の友達から「ギリシャも寒くなるの?」
と聞かれたりしますが、ギリシャにも春夏秋冬はありますし、
冬もそこそこ寒いです。
首都のアテネでも稀ですが雪が降りますし、
中部や北部へ行けばスキー場もあります。
実際私も数年前に、ギリシャ中部の
カルペニシというところにあるスキー場へ行きました。
日本でも最後に行ったのはいつ…?
というくらい久しぶりだった私。
はりきって靴やらウェアなど買っていったにも関わらず、
実際にスキー場に着いたら、夫は乗り気じゃないし、
数年前に痛めた腰をまたやってしまうのも怖いし‥‥
と日和まくってまさかのやらないという選択をしました。
ギリシャではスキーが冬のアクティビティとして
あまり定着していないようで、
夫もスキーの経験がありませんでした。
また、彼も20代の時に痛めた膝が今でも時々疼くらしく、
雪山の斜面を前に怯んだようです。
なんでここを旅行先に選んでしまったんだろう、
と思いつつもとりあえず当時7歳だった娘には
経験させてあげようと、スキー教室に入れました。
悲しい大人二人とはうらはらに、
たった1時間の個人レッスンでみるみる上達した娘。
ストックを使わずに腰の動きだけでバランスをとり、
緩い斜面を滑る練習をしていました。
また日本ではスキーを「ハ」の字に、と言いますが、
ギリシャでもやはり文字に例えるようで
「Λ(ラムダ)」の形に、と教えていたのが印象的でした。
そういうわけで私自身がスキーをすることは
叶いませんでしたが、ソリで滑ったり、
雪だるまを作ったりと久々に雪と戯れることもできましたし、
真っ青な空に映えるゲレンデの景色は
眩いほどに美しかったです。
今後またスキーをすることがあるかもしれませんが、
なんとなくその可能性は薄い気がしていて、
そうなると自分の意識しない内に
人生最後のスキーは過ぎてしまったということになります。
悲しいけれど同様に、これから
「思えばあれが最後の◯◯だった…」ということが
増えていくんだろうなと実感したのでした。
升ノ内朝子
2025-03-22