- ──
- 今回の『Michi』の構想って、
もともと、
junaidaさんが持っていたんですか。
- junaida
- そうです。
- ──
- 最初から画集ではなく、絵本で?
- junaida
- はい。
- ──
- それで、福音館書店の岡田さんに
ご相談されて‥‥。
- junaida
- いや、ごはんを食べているとき、
なんとはなしに
「こういう絵本のアイディアが
あるんですよね」
って話をしたら、岡田さんが、
興味を持ってくださったんです。
- ──
- おお、なるほど。
では、それから、制作がはじまって。
- junaida
- 岡田さんが「ぜひやりましょう」と、
言ってくださったんですが、
でも、そのときは、まだ前作の
『THE ENDLESS
WITH THE BEGINNINGLESS』
を描いている真っ最中で。
- ──
- あ、けっこう昔なんですね。
- junaida
- そう、『ENDLESS』が終わったら
『Michi』に取りかかろうと、
それ以来、あたためてきたんです。
- ──
- 文章がなく絵だけで構成されていて、
登場人物は
ひとりの男の子とひとりの女の子、
本の「前後」が決まっておらず、
どちら側から読んでもいい絵本‥‥
というコンセプトは、
最初からあったものなのでしょうか。
- junaida
- そうですね、そのあたりは。
- ──
- 岡田さん、福音館書店さんでも、
本をつくるときには、当然、
会議を通す必要がありますよね。
- 岡田
- はい。企画会議があります。
- ──
- その場で、そのような、絵本としては
ある意味で実験的な、
新しいものを提案されたわけですけど、
どんな感触でしたか?
- 岡田
- 僕は「大丈夫だろう」と思ってました。
絵本の構想を聞いたら、
「これは、おもしろい本になる」って、
すぐに思えたからです。
- ──
- なるほど。
- 岡田
- それに‥‥ぼくは、おもしろい企画や
すごい企画の話を聞くと、
身体が反応して、
全身に鳥肌が立つんですけど、
この『Michi』のときにも
その現象が起こったので、大丈夫だと。
- ──
- おお、べんりな体質!(笑)
ちなみに‥‥他の編集者さんの反応は?
いや、というのも、ほぼ日でも
毎週月曜日に企画会議があるんですが、
やりたい企画を提案する瞬間が、
いまだに、いちばん緊張するんですよ。
- 岡田
- ああ、わかります。
- ──
- 自分がいいと思っているアイディアに
ダメですと言われるのは、
やっぱり、わりと凹むじゃないですか。
- 岡田
- そうですよね。
でも、すでにjunaidaさんには、
弊社の単行本の装画で
お仕事をしていただいていましたし、
社内に何人も隠れファンがいて、
個展に潜入してるのを知ってたので。
- ──
- いけるだろう、と。
ご自身でもいいと思ってたことだし。
- junaida
- でも、隠れないでください(笑)。
- 岡田
- はい、すいません(笑)。
- ──
- junaidaさんは、
どうして「画集」でなく「絵本」と?
- junaida
- この本のコンセプトを思いついたとき、
これまでのように、
画集、アートブックとして出すことも、
当然、考えたんです。
- ──
- 実際、できあがった絵本を眺めると、
画家junaidaさんの
最新の「画集」として買うファンも、
ふつうに、いますよね。
- junaida
- そうかもしれないです。
でも今回あえて「絵本」としたのは、
子どもたちが
物語の世界の中で遊べる本、
絵に潜り込めるような「体験」のできる、
そういう本になったらいいなあと、
思っていたので。
- ──
- これは絵本だと思って見るのと、
画集だと思って見るのとでは、
たしかに、
ちょっと気持ちが違いそうです。
- junaida
- つくり手としては、
「絵本」という懐の深いジャンルで、
表現してみたくて。
- ──
- 懐。
- junaida
- わりと実験的なことをやってますが、
「絵本」というジャンルでなら、
わかってもらえる、
くみとってもらえるかなあ‥‥と。
- ──
- ただ、「絵本」というフィールドは、
ある意味で厳しいですよね。
名作だらけだし、
名だたる人が絵を描いてたりするし、
出したい人、いっぱいいると思うし。
- junaida
- そう、ですから、そこで
成立する品質感がないとダメだとは、
当然、思ってました。
- ──
- 絵本にしたかったってことは、
子どもたちのことを頭に描きながら、
筆を進めていった感じですか。
- junaida
- はい。子どもたちが見て、読んで、
楽しい気持ちになったり、
ふしぎな気持ちになったり‥‥。
大人になっても、
覚えていてもらえるような絵本に
なったらいいなあと、
そう思いながら、描いてました。
- ──
- なるほど。
- junaida
- 自分の部屋で読んでいたとしても、
気づいたら、
まわりにあるベッドや勉強机が消えていて、
いつのまにか、
絵本の世界に入り込んでしまって。
その子自身、この白い道を行って、
あの階段をのぼって、
その先の角を曲がって‥‥みたいな絵本に。
- ──
- 迷い込んじゃってほしいんですね。
- junaida
- そうなったらいいなあと思います。
- ──
- で、たっぷり楽しんで、
ドキドキするような冒険を終えたら、
自分の部屋へに戻っていく。
- junaida
- この絵本って、どちら側から読んでも、
1ページめが「ドア」なんです。
読者がドアを開け、一歩を踏み出して、
白い道をたどっていくと、
いろんな世界につながっていて、
そこでは、
さまざまなできごとが、起こっていて。
- ──
- ええ。大きく言えば人生みたいな。
- junaida
- そう、ぼくたちの毎日にも、
いろんな物語が起こっているわけで。
- ──
- 家から出て、電車に乗っていくだけで、
何かしらに出会いますよね。
その新鮮さ、大人は忘れてますけど。
- junaida
- 子どもは、毎日毎日が新しいですよね。
毎朝、新しいドアを開けていく。
文章のない絵本なので、
自由に、読むたびごとにちがう物語を
楽しんでほしいなと思います。
- ──
- 何を思ってもいいんですね。
- junaida
- もちろんです。
この子とおばあちゃんは、
いったい何を話してるんだろうとか、
何の本を読んでるのかなあとか、
ここは何屋さんなんだろうとか、
直感的に感じたり、
いろいろと自由に空想してくれたら、
つくり手としては、最高です。
- ──
- なるほど。
- junaida
- 自由な絵本をつくりたかったんです。
<つづきます>
2018-11-21-WED