東京の、西を流れるちいさな川のほとりをのんびりと
歩き続けてきた「みちくさ」も、
そろそろ終盤にさしかかってきました。
いまにも降り出しそうな空模様も気になります。
すこしだけ足を速めてゴール地点へ、
‥‥と思いましたら、
「あ、これは?」と吉本さんがしゃがみこみます。
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吉本 |
これは‥‥タンポポじゃないですよね。 |
梅田 |
はい、黄色くてタンポポに似た花ですが、
そうですね、タンポポじゃないんです。
西欧原産の帰化植物のひとつですね。 |
吉本 |
外来種。
なんていう名前なんですか? |
梅田 |
ブタナという名前がついてます。 |
吉本 |
ブタナ。 |
梅田 |
そう、ブタナ。
タンポポと同じキク科なんですけど、
タンポポよりも、花をつけている茎、
これを花茎(かけい)というんですが、
それがずっと長いでしょ? |
吉本 |
ええ、長いです。 |
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梅田 |
60センチから80センチくらいまで、
長くなるんです。 |
吉本 |
そんなに。
茎が長くなかったら、
タンポポと見まちがえそうですよね。 |
梅田 |
そうですね。
葉っぱの形もタンポポに似てるんです。 |
吉本 |
葉っぱ。
ええと、葉っぱはどこに‥‥? |
梅田 |
他の草で隠れちゃってますが、
この下の方に‥‥。 |
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吉本 |
そうか、下にあるんだ。
そういえばタンポポの葉っぱも
地面すれすれに
ついてますもんね。 |
梅田 |
ええ‥‥。
ほら、これです、これ。 |

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吉本 |
あ、ほんとだ。
ギザギザの葉っぱ‥‥タンポポにそっくり。 |
梅田 |
いちばんたしかなタンポポとの見分け方は、
ブタナは花茎が分岐するんです。 |
吉本 |
分岐? |
梅田 |
ひとつの茎から
もとの花茎がいくつかに分かれて伸びて、
それぞれに花を咲かせるんですよ。 |
吉本 |
へえー。 |
梅田 |
タンポポは、花茎1本で花がひとつです。 |
吉本 |
ああー、そうですよね。
‥‥それにしてもブタナって、
ひどい名前ですね。 |
梅田 |
実は北海道で最初に発見されたときは
「タンポポモドキ」という名前だったんです。 |
吉本 |
そっちでよかったのに。 |
梅田 |
ねえ(笑)。
ところがその次の年に六甲山で見つけられたとき
ブタナという名前で紹介されて、
その後ブタナが標準和名になったんです。 |
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吉本 |
そうなんだぁ。 |
梅田 |
フランス語で、
「豚のサラダ」と呼ばれていることから
直訳してその名前になったようです。 |
吉本 |
豚が食べるんですか? |
梅田 |
いや、そういうわけじゃなくて、
「人間が食べるもんじゃない」
という意味のようです。
日本ではミツバに似た草に
ウマノミツバと名付けたように。 |
吉本 |
よっぽどおいしくないんだ。 |
梅田 |
ぼくはこれ、試してないので
わからないんですが、そうなんでしょうねえ。
葉に毛もガサガサ生えていて。 |
吉本 |
タンポポモドキの方がいいのに。
どうして最初に見つけたときの
名前にならなかったんですか? |
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梅田 |
それはちょっと、わからないんですよ。
タンポポモドキの方がいいですよね。
もしくは、「セイタカタンポポ」とか。
「エダザキタンポポ」とか。 |
吉本 |
ああー、いいですね。 |
梅田 |
さて、ゴールに向かいましょう。
そっちにトンネルがあるので、
そこをくぐれば、すぐに「ほたるの里」です。 |
吉本 |
はい。
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ゴールの手前でまたひとつ、みちくさに出会いました。
ブタナ、覚えました?
「のがわ」でのみちくさは、
ちょっとかわいそうな名前が多いですね?
さて、ほんとに雨の気配。
すこしだけゴールを急ぎましょう。
「のがわ」でのみちくさは、
のこすところあと2回となりました。
次の「みちくさ」は、火曜日に。
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