三國万里子の  編みものの世界。

担当編集者が語る、三國さんのこと(前編)

いまみなさんが読んでくださっている、このコンテンツは、
2冊の手芸本との出会いから、はじまりました。

もう何度もご紹介していますが、あらためて。


『編みものこもの』
文化出版局/1365円(税込)

『編みものワードローブ』
文化出版局/1470円(税込)


ほぼ日の乗組員みちこなんこの情熱に火をつけた
この2冊の担当編集者、
『株式会社リトルバード』
三角紗綾子さんにお話をうかがいました。

三國さんとの、出会いは?
この本は、どういうつくりかたで誕生したの?
三國さんって、どんな人ですか‥‥?




みちこ はじめまして。
なんこ よろしくお願いします。
三角 こちらこそ、よろしくお願いします。

みちこ (お名刺を拝見しつつ)
「リトルバード」さんというのは
編集プロダクションの会社でしょうか。
三角 そうですね、
いまはなくなってしまったのですが
「雄鶏社」という会社の仲間が集まってはじめた
編集プロダクションです。
みちこ 「雄鶏社」さん。
手芸本の老舗のような出版社さんでしたよね。
三角 ええ。ですので、いまつくっているのも、
「編みものや縫いもの」など、
「手づくり」のたのしさを伝える本なんです。
なんこ なるほどー。
‥‥で、この2冊。
みちこ そう、この2冊。

三角 はい。
なんこ もう、あまりにもかわいくて。
三角 ありがとうございます。
なんこ おしゃれな手芸本って
たくさんあるとは思うんですが、
そんな中でも三國さんのは独特な雰囲気があって、
なんか、あの‥‥とにかく惹きつけられました。
みちこ ‥‥無粋な言い方なんですけれども、
たぶんこの2冊は、とても売れていますよね。
三角 はい、売れています。
なんこ わぁ、やっぱり。
三角 1冊目より、2冊目が売れているんです。
みちこ へえ〜、すごーい。
なんこ 写真もすてきだし、なんてかわいい本だろうって。
三角 本をほめていただいて、うれしいです。
でもそれはやっぱり、
三國さんの作品がとにかくすばらしいからで。
なんこ そうですね、もちろん。
みちこ 三角さんは、
三國さんにどうやって出会ったんですか?
三角
「雄鶏社」にいたころ、
会社宛に「長津姉妹店」の案内葉書をくださって、
それが編集部の壁に貼ってあったんですよ。
さりげなく、ふつうに。
なんこ へえー。
三角 その葉書がかわいかったので、行ってみたんです。
その展示が衝撃的にかわいくて。
そこで作品を買ったのが
もう、6、7年前になりますね。

みちこ あ、そんなに前なんですか。
三角 ふつうに三國さんのファンとして、
毎年「姉妹店」をたのしみにしてました。
会場にいけば、記帳するときに、
「すごくすてきでした!」とか、
「お仕事でご一緒したいです!」みたいなことを
アツく書いたりしたんです
なんこ おおー。
三角 なのにぜんぜん、リアクションがなくて。
みちこ そうだったんですか。
三角 だから、本で作品を発表することに
興味がない人なんだなあと思ってたんです。
1年間はそんな感じで、
2年目にようやくご本人にお会いできたんですよ。
みちこ いよいよ。
三角 そのとき、
「書籍用に作品を提供していただけないですか?」
って言ってみたら、
「ぜひ喜んで」と。
なんこ あれ(笑)、意外とあっさり。
三角 それが、この本です。
複数の作家さんとの共著なんですけど。

みちこ わー。
なんこ この帽子、三國さんの作品ですか。
三角 そうです。
このご縁から、
「いつか、三國さんで1冊つくりたいですね」
となって、
『編みものこもの』に結びついたわけです。
みちこ なるほどー。
なんこ あの‥‥三國さんにちらっとうかがったんですが、
2冊目の本をつくる前に、
三國さんと三角さんおふたりで、
ツアーに出かけたそうで‥‥?

三角 お買いものツアーです(笑)。
ほんと、大学生のときにやるような。
原宿で待ち合わせして、
渋谷に行って、
渋谷から代官山、中目黒まで歩くみたいな。
みちこ たのしそー。
三角 なんていうんでしょう‥‥。
1冊目をつくったときは、
こう、ほっこりとした路線で
本をまとめたんです。
でも何度かお会いするうちに、
三國さんは、その世界観だけの人じゃないな
って思ったんですよ。
北欧とか東欧の伝統的なものばかりじゃなく、
ちょっとキテレツなものも
好きだっていうことがわかってきたんです。
たとえばアメリカ的なおもしろさも入ってる、と。

なんこ はいはい、入ってますよね。
三角 一度ふたりでお買いものしましょう
ということになったんです。
同じものを見て、
イメージを共有させておくために。
みちこ それで原宿に。
三角 「あの古着屋さんで見た、
 アメリカの古着のカーディガン覚えてる?」
みたいなことを繰り返して話しながら、
2冊目はつくっていきました。
お買いものツアーで刺激を受けた要素が
2冊目にはけっこう入っていると思います。
なんこ なるほど、2冊目はたしかにそうですよね。

1冊目は帽子や手袋の「こもの」の本で、
ほっこりしてましたよね。

協力: 文化出版局 編みものこもの

みちこ 2冊目は、伝統的な雰囲気を残しつつ、
ウエア類も加わって、
よりたのしく広がっている気がしました。

協力: 文化出版局 編みものワードローブ
三角 ありがとうございます。
‥‥このカーディガン、
刺しゅうが入ってますよね。
みちこ ええ。
三角 こうなるまでが、
ちょっとおもしろかったんですよ。
(バッグからカラフルなものを取り出す)
なんこ ん? これは‥‥??

三角 刺しゅうなんです。
三國さんがつくったものです。
みちこ へえー。
三角 これが、紙に縫いつけられて、
葉書になってうちに届きました。

なんこ すっごーい!
届くんですね、これ。
三角 これは、ちょっとわたしもビックリしたんです。
お買いものツアーのあとに
送られてきたんですけど、
刺しゅうの練習をしてますとか書いてある。
ええと‥‥12月30日ですね消印が。
みちこ 郵便屋さんもビックリですよね、これ。
三角 で、1月4日に
次の刺しゅう葉書がまた届いて、
その数日後には、
もう葉書じゃなくて
まとめて一気に届いたんです。
こんな感じで。

なんこ すごーい!
みちこ すごい、三國さん!
三角 短期間のあいだに、
めきめき上達してるんです。

なんこ 三國さん(笑)、おもしろい。
爆発的な人ですよね。
みちこ この刺しゅうはつまり、
2冊目の本でこういうのをやりたいということで?
三角 そう、そうです。
みちこ そこから、こういうふうになったんですね。

三角 そういうことです。
とどいた葉書に、
「これをカーディガンの前立てにしたらどうかな」
みたいなことが書いてあって。
なんこ すごいなあ‥‥。
三角 で、この葉書の最後に書いてあるんですよ。
「よいお休みを」
‥‥いやいや、休めない!
みちこ はははは。
なんこ こんなの見せられて(笑)。
三角 すごい刺しゅう見せられたら、休めない(笑)。

なんこ おもしろーい(笑)、
三國さん、ほんとにおもしろいねぇ。


(月曜日に、つづきます)

2011-04-01-FRI

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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
イラスト/木下綾乃