個人的な神話。
伝説や悪癖や誤解や物語で、人はできあがっている……。
大勢の肉声を集めつづける「ほぼ日」を動かしていると、
それに気づかされる機会が、とてもたくさんあるのです。

災害や事件からなる「集団としての記憶」と一味ちがう、
家族や友人にだけ伝わる神話のような「個人の記憶」を、
ふぞろいのまま、集めておとどけしたい、と思いました。

ひと家族だけの神話が、誰かの個人史にもつながるかも?
笑える経験も、勇気づく言葉も、でこぼこに並べますが、
ひとつの噂話は、ある個人にとっては「神話」なのです。

担当は、「ほぼ日」スタッフの、木村俊介です。
全10回ほどで、4月中旬までおとどけしてゆく予定です。

第9回 職業の神話(その3)


今日は、4月の最初の土曜日です。
新年度から新天地にいくことになって、
どきどきしている人もいるでしょうし、
なにも周囲は変わらないけど気をひきしめる人も、
週末はお花見にでもいくんだという人もいますよね。

新年度なんだけど、会社で仕事をしている合間に、
このページを開いたという人もいるかもしれません。
土曜日の「ほぼ日」は、更新がすくなめなこともあり、
なるたけ「ゴキゲン」をおとどけできる職業病話を、
たくさん、集めてみました。
「言いまつがい」「声を出して読めない日本語」を
たのしむように、
おたよりのそれぞれを味わってみてくださいね。

「この職業は、こんなことを思うんだなぁ」
「そういえば、自分はこんなクセがあるぞ」
などと、笑いながら、
それぞれの個人の目に映る世界を眺めてみてください。




 「私は音楽高校に通っていたのですが、
  音高生や音大生は、
  みんな何かとすぐ拍手します」



 「中小ベンチャー企業の記事を書いて
  暮らしています。
  街を歩いていると
  中小企業の社名がわらわらと浮かんできます。
  ペットボトルのラベルや、
  道においてある消防ホースを、
  どこの会社が作っているのか、すぐにわかって、
  がんばってるなぁ、とほくそえんでいます」



 「私の実家は、老舗の葬儀屋です。
  家族の中で長男の私だけ
  家の商売に関わらない仕事を
  しているんですが、
  この家人たちの誰かに、
  道順とか聞いたりすると……
  『○○寺の前を通って、
   △△寺を右に曲がって、
   しばらく道なりにいくと
   □□寺があるからその三軒隣』
  と、寺ばかりの説明をするんです。
  ぜんぜん、わからん」



 「友人に看護師さんが多いのですが、
  満月の夜になると、産婦人科の友人は
  『今夜も赤ちゃんが産まれるんだろうな』
  と思い、内科の友人は、
  『今夜、誰かが
   お亡くなりになってしまうかも』
  と思うそうです。
  ひとの生命は、やっぱり、満月の日に、
  いろいろ節目を迎えるみたいです」



 「ダンナがアニメーターです。
  動いているモノを見ると
  『この動きだと原画何枚で動画はこう入れて』
  と動きを分解して考えてしまうのだそうです。
  動きのはやい動物の動きなどは
  『……ビデオでスローで確認しなきゃ』
  と考えているみたいです。
  私はダンナの仕事の資料を横から見ているので、
  最近は絵コンテを読むだけで
  アニメを見たと勘違いして
  記憶してしまうようになってしまいました」



 「獣医師をしています。
  仕事中にひどく寒気がして熱を測りました。
  体温計が38.9度なのを見て
  『なんだ、平熱じゃん』
  と思って震えながら、仕事を続けました。
  犬・猫たちの平熱がだいたい38度代なのです。
  後から人に指摘されて
  どっと動けなくなったことがありました……」



 「大学生の頃、
  夏休みに巨大な冷凍倉庫で
  バイトしたことがあります。
  届いた冷凍食品やアイスを倉庫に入れたり、
  運び出してトラックに
  積み込んだりする仕事でした。
  倉庫の中は
  『バナナで釘が打てる』マイナス20度、
  その一方で、トラックの集積場は日陰もなく、
  暑い日には40度以上にも!
  プラスマイナス60度の間を
  行ったり来たりしていると、
  やがて分厚い防寒具を着たままで
  真夏の炎天下に立ってても
  ちっとも暑さを感じなくなっていました。
  あの時は『人間って慣れるもんなんだなぁ』って
  変に関心したけど、今思うと、
  感覚がにぶってヤバイ状況だったのでは……」



 「高校生の夏休みの頃、
  墓石を建てるアルバイトをしました。
  実は近所の親戚の人が石材店を営んでいまして、
  お盆前で忙しいからと声がかかったのです。
  私の作業は、工場で加工した
  石の瓦礫(がれき)を袋に詰めて運んだり、
  セメント袋を運んだり、作業現場で
  モルタルを練ったりすることでした。
  モルタルとは、
  セメントと砂を水で練ったもののことで、
  墓石の隙間を埋めて
  接着剤にするために使います。
  あとは細々とした雑用ですね。
  使い終わった道具を洗ったりとか、現場を片づけたり。
  ちなみに、墓石なので作業現場は墓地です。
  作業が終わらずに夜になると照明をつけるので、
  現場には蛾や虫が大量に寄ってきます。
  私は蛾が大の苦手で、
  はじめの数日は気持ち悪がってたのですが、
  バイト終わりの頃には白い巨大な蛾を
  手でたたき潰すという
  荒業をできるようになってました。
  汗だくだし、疲労で、
  蛾ごときは気にしてられないんです。
  バイトが終わって自宅に帰ると、
  風呂→飯→就寝でした。
  体中の筋肉が疲れた状態で寝るのは
  かなり気持ちいい。
  人間はそういうふうにできているのかもしれない」



 「大学の頃の後輩の話ですが、
  お菓子の『ひよこ』の工場でバイトをしたそうです。
  最初の頃パートのおばさんと一緒に流れてくる
  お菓子の選別をしていたところ、
  隣にいたおばさんが流れてきた『ひよこ』をパクッ。
  びっくりした後輩に一言、
  『こんなにあるから大丈夫』と……。
  後輩も試しに食べてみたところ、
  まだ出来立ての『ひよこ』は
  温かく、とても美味しかったそうです。
  それもつかの間、ラインに流れてくる
  何万個の『ひよこ』を選別するのは
  やはりつらかったらしく、
  ボロボロになって自宅に帰って爆睡したそうです。
  ちなみにその夜見た夢は、家のドアを空けた瞬間、
  大量の『ひよこ』が
  頭に降ってきた夢だったそうです」



 「以前、建築用ガラスを扱う仕事をしていました。
  建築用ガラスは大きさを表す呼び方が独特で、
  例えば144×96を
  『いっちょんちょんのくんろく』
  48×72は『よんぱーななに』
  60×36は
  『ろくまるさぶろく』と呼んだりします。
  ある日、友人に電話番号を聞かれて
  その呼び方をして
  変な顔をされて初めて気が付き赤面しました。
  無意識って恐いです……」



 「バイオの研究者です。
  私にも職業病があります。
  それは、異常にていねいな洗いもの。
  使った試薬や洗剤などを、
  実験器具に残さないようにするため、
  うちの研究室の場合、
  1.洗剤で器具を洗う
  2.洗剤の泡が消えるまで、水道水でゆすぐ
  3.泡が消えたらさらに10回、水道水でゆすぐ
  4.蒸留水でさらにゆすいで、
    水道水中に含まれるよぶんなものを除く
  という手順でみんな洗いものをしているわけですが、
  年がら年中こんなことをしていると、
  通常の洗いものにもこの『お作法』が出てくる。
  ……茶わんを洗うにも、思わず
  10回数えながらゆすいじゃうわけですね。
  もちろんこんなことをしてると、
  いつまで経っても食器が片づかない……。
  思わず手が蒸留水を探してたりします」



 「私の会社は、検便の検査をしています。
  一日に何百、何千もの人のうんちが届きます。
  みなさん、他人のうんちを見ることなんて
  滅多に無いと思いますが、
  ホント、個性ありますよ。
  しかし、自分が便秘の時は、
  何とも言えない気持ちです」



 「私は競馬場でいわゆる馬券を売ってます。
  バブルの頃は、1レース100万円単位で
  馬券を買っていくお客サンもいましたが、
  もうそういうお客さんも
  めっきり減り、寂しい限り。
  以前ビックリしたのは、
  ひとりのお客サンが買った後、
  スグにやって来たヒトが、
  ジャケットの内ポケットから
  サッと警察手帳を見せ、
  『今の客いくら買った?』
  って聞いてきたコトがあったんです……。
  なんか刑事ドラマだなぁと思いました」



 「職業病かどうか分かりませんが、
  多分見た事ないひとには想像もつかない事なので
  メールしてみます。
  僕は数年前まで
  眼科医をしてましたが(今は休業中)
  お子さんの網膜を見る時には
  結構ドキドキしてました。
  だってあんまりキレイなんで。
  本当に美しい、キラキラ光ってて。
  人の体にあれだけきれいな場所があるって
  みんな知らないだろうな。
  見る度に、あんまり美しいので
  ため息を患者さんに隠れてつきながら、
  何度眼科医になって良かったと思った事か。
  今でも時々見ると、ハッとしてため息が出ます。
  写真じゃ駄目なんです。本物見ないと。
  もしかして、ちょっと変でしょうか?」



 「私は、眼科医ではなく
  視能訓練士(眼科検査技師みたいなもの)でしたが、
  お子さんの眼球って、ほんと、きれいで、
  眼底も角膜も内皮細胞も、
  ピチピチと音をたてそうなほどみずみずしくて、
  細胞が粒ぞろいで、検査の度に見とれていました。
  友人に子どもが生まれて、会いに行っても、
  『あー、赤ちゃんの眼球って、
   なんて新しくてキレイなんだろう』
  と思わず言ってしまってひんしゅくをかうことも」



 「海上(船)で測定の仕事をしています。
  船にとって一番の難題は天候です。
  特に風。強いと湾に逃げるしかないので。
  次が夏の炎天下。作業は出来るが人間がバテる。
  そのため、いちばんいいのは風のない曇天です。
  そんな日は陸に居ても、
  『いい銀色の空だなあ』と、うれしくなります」



 「カヌーをやってます。
  カヌーと言っても遊びかたはいろいろで、
  私は激流に突っこんで
  ウエーブでサーフィンしたりしたり
  艇をまわしたりする
  フリースタイル系をたのしんでます。
  水量によって遊びかたが変わるので
  川のチェックは欠かせません。
  カヌーをしない時でも、川を見ると
  『あそこからエントリーしてあのウエーブに乗って』
  とシミュレーションしてしまいます。
  ドブ川を見てても、流れている木の葉が
  自分の艇だと想像してコースを考えてしまってます。
  台風の後の川とか滝を見ると
  頭の中ですごい世界が繰り広げられて、
  ぐったりします。
  ときどき
  沈(ひっくり返ること)脱(艇から出ること)して
  激流で泳ぎ、死ぬ思いしたりします。
  だからドラマなんかでライフジャケットもつけずに
  溺れた人を救助するシーンが出てくると、
  『本流に入ると沈むぞ!
   すぐエディ(流れがない所)に入れ!』
  と手に汗にぎります。
  映画『タイタニック』では、
  主人公たちが海に投げ出され
  海流に巻きこまれるシーンは
  身が縮む思いで、
  まともに見られませんでした……」



 「私は、商社の物流部に勤めています。
  海上輸送に関係している仕事です。
  だから、横浜やお台場へ行っても
  海の綺麗さに感動することなどなく、
  港でのコンテナの荷役の具合や、
  クレーンの稼動状況、
  果ては港に入ってくる船の大きさや
  種類などが気になります。
  台風が来ると、
  『うわぁ! また博多出しが遅れる!』と
  コンテナの動静を気にしてしまいます」



 「夫は、河川関係の仕事をしているので、
  昆虫などを
  『○○目○○科』
  と詳細を述べるので、うざいです。
  言われてもわかんないし。
  でも、気になるらしく、
  えんえんと述べています……」



 「私は昆虫メーカーに勤務しております。
  ピーク時は、何千万匹の
  幼虫やカブト虫などを出荷しております。
  出荷の荷札に、
  『午前中必着』などと記入する際に、
  『中』の字を無意識に
  『虫』と書いてしまっていて、
  笑ってしまいました。
  同僚も同じことをしています」



 「ライターをしております。
  仕事柄、質問せずにはいられません。
  家族でシンガポールに行ったときもそうで、
  ガイドの方の説明にアバウトな表現が多いと
  『もっと明確な数字を教えてよ』
  とか思ってしまいます。
  ついには我慢できなくなって、
  いつ、どこで、誰が、何を、どのようにと
  お決まりの5Wの質問からはじまり、
  いつの間にか、その方の生活に対する不満や
  将来のビジョンまで聞き出してしまいました。
  夫に『……何でメモ取ってんの?』
  とつっこまれるまで、
  インタビューは続きました」



 「社会福祉施設で働いています。
  みんなで歩いているときに
  後ろから車とか自転車とかが来ると、
  大きな声で
  『車でーす!』『自転車でーす!』
  と前の方を歩いている人に、
  注意喚起の意味で声をかけるのですが、
  仕事以外で友人と歩いているときなんかにも、
  思わず言ってしまいます」



 「仕事と関係ないのですが、
  オセロがすきなんです。
  時々、ネットゲームでも
  知らない人とやってます。
  本を読んでると、
  文字の羅列がオセロ盤に見えて
  (漢字は黒、ひらがなカタカナは白)
  心の中でオセロをやってしまいます。
  ななめに長く
  ひっくりかえせるところがあると、
  うれしいんです」



 「父は元郵便局員です。
  2年前に退職したのですが、
  今でも旅行先で電車に乗ったら、
  『あ、今通り過ぎた郵便局が
   この市の中央郵便局で、
   けっこう新しい建物なんや』
  と言い、目的地で散策している最中にも、
  『ここ、近くに△△郵便局があるよ。
   ちょっと寄ってかない?』とかならず言います。
  私が大阪に住むことになった時も、
  『近所に○○郵便局ってあるね。
   あそこは小さいけど集荷してて、
   速達も扱っているよ』
  と、すかさず言っていました」



 「私は元パティシエです。お客さまで
  同業者の方がいらしたときはすぐにわかりました。
  ケーキを、分解して召し上がるのです。
  これは、こうで何を使っているか、とか……
  その気持ちはとてもよくわかるのですが、
  素直に美味しく食べようよーって、
  いつも心の中でツッコミいれてました」



 「私はOLをしている32歳の女性ですが、
  元ホステスです。
  現役を引退して4年ぐらいたとうとしているのに、
  いまだに、会社の飲み会などにいくと、
  全員のグラスの飲みのスピードを見て、
  絶妙なタイミングで、
  お代わりをたのんでしまいます。
  一度飲みにいけば
  各々の好きなお酒の銘柄も覚えてしまい、
  『○○さんは、××焼酎ロック派だよね』
  とか言ってしまいます。
  会話に入れない人がいると、
  ついつい話題をふり、盛りあげてしまったり
  カラオケボックスに行けば、歌いたくもないのに、
  積極的にデュエットを歌ってしまう……。
  ひとりでバーなどに飲みにいったりしても
  たまたま横に座ったおじさんまでも
  盛りあげてしまい
  お店ごと、笑いの渦に巻きこまないと
  気がすまなくなってしまいます。
  そして困ったことに、全然気がないのに、
  いつのまにか電話番号交換をしていて
  じゃんじゃん電話がかかってきてしまったり……。
  どうにもこうにも、飲み場に行くと
  ★1.盛りあがらせなければいけない!
  ★2.くどかせなければいけない!
  というふたつの鉄則が身についてしまっていて、
  ちっとも落ち着いて飲むことができません。
  やはりホステスに戻った方がよいのでしょうか?」



 「私は仕事で毎日住宅の設計図面を見ています。
  私が設計した図面ではないため、
  どうにもならないところがもどかしいのですが、
  いつも、すごーく気になるのは二世帯住宅です。
  時々図面の中に、二世帯住宅があると
  その造りを詳しく見てしまいます。
  『おお、ここは玄関が別々、きちっと分けたねぇ!』
  『お風呂が1階に一つしかない!
   夜は階下の親世帯
   (間取りなどでどちらが親世帯かわかる)
   にオフロもらいに行くのかー。
   気を使うだろうなあ……。
   ハダカで義両親の前は歩けないぞ』
  『玄関は共有だけど、
   2階に行く階段入り口には扉がついている!
   しかもその扉には鍵が!
   いつも鍵閉めていたら、
   心理的にどうかと思うがどうするのか』
  などなど、余計なオセワですが、つい、
  自分がその家のヨメになった気になり、
  いつもどちらかというと
  ネガティブな発見ばかりしてしまいます。
  細かい点では、親世帯のキッチンの方が
  子世帯より大きいとか、親の方がお風呂が広いとか、
  あるいはその逆とか、住宅設計は
  そこに住む人の考え方や価値観が如実に表れるため、
  会ったこともない人たちの人生を考えてしまいます」



 「私は自動車の床を設計する部署で働いています。
  鉄板をカットしたり、
  樹脂製品を型から抜いたときにできる
  ギザギザした余分な部分をバリと言うのですが、
  先日、夫に、私、
  鯛焼きのバリが好きと言ったところ、
  同じ自動車会社に勤めている夫には通じました。
  ※念の為、鯛焼きのバリとは、
   型からはみ出てカリカリに焼けた部分です」



 「以前、仕事の一環で
  国語の模擬試験問題などを作成していました。
  一番苦労するのは、問題文を探すことです。
  新聞を読んでいても、本を読んでいても、
  問題文に使えるかどうかという意識が
  いつも働きます。
  『ここからここまでで、
   ちょうどいい分量だな』とか、
  『この漢字を読ませて、
   この熟語は書かせよう』とか、
  『ここに傍線を引いて、
   50字くらいで説明させよう』とか、
  『ちょっと長いから、ここを「中略」だな』とか、
  心の安まる暇がありません。
  小説はさらに悲惨で、
  『○○は無言で頷いた』などとあると、
  このときの○○の気持ちを
  説明せずにはいられません。
  説明しづらい感情だと
  『使えないなぁ』と思ってしまいます。
  そもそも読書が好きで
  この道に入ったような人間なのに、
  読書を純粋に楽しめないという
  ジレンマにかられていました。
  退職した今は、日々図書館通いをして
  読書を楽しんでいます」



 「私はビール会社の
  ビールを運ぶ会社に勤めておりまして、
  やはり自社のビールを飲める店に行って
  自社製品の消費に一役買う日々が続いております。
  (たぶん、かなり消費してますよ……)
  しかし物流系の人間は、
  さらにそのさきがありまして、
  店先で空になったP函(ビールびんを入れる函)が
  大量にあるのをみたり、町を歩いていて
  倉庫に社名の入ったパレット(運ぶための板)が
  たくさんつんであるのをみると、
  メモをとっておき、
  「『引き取るものないですか』と
   声をかけてください」
  とそのあたり担当の
  ドライバーさんにお願いするのです。
  空箱や空瓶、空樽、パレットは再利用するんです。
  しかし倉庫前で足を止めて、
  社名をメモしている様は、
  かなりあやしいことでしょう。
  実際わたしのしている仕事というのは、
  ドライバーさんの仕事を
  金額に換算して報告をすることです。
  自然ドライバーさんと接する機会も増えるので、
  町行くビールを積んだ
  ドライバーさんの荷物を見て、
  『大びんの山数がこれぐらいとすると、
   このトン数だから、
   うわあ、赤字のお仕事だ、申しわけない』とか、
  『このつみ方はまずいだろう、
   厳重注意してもらわないと』
  とつぶやいてみたり。
  朝早くに路上で駐車して
  眠っているドライバーさんに、以前は
  『何でこんな道にトラックが! 邪魔!』
  と思っていたのですが、
  『明日、朝イチ降ろしかな。がんばってるなぁ』
  とさえ思えるようになってしまいました」



 「私は大学で林業系のお勉強をして
  現在は自然の中をガイドする仕事をしています。
  職業病なんてないと思っていたのですが、
  友達と旅行に行って
  『この山、きれいな緑だねー』と言われて
  素直に、うんと言えなかった時の
  ショックといったら!
  その時の私の思考回路は
  『カラマツ50年生、
   要間伐対象だけど、できないよなぁ。
   これからどうするんだろう?』でした。
  『スギ40年生、材積は? 立木価格は?』
  などとも思います。
  これらの問いは、林業家なら即答できるものなので、
  見ただけではわからない私は
  修行が足りないと反省しています。
  *用語解説*
   カラマツ=電柱とか土木工事用に
        必要で植えたのですが、
        代替品が登場して
        ほとんど売れなくなった木。
        針葉樹なのに
        紅葉する木ですごくきれいです。
   間伐=畑でいうところの間引き。
      大事な作業ですが、
      木材の価格が下がっているので、
      コストをかけることができないのです。
   材積=木材の販売ができる体積のこと。
      葉や根の部分は売ることができないので、
      実際の体積では無いのです。
   立木価格=立っている木のまま売るということ。
        買った人が、木を伐って
        製材所まで持っていく必要があります」



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