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タモリ |
大学でやっていることは、
「じゃあこれからどうするんだ」
ということが
ほとんど抜きに語られているでしょ。
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中沢 |
そうなんです。
どうすぐに役に立つんだとか、
政策とか経営とか社会学の方に
いっちゃうんですよ。
そういうんじゃないでしょう。
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タモリ |
ほぉ。
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糸井 |
社会学にいくにしては、
社会学も
ちゃんと教わってないっていうか。
ぼくは広告屋じゃないですか。
さる大学で
一回来てくださいといわれてやって、
先生がなんにも知らないんですよ……。
つまり、広告がどういうものか、
ということが、
やったことがある人は
先生なんかしてないんですよ。
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タモリ |
うん。
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糸井 |
つまり、そこに行きかけて
あと戻りした人が
先生をやっているわけですよ。
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タモリ |
評論家と同じですね。
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糸井 |
「むずかしいから
ぼくはうまくいかなかったよ」
ということになってしまう。
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中沢 |
(笑)
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糸井 |
現役の大工の棟梁が
家を建てることについて
教えるっていうことと、
同じようなことが必要なわけです。
実用の学問にしてもね。
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中沢 |
だってぼく
宗教学をやってるけど、
自信があるのは
宗教というものをやっている人たちの
直伝ていうか、
どういうことが起こるか、というのを
大体体験でわかっていますから。
それがなくて、
宗教がどうたらこうたら
いう人たちを見ていると
本当に先生やっていていいのかな、
と感じますね。
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タモリ |
ほぉ。
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糸井 |
先生という形でプールしている、
じかに仕事をしなくてもいい人たちの
数というのは
ありがたい話なんですよ。
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中沢 |
社会福祉ですからね。
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タモリ |
守られているところがありますからね。
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糸井 |
それが
なくなっちゃったときの
せちがらさというのは、まぁ思いますよ。
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中沢 |
ありますね。
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糸井 |
しょうがない会社で、
しょうがない人間が、
左うちわで「チミ、チミ」と
やっているのも、
まぁ福祉としてはいいと。
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タモリ |
それ、貨幣経済の側にたった
ものの見方ですよ。
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糸井 |
(笑)そうですね。
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タモリ |
能力によってね。
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中沢 |
それがあったから、
こういう状況に
追い込まれてしまっているんですね。
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糸井 |
ぼくは、
先生たちを選別しろ、
だとかはいわないですよ。
だけど、違う道を探しやすくなった今は、
違う道をいく邪魔しないでほしいという。
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中沢 |
芸術人類学というのは
違う道、違う位置っていうことで、
しかもぼくは熟考を重ねていますし、
一度、
大失敗もしているくらいですから、
そうそう、間違いはしないだろう、
と思っているんですけれども。
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タモリ |
これから
いろんなことが出てくるんだと思うので、
今日だけではすまないでしょうね。
どんどん広がっていくんだろうと思います。
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中沢 |
新聞社、大学、研究所。
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タモリ |
これは三つ一緒になったんですから。
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糸井 |
そうですね。毛利元就、三本の矢。
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タモリ |
……もうそろそろ、
駐車場がしまるので、
ほんとに終わらないと、
話はつきませんよ。
打ちあわせだけで
これ以上かかったんですから。
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中沢 |
芸術人類学について話す15分は
じゃあ、これでいい?
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タモリ |
次にまわしたいと。
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糸井 |
そうですね。
まわしましょう!
……そういう終わり方です。
中沢新一さんでした。
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タモリ |
どうもありがとうございました。
(イベントの会話を文字にした連載は、
今日でおわりです。
ご愛読、ありがとうございました)
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2006-02-07-TUE
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