「おもしろい質問を たくさんありがとうございます」 |
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「今回はちょっと哲学的な 質問かもしれません〜。 よろしくおねがいします!」 |
ひきつづき、 メールでの質問、読ませていただきますー。 |
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「コンデジ」っていうのは‥‥ | |||
コンパクトデジタルカメラですね。 | |||
「ハーフカメラ」っていうのは‥‥ | |||
35ミリフイルムを使うんだけれど、 1コマの半分の大きさで写すんですよ。 倍撮れるカメラです。 |
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あ、むかし、家にありました。 オリンパスの「Pen」っていうのが。 |
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そうです。Penです。 | |||
つまり、ちっちゃいデジタルカメラか、 フイルムカメラを、女友達のワイワイ旅行に 持っていくんだけれど、 写真も、自分も楽しめる旅行にするための コツってありますかってことですね。 |
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これはね、いわゆる、 時系列で並べるのがいいと思いますよ。 とにかくもう、狙いとかじゃなく、 自分が歩いてきた道で出会ったものを、 とにかく撮って来る。 その場で友達が来たら撮る。 楽しいことが起きたら撮る。 どこかに行って、イベント的に 「ここで記念写真を撮ろう」じゃなく、 そういう気分になった時はそれでもいいけども、 とりあえず、時系列でいっぱい、 撮って来るじゃないですか。 で、もう1回まとめる時も、 出発から帰ってくるまでを、 時系列でベストショットを並べる。 そうすると全員が共有ができるというか。 見た人も、行ってない人も 行ったような気になるし。 それが僕は最大の、 旅の写真のポイントのような気がしますけどね。 前、言ったことありますよね、武井さんに。 |
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はい、僕もそうしています。 | |||
いわゆる、ドキュメント。 | |||
編集しすぎるのだめですね。 | |||
だめです。 それは結婚式の写真でも一緒ですよ。 友達に頼まれて、披露宴とか、 「写真撮ってくれ」って言われて、 撮るじゃないですか。 みんなは、記念写真を1枚、2枚、 撮ってくれればそれでいいと思ってるみたい。 頼んでくれた人はね。 でもね、渡してあげる時に、 他の人たちにできなくてぼくにできることは、 もうその日の朝から、 「おはよう」って言った時から、 もうずっと撮るんです。 そして、時系列で30枚ぐらいを ババババッと並べて、 写真集みたいにしてあげると、 すごく、喜ばれますよ。 |
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何気なく撮っておくと、 花嫁の父が、控室で、 ちょっと呆然としてたりするのが 偶然、撮れたりするじゃないですか。 そういうのが、花嫁の笑顔の間に挟まるとね、 「ああ、よかった。全部撮っといて」 って思うんですよ。 旅先や、披露宴とか、 そういうイベントは、 迷ったら撮るようにしてます。 考えてるよりシャッターを押しちゃいます。 |
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見て、「へえ」とか「わあ」とか思ったら とにかく撮っておくといいですね。 明治神宮で、結婚式に出席する 親戚の人たちの履物が玄関に並んでいて、 それだけでもパシャっと撮ると、 あとで、やっぱり、面白いんですよ。 |
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では次に、ちょっと長い質問です。 24歳の女性のかたから、 ちょっと哲学的な質問。 |
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うん。 | |||
いかがでしょう。 悩んじゃってるみたい。 |
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まず、はっきり言えるのは、 自分のカメラ買ったほうがいいですよ、 |
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はい。 | |||
自分のカメラは自分のものだから、 自分なりの使い方で使えばいいじゃないですか。 いっぱい撮りたかったら撮ればいいし。 いっぱい撮ってて変だなと思ったら、 それは変なんだろうし。 「撮らないほうがいいのかもしれないな。 今、写真なんか撮らないで 楽しんだほうがいいのかな」と思ったら 楽しめばいいし。 それで撮れなかったとしても 後悔する必要は全くないし。 撮りたい時に撮ればいいんだと思うんですよ。 |
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そうですよね。 | |||
プロの悩みの1つっていうのは、 撮りたくない時にでも 撮らなきゃいけない時があることです。 「面倒くさいな」みたいな時も、 はっきり言って、ありますよ。 でも、そうじゃなくて 楽しみでやるんであれば、 撮りたい時に撮ればいいと思うんです。 で、後で撮らなければいいって 考えてしまうかもしれないなと思った時は、 撮らなければいいんだと思うんですよ。 でも、後で、「撮っとけばよかったな」って、 思うはずなんですよ。 あるよね、そういうことって。 |
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僕は、‥‥変な話をしますけど、 友達と、一緒にご飯を食べたんです。 そのとき、久しぶりに会うしって、 このカメラ(オリンパスE-420)を 持って行ってたんですね。 わりと馴染みのレストランだし、 いつもは遠慮なく結構撮るんですけど、 なぜだか、撮らなかったんです。 一枚も。 話が楽しくて、ごはんがおいしくて、 そして、レストランで一眼レフを構えるっていうのも いくらお店の人がいいって言っても、 「ほかのお客さんに悪いな」とか思って。 いろんな要素がありましたが、 何より楽しかったんで、 気が付いたら撮ってなかったんですね。 食べて、飲んで、たくさん話して、 別れ際、握手したとき、 「あ、撮ってなかった」って思って、 でもそこで「撮らしてよ」なんていうのも、 今更妙な感じだなぁなんて思って、 そのまま別れた次の日、 そいつ、死んじゃったんですよ。 でね、それからしばらく 写真を撮る気になれなくなっちゃって。 そのことを後悔してるという気もするし、 それでよかったという気もするし。 それは、自分の中で結論が出ていないんですね。 |
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それでよかったんだと思いますよ。 いや、よかったとか悪かったとか 考えなくていいことなんじゃないかな、と。 |
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そうでしょうか。 | |||
そういうことも含めて 写真なんだと思うんですよ。 確かに写真の記録性っていうのは、 写真の魅力の中で すごく大事なことなんですよね。 だけど、歴史を紐解いてみると、 それは、ごくごく最近に生まれた 新しい機能の1つにすぎないんですよ。 報道っていうか、 ジャーナリズムという名の下に 生まれてきたもので、実は戦争っていう、 どうしようもないところから 生まれてきてるものなんですね。 で、勿論その後、写真家が、 キャパみたいなすごい人たちが、 ただの伝えるだけじゃない形に 変えていきましたけど。 記録性云々かんぬんのことばっかりが、 今は中心になってるけども、 元々は違うんですよ。 元々カメラっていうのは、 絵画のために生まれたんです。 絵描きさんが絵を描くために写真を撮って、 それを見ながら絵を描く。 それを一番わかりやすい形で 絵画にしてくれたのがモネですよね。 |
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「睡蓮」。 光を描くということですか? |
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光は動くんですよね。 時間によって変わってっちゃう。 でも絵画は、描くのに時間掛かるんですよ。 |
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見ているうちに、変わっちゃう。 | |||
そう。でも写真は、 1分、2分で撮れるじゃないですか。昔でも。 その写真を見ながらモネは、 睡蓮の池の、光を描いてくれた。 で、僕ら写真家っていうのは、 なんか今、記録性のことばっかりがいわれてるけど、 元々はそうやって始まっているから、 僕はお返ししてもいいんじゃないのと思ってるの。 |
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お返し。 | |||
モネが封じ込めた光は、 瞬間を長い時間をかけて カンバスに落としたものですよね。 そこには、その前後の時間も ちゃんと含まれているんですよ。 同じように、1枚の写真も 瞬間なんだけど、前後の時間も含まれてる。 だったら、「撮らなかった瞬間」であっても、 その前も、後も、自分の心の中に あるわけじゃないですか。 |
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まあ、個人的には、 よく覚えてることなのでいいんです。 でも、例えば、その時の様子を ご両親に見せられただろうとかね、 ちょっと思うんですよね。 |
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はぁ、なるほど。 | |||
とはいっても、いまさら、 どうしようもないことです。 話がそれちゃってごめんなさい。 この質問、だから、 「写真を撮ってるとリアルに楽しめてない気がする」 っていうのは、菅原さんから言ったら、 「あっ」っと思った時に撮ってる以上、 大丈夫なはずですよね。 |
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そうですね。 | |||
「あっ」っと思うのはあなたであって、 「あっ」っと思わずに撮ってると、 カメラのことばっかり気にしてる人に なっちゃうかもしれないけど。 |
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そう。だから、写真を撮ることが 「好きだ、好きだ」って言ってるわりには、 楽しめてないと思うよ。 |
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だから、自分のカメラを買って。 | |||
極端な言い方だけど、「もっと撮れ」。 | |||
「もっと撮れ」、おお〜。 | |||
嫌になるくらい撮れっていうことですね。 | |||
へぇ〜。 そうすると、その、 今撮るべきじゃないとかが見えてくる? |
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そうなんです。 でも、ぼくは写真を仕事にしていて いっぱい撮っているけれども いまだに写真が好きですよ(笑)。 もう嫌になるぐらいいっぱい撮ったら、 もっと楽しくなるから、 もっといっぱい撮ればいいのに。 |
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僕は一人旅をしますけど、 カメラは持って行きますね。 でもそのせいで物を見てないことはないですね。 相棒なので、一緒に旅してる相棒。 代わりに覚えてくれてるぐらいの よき相棒として連れて行くから、 後で助かりますよね、覚えててくれるから。 |
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写真が好きっていうのは、 物を見ることが好きっていうことに 繋がっていきますから。 そうすると撮るだけじゃなくて、 一生懸命物を見るようになる。 連載の中でも書いたけど、 ゆっくり物を見るっていうことが、 写真を撮るっていうことに一番繋がる。 パッパ、パッパ撮るのが写真だっていう 感覚あるじゃないですか。違うと思うの。 ゆっくり見ればいいんです。 |