原田泳幸さんと、 価値について。 「人間の価値ってお金じゃないんです」
第1回	タバコと社長。
糸井 ご無沙汰していました。
原田 いや、こちらこそ。
糸井 ぱっと見たところ、原田さん、痩せました?
原田 えぇ、10キロ痩せました。
自転車やってるんです。
糸井 へぇ、自転車。
原田 あとね、毎朝走ってます。
糸井 毎朝? どのくらいですか?
原田 いまは11キロくらいですね。
糸井 ひゃあ! 11キロ?
原田 走るのと自転車。
あと有酸素運動だけだと
脂肪といっしょに筋肉も落ちちゃうから
1年くらい筋トレもいっしょにやってます。
そのまえまで「やっちまった」っていう
太りかたをしていたんですよ。
糸井 うわぁー、それはホントにスゴイ。
原田 80キロあったのがいま、69キロですからね。
糸井 僕にはマネできないです。
原田さん、昔からコツコツやるの得意でしたもんね。
原田 いやいや、コツコツはできないですよ。
激しくガッとやるのが得意なだけです。
糸井 でも、それ、ずっと続けてるわけじゃないですか。
やめずに激しくコツコツと、を。
原田 まぁ、そうですね。
糸井 僕もね、いま体重落としてるんですよ。
原田 糸井さん、細いじゃないですか。
ダイエットしてるんですか?
糸井 朝晩体重を量ってグラフをつける、だけです。
計って、今日の行動を振り返って
「あ、食べ過ぎたな」と思ったりしたら
以後、それは食べないようにするとか。
原田 運動はしてないんですか?
糸井 腕立て伏せと腹筋は必ずしてます。
でも、そのくらいです。
やっぱり運動でカロリーを消費するっていうのは
意志が強くないと相当難しいですよ。
原田さんは意志が強くて凝り性だからね。
原田 運動は昔からずっとやってたんですけど
アップルの社長になってから
忙しくてやめてしまったんですよ。
で、ずっとそのままだったんですが、
2年前に人間ドックで脂肪肝見せられて‥‥。
糸井 あぁ、あれはイヤですよね。
原田 ホントにイヤで。
それで運動を始めて
40年吸ってたタバコもやめました。
やめて本当によかったです。
糸井さんもやめられましたよね。
糸井 僕もやめて7年くらいになりますね。
原田 僕ね、糸井さんが先にやめられたって聞いたとき
すごいショックだったんです。
「あのヘビースモーカーの糸井さんまで‥‥」って。
糸井 うんうん、おっしゃってました。
うちの事務所の喫煙室で話したの覚えてますよ。
寂しそうだった(笑)。
原田 そうそう(笑)。
で、海外でのエグゼクティブミーティングで
タバコを吸う人間が僕を含めてふたりだったんですが
もうひとりがやめちゃったんです。
糸井 いよいよ、ひとり(笑)。
原田 そうなんです。いまはもう
タバコを吸える時代じゃないんですよ。
禁煙するプレッシャーよりも
タバコを吸わなくちゃいけないという
プレッシャーのほうが
ドンドン大きくなってきて。
糸井 あぁ、わかるわかる。
原田 海外出張でそれをすごく感じました。
もう、ありとあらゆるところで
タバコを吸うプレッシャーが襲ってくるんです。
糸井 飛行機降りて「吸えるとこないか」って
喫煙所捜していたりね。
原田 会議中にトイレ行くふりして
タバコ吸いに行ったり。
スモーキングルームで仕事してたこともあります。
糸井 ビルの端っこで吸ったりとか。
原田 あまりかっこよくないですよね。
糸井 僕がタバコをやめた理由は
かっこつけてるふうに聞こえるとイヤなんだけど
すごくおおざっぱに言うと「社長になったから」。
原田 ほぉ、興味深いです。
糸井 これまではフリーでずっとやってきて、
組織との関係で生きるということができなかったんです。
でも、事務所を構えて、人を雇って、
その従業員の数もドンドン増えていったときに
社長である自分がビルの谷間とか空港の端っこのほうで
タバコを吸うっていうのはどうなんだろう、と。
原田 あぁ、わかります。
やってましたよね、そういうこと。
糸井 思い当たる節がありますよね。
原田 社長がそれじゃ、社員は悲しみますよ(笑)。
糸井 ですよね。
あ、長々と健康のことについて語っちゃった。
原田 ホントですね。
今日は「お金」の話のはず(笑)。
糸井 いやいや、社長・原田泳幸にお話をうかがううえで
これは大事な話ですよ。
社長業っていうのは
そういうことまで気を使う業務だってことですし。
原田 うん、まぁ、たしかに。

(つづきます)

2010-08-16-MON

 
次へ
次へ

 
メールをおくる
ほぼ日ホームへ