糸井 | 最後に原田さんにとってのお金の話を 聞かせていただけませんか? |
原田 | 私のですか? |
糸井 | そうです。いままでの話って、 社長としてのお話だったと思うんですが、 一個人としての意見をお願いしたいんです。 |
原田 | そうですねぇ‥‥。 少なくとも私は コツコツ貯めるようなタイプの人間じゃないですね。 ある程度お金を手にしたなら 使わないと、と思っています。 |
糸井 | じゃあ、ある程度のお金は欲しい? |
原田 | えぇ、ある程度は欲しいですね。 溜めるよりは使うほうがうれしいタイプですから。 その使い方についていうと、 たとえば、何か、ものを買うときに ほかと比較するとか、もう一度帰って考えるとか あまりそういうことしないんです。 見た瞬間に自分の尺度に合ったら、 それで決定しちゃうんです。 |
糸井 | せっかちですね(笑)。 |
原田 | そうなんです。 しかも重度の(笑)。 |
糸井 | 滞っている状態が嫌なんでしょうか。 |
原田 | そうです、そうです。 たとえば、若いときに土地を買いましてね、 そこにどんな家を建てようかと 数種類の家の見取り図のパンフレットを 見ながら、じっくり考えていたんです。 |
糸井 | うんうん。 |
原田 | そうしたら、 「ここの段差どうなっていた?」とか 「あそこの寸法にこれは入るか?」とか わかんないことがどんどん出てきてしまった。 あれこれ考えていくうちに、 もう、いてもたってもいられなくなって 夜中の1時にメジャー持って 測りに行っちゃいましたよ。 |
糸井 | 土地まで行って? |
原田 | そう。 夜中にメジャーを当てて。 |
糸井 | それはひどい(笑)。 |
原田 | もうね、そのくらいせっかち。 課題を残したり、 決定を先延ばしにするのが大嫌いなんですよ。 |
糸井 | そういう人が ファーストフードの社長をやっているってことが おもしろいですよ。 |
原田 | (笑)。 あと、私個人のお金の話でいうと、 自分の人生を振り返ってみて、 「あのとき、ああしてれば もっと多くのお金を手にしていたな」 ということが、あるんですね。 |
糸井 | あ、そういうことが。具体的に。 |
原田 | えぇ、あるんですよ。 でも、そのときにそれをやって、 もっとお金を手にしていたら、 たぶん、不幸になってたんじゃないかな、 とも思うんです。 |
糸井 | なぜでしょう? |
原田 | 人間というのは何か足りないからがんばるんです。 不満足の状態だから、知恵が出るし成長もする。 不満足こそが知恵の原点だと思います。 |
糸井 | なるほど。 じゃあ、ある意味では、 不満足が原田さんの幸せ? |
原田 | まさに、そうです。 個人だけでなく、会社も社会も、 そして地球も、 満たされすぎるっていうのは いいことじゃないんですよ。 |
糸井 | 不満足だから考えて、考えることで道が開ける。 |
原田 | そうですそうです。 |
糸井 | 原田さんは、その考えることを 走ったり筋トレしたりしてるときに やってるわけですね。 いや、こうやってお話をうかがっていると 絶えず自分の人生に負荷をかけてますよね。 |
原田 | そうかもしれません。 ある意味ちょっとクレイジーの領域かも(笑)。 |
糸井 | なかなかできることじゃないですよ。 |
原田 | それもこれも、あることに気づいてから 続けられるようになったんです。 |
糸井 | どんなことでしょう。 |
原田 | 例として、10回ベンチプレスをしたとします。 10回やったらもう限界なんですよ。 その「もう限界」っていうときに トレーナーは「あと1回」って言う。 「もうできない」っていう状態だから それは無理なんですよ。 |
糸井 | うんうん。 |
原田 | でも、軽く10回やってたのでは トレーニングになりません。 本当のトレーニングというのは、 その無理という状態から、 あと1回やることなんです。 その1回やるために それまでの10回は存在するんです。 |
糸井 | ‥‥なるほど。 |
原田 | 私はそこに気づいたから 1日も休まないし、続けています。 そうじゃないと意味がないんですよ。 |
糸井 | それって、原田さんの エンジニアとしての特性を 象徴しているような気がします。 考えて、見つけた答えを徹底的にやるっていう。 |
原田 | あぁ、言われてみれば そうかもしれませんね(笑)。 |
糸井 | いやぁ、今日はいい話を たくさん聞きました。 どうもありがとうございました。 |
原田 | いえいえ、こちらこそ楽しかったです。 ありがとうございました。 |
糸井 | ありがとうございました。 |
(これで原田さんのお話は終わりです。 最後まで読んでいただきまして ありがとうございました!) |