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石巻で長岡の花火が上がる?
長岡まつり実行委員長にうかがいました。
花火アナウンサー・小林真弓さんへの
インタビューが終わってから、
今回もたいへんお世話になっている
長岡まつり協議会の実行委員長、
藤井芳(かおる)さんにお話をうかがいました。
まずは基本的な質問から。
東日本大震災が起きた今年、
どういう体制で「長岡まつり」は行われるのですか? |
藤井 |
やはりあれだけの震災でしたから、
まず全国的に「自粛」という動きがありました。
いくつかの花火大会が、
それぞれのやむをえない事情で
大会中止を決定しています。
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─── |
そのようですね。
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藤井 |
長岡でも、中止にしようという声があったんです。
「花火大会なんかやめて、
その分のお金を義援金に回したほうがいい」
という投書やお電話が観光課に届きました。
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─── |
そうだったんですか。
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藤井 |
ですから「長岡まつり」の話し合いは、
「今年はやめるべきなんじゃないか」
というところから始まったんです。
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─── |
中止にする、というムードから。
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藤井 |
ええ。
でも、よくよく考えればわかることなんですが、
お祭りをやめても
その分を義援金に回すことはできないんです。
そもそも、
長岡の花火大会が何で成り立っているかというと、
市民のみなさんからの協賛金と、
有料観覧席のチケット収入がほとんどなんです。
つまり、花火を上げなければ
当然そのお金は入ってきません。
義援金どころの話ではなくなるんですよ。
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─── |
なるほど。
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藤井 |
そうした話し合いを重ねるうちに、
ようやく「自粛しちゃいけないんじゃないか」
という機運が出てきました。
ある日の大きな会議で、
私が「やりましょう」と提案しましたら、
出席していた県知事が、
長岡まつりを含めて新潟県内のイベントの開催を
宣言してくれたんです。
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─── |
ああ‥‥よかったです。
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藤井 |
ですからまずなによりも、
「長岡まつりを行える」というのが、
私たちにとっていちばん大きいことですね。
それともうひとつ、大きなことがあります。
宮城県石巻市の「川開き祭り」。
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─── |
そのお話はすこしだけうかがっていて、
とても気になっていました。
石巻の花火大会に協力するということでしょうか?
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藤井 |
そうですね。
東北地方で言うと、
秋田県大曲、山形県鶴岡、
それらと肩を並べて大きいのが、
石巻の花火大会です。
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─── |
はい。
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藤井 |
その3つの花火大会のほかに、
私たち長岡や、茨城県土浦など
ぜんぶで11の団体が加盟する
「全国花火サミット」という組織があります。
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─── |
花火大会のサミットがあるんですね。
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藤井 |
その組織で連絡を取り合っていましたら、
石巻さんから「花火を上げたい」
という声が聞こえてきたんですよ。
「こじんまりでいいから復興への一里塚にしたい。
みんなの元気が出るように花火を上げたい」と。
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─── |
‥‥応援したいですよね。
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藤井 |
そのことを市長に報告しましたらすぐに、
「全面協力しましょう」という返事がありました。
そんな市長の英断もあって、
ある程度のお金をかけ
石巻の花火を応援することになったわけです。
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─── |
なるほど。
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藤井 |
で、上げる花火はフェニックスです。
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─── |
え? フェニックス?!
石巻でフェニックスが上がるんですか。
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藤井 |
はい。
復興祈願花火、フェニックスを上げます。
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─── |
‥‥すごい!
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藤井 |
会場の都合などで、
打ち上げ巾は最大でも130メートルくらいで
4号玉までしか上げられないんですが。
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─── |
それでもすごいです。
曲も『ジュピター』が流れて?
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藤井 |
それがひとつの問題になってまして‥‥。
つまり、現地の放送設備は
どれだけ使えるかわからない状態なんです。
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─── |
あ‥‥そうか、そうですよね。
じゃあ、『ジュピター』は無理かもしれない。
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藤井 |
いや、そこで先日、実際に石巻に行って、
私の方から提案してきたことがあるんです。
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─── |
どういうご提案を?
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藤井 |
「コミニティFMはありますか?」
と質問してみましたら、
「あります」とおっしゃるんですね。
「そのコミュニティFMを、
放送設備がわりに使ったらどうですか?」と。
そうすれば花火の紹介もできるし、音楽も流せる。
で、お客さんには、
「FMラジオを持ってきてください」
とご案内をしておく。
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─── |
お客さんが自分で放送設備を
持ってきちゃえばいいっていうことですね。
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藤井 |
そう、ちいさいラジオでもいいわけですよ。
それで『ジュピター』を聞けます。
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─── |
すごい! それはいいアイデアですね!
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藤井 |
ただ、放送設備の設営が
できなかった場合のアイデアですので、
当日どうなるかは未定なんですよ。
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─── |
いやぁ、それにしてもすばらしいです。
応援するための、そのお金は、
具体的にはどうやって準備を‥‥?
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藤井 |
募金を呼びかけています。
長岡で大きな花火を打ち上げてる
スポンサーたちに集まっていただいて、
事情を説明して、協力をお願いしました。
「みなさんがくださる長岡花火への協賛金、
その協賛金にプラス1パーセント、
上乗せしてくださいませんか」
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─── |
1パーセント。
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藤井 |
目安として、1パーセント。
「100万円の花火を上げてる方だったら、
今年は101万円をいただけませんか?」
という話をしたんです。
そしたら、もうその会議の中で、
「1パーセントでいいの?」
「1割くらい出してもいいぞ」
とまで言ってくれた方もいまして‥‥。
いやぁ、感動しました。
長岡人、熱いなぁと。
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─── |
1パーセントからの協力、すばらしいです。
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藤井 |
さきほどお話ししたサミットの中にも、
石巻の花火を支援する団体がいくつかあるんです。
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─── |
そのつながりもすばらしいと思います。
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藤井 |
それと、石巻さんの方から
「地元の花火師さんを使ってほしい」
というお願いがあったんです。
東北の花火大会はほとんど中止になってますから
向こうの花火師さんも大変なわけですよ。
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─── |
長岡からお金を支援して、
向こうの花火師さんに
仕事をしていただくということですね。
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藤井 |
そういうことです。
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─── |
はぁー。
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藤井 |
ことしの長岡まつりのキャッチフレーズは、
「今こそ届けよう! 感謝と勇気!」です。
中越大震災のときに
全国からいただいた協力に「感謝」しながら、
今回は私たちが被災地のみなさんに
「勇気」を届けよう! というコンセプトです。
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─── |
はい。
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藤井 |
花火は、それだけの力を持ってると思います。
そもそもは江戸の時代、
8代将軍吉宗が享保の大飢饉で亡くなった人を
弔うために打上げたのが、
隅田川花火のはじまりなんです。
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─── |
鎮魂ですね。
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藤井 |
そう、日本の花火というのは、
夜空に手向ける献花だと、私は思っています。
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─── |
献花‥‥。
まさに、花火ですね。
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藤井 |
‥‥ですから、
石巻さんに、ひとつお願いをしてるんです。
「長岡の支援で打ち上げる花火、
その後半は、慰霊の意味を込めて、
白一色の花火にしてください」と。
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─── |
‥‥その花火、現地で見ることにしました。
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藤井 |
石巻に行かれるんですか?
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──── |
はい。
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藤井 |
でも、石巻の花火は8月1日の夜ですよ?
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──── |
ええ。
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藤井 |
8月2日と3日は、
長岡から中継をされるんですよね?
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─── |
ですから、3夜連続で。
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藤井 |
えー、それはたいへんだ。
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─── |
3夜連続で、フェニックスをお届けしたいので。
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藤井 |
そうですか。
いや、すごいですね、がんばってください。
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─── |
はい。
たのしんで中継します!
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藤井 |
ありがとうございます。
暑いと思いますので、気をつけてくださいね。 |
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(いよいよ本番、中継の日につづきます!) |