社会で指揮をとっている社長たちから、じかに学ぶ連載。
第3弾はCulture Convenience Club の増田宗昭さんが登場!
Culture Convenience Club は、TSUTAYA事業の、
おおもとを担う会社、というと、わかりやすいかもしれません。


 


社員六〇〇人に
新人三〇〇人を
入れてしまったわけですが、
そうすると、既存の社員は、
なぜか偉そうぶって、
若い子を連れてメシを食いにいくとか……
「なんだ? この会社は?」と。

(笑)
「これじゃ、イヤな会社じゃないか」
と気づいたんですか。わかるわ……。

そしてその時、
ぼくは、
ディレクTVで死んでいたんです。

うわぁ!
そこは、ものすごくキツイ時代ですね。
話としてはおもしろいんですけど(笑)。

まぁ、そんなことをやっていましたが、
それも、結果としてはいいことでした。
今、うちの社員は
一五〇〇人ぐらいいるのですが、
そのCCCの中間管理職の
コアを形成している人は
その三〇〇人のうちの、
残っている社員ですからね。

かつて中間管理職には
「×」や「△」が
多かったといいましたよね。

ほとんどのベンチャー企業は
そんなもんだと思うんです。

しかし「×」や「△」ばかりのところに
三〇〇人が入る……
まだ経験がなくて
なにもできない人が
ぞろぞろとやってきたけど、
その人たちは優秀だから、
放ったらかしにされても
自律的に育っていくんです。

つまり、増田さんが
真っ白になって
放っといたぶんがよかった……
永田農法だ!

これも戦略が時間が経つと生きた例です。

あそこで三〇〇人を採ったことが
今日のCCCの成長を
支えているんだと思います。
いま、うちの社員は
千五百人ぐらいいるんですけど、
そのコア層を形成してくれました。

つまり、
森ごと作ったんですよね、
生きものを育てるために。

おもしろいなぁ

これからを考えたいま、
同じことをすべきだと思うんです。
「いま、新卒採用したら
 何人きてくれるんだ?」
という時に、
中味が古くてはいけないですから。

やっぱりなにかの
しかけをしようと思っています。
たとえば「場所」という点でいえば、
情報にいちばん触れることが
必要なのだから、
お客さんのいるところや、
競合店を見られるところで
仕事をするべきでしょう?

企画を生むには
世界中のアイデアを集めた本が要るでしょう?
それを満たすオフィスを
いまは考えている最中なんです。

借金も払いおえて、
いまは、すごく気持ちよく
プランを練ってる時期なんですね。

ほんとうは、
ディレクTVで失敗した時に
休まなきゃいけなかったんです。
でも渋谷の店もあるし上場もあるし、
休めませんでした。

上場したら休もうとは
思っていたんですが、
ぼくがディレクTVにいっていた間に
CCCのほうがいろいろ痛んでいて……
それを見るにつけて「これはあかん」と
自分で入っていきました。

だからノンストップです。

いま、増田さんがスーツを着ているのは、
「CCCが痛んでいた時期」
となにか関係があるんですか?

それを言うと
恥ずかしいんですけど……
CCCで働いてる人のお給料の多くは、
TSUTAYAをやってもらっている
加盟企業さんからもらっているわけです。

ロイヤリティビジネスの
契約のしくみがあるから、
極端な話、ここにいる
一五〇〇人の社員が毎日何もしなくても
ものすごいお金が入ってきます。

もちろんがんばったら
さらにいろんなことができますけど、
がんばらなくてもお金が入るとなると、
人はどうしても何もしなくなるじゃない?
その社内の空気に気づきました。

会社の規模がさらに大きくなって、
下降曲線に入っていると気がついたわけです。
二〇〇三年の六月でした。
「マネジメントシステムを
 変えなければいけない」と思いました。

二〇〇三年には一部上場をしたわけです。

本来、
ふつうの創業オーナーとしては
もうそれで「あがり」じゃないですか。

だけど、一部上場をした二か月後、
ぼくは現場の本部長に降りたんです。

CCCのお客さんである
加盟企業さんに、ちゃんとした
サービスができていなかった、
と気づいたわけですから。

責任をとる形で現場に降りて、
「お客さんによろこんでもらえるまでは、
 日経新聞を読まない。
 ネクタイを絶対にする」と決めました。

その決意の「ネクタイ」なんですね。

それまでは
どんなに偉い人に会うのもカジュアルでした。
企画会社として相手を
もうけさせている自信がありましたから。

だからそうではないと気づいたら
ネクタイをしめて初心にかえるわけです。
日経新聞については
もともとぼくは情報は
なるべく集めるスタイルを持っていて
毎日読んでいましたが、
今はキョロキョロとよそみをしないで、
お客さんを見ようと……。

そういうこともありまして、
二〇〇三年からの二年で、
既存店の前年比の売りあげが
一割ぐらいあがりました。

すごく納得しました。
世間で語られる情報論って、
「説得」はされるんですけど
「納得」はできないんです……。

アイデアの最後のジャンプは
知りすぎないことだと
思っているところもありまして、
だから「日経を読むのをやめる」は、
いいなぁと思いました。

「日経新聞を読まない。
 ネクタイをしめる。
 経済団体の集まりにはいかない。
 ゴルフをしない」

と、当時、四つ決めたんです。

そこに加えて
「頭の悪い人と会う」
というのを入れたらいいですよね。

たぶん、頭のいいグループで、
頭のいい行動を取っているだけだと
なにかが狂うと思うんです。

「いちばん知っている人に
 なったからといってなんだというんだ?」
というのは、
あちこちの賢いぶっている争いにたいして、
ぼくがいいたいことなんです。

はい。

大企業病としてよくあるんですが、
そこまでいくと
仕事が働いてる人の
知的満足になってしまうんです。

「たくさんいろんなことを知りたい」
という気持ちはこちらのエゴなんですよね。
知的満足は、
お客さんの満足ではありません。

頭のいい人は、
みんなとにかく知りたがりますけど、
原点はやはり
「お客さんになにができるか」ですから。

知的満足より、
お客さんをびっくりさせるほうが
たのしいですから。

そういう意味では
TSUTAYAのハチ公前の出店は、
外側に突きでている愉快さがありましたよね。

最近のぼくにとっては、
六本木のお店がおおきいんです。

なるほどなぁ。
渋谷のお店と六本木のお店は
笑いが出ましたよね。
あの二店だけでも、
どんな広告効果や噂話よりも
TSUTAYAを知りたくなりますから。

今日はほんとに、
おいそがしいなか、
ありがとうございました。
ものすごくおもしろかったです。

……え、こんなんでいいの?
記事になるんですか?

なります。
これをこのままだせるのが
「ほぼ日」の良さなんで……。

起承転結に、
ぜんぜんなってないと思うけど(笑)。

起承転結が必要だっていうのは幻想ですから。

ああ、そうか。
「おもしろけりゃいい」と。

ほんとにおもしろかったです。
また、おたがいに
パクリあう時間を作らせてください。
こちらからもできるだけ
与えられるようにがんばります。。

情報は、認知した瞬間に
その人のものになって、
なおかつ体は軽くなる……
夢をシェアできると元気が出るんですよね。
モノは、食えば食うほど
重くなるんだけど(笑)

おわります。ご愛読ありがとうございました!
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2005-04-12-TUE