オトナな会話(仮)
さくらももこ×糸井重里の対談です。

その10
こどものままで、おとなをやろう。

糸井 そもそもは、
それは、本を読んだことなんだね?
さくら 本を読んで、行きたいなと思って。
もっと楽しいんだと思ったんですよ。
糸井 火を熾(おこ)すみたいなことかな。
さくら 火熾しもやったんですけど、
火を熾す機械とか作るのも辛くて。
糸井 寒いから?
さくら 寒いし、火なんてぜんぜん
熾らないんですよ、
ちょっとやそっとじゃ。
糸井 あの、こすり合わせるやつでしょ?
さくら こすり合わせるやつですよ。
紐みたいなものを使って
ピュッてやるんですけど、
紐からもうワラみたいなので、編んで。
嫌でしょう? そんな(笑)。
しかも、火をつけることができた人はね、
頑丈な、いかにもサバイバルな人。
サバイバルナイフいつも持ってるみたいな、
ほら、そういう感じの人(笑)。
そういう人ですら火がつくと嬉しくて、
「ワォ!」とか言ってるの。
私なんかやったって、
火がつくわけないじゃないですか。
糸井 っていうことは、昔の人の火は、
すごい貴重だったんだね。
結局そのスクールの生徒って、
自分がサバイバルするっていうこと以上に、
人が喜んでくれるっていうのが
嬉しいんじゃないかね。
つまり、そいつが、
一緒に遭難した仲間にいたら、
すっごい喜ばれるじゃないですか。
そういう実用的な感じじゃあ、ない?
さくら いやぁ‥‥。
なんなんだろう?
糸井 座禅?
さくら たぶんそっちの方向に
近いもんなんだと思うんですよ。
精神的なものだと思いますね。
そのグランドファーザーは、
水とか石とか、
そういうことについての意味を、
自分の命がけで、理解するんですよ。
糸井 いいじゃなーい!
さくら それ、ちょっと糸井さん、
その本読んでみたらいいよ。
ほんっとすごいよ。
私の、今まで読んだ本の中では、
かなりすごい。
糸井 魂を揺さぶられる?
さくら うん、揺さぶられちゃったんだよ!
いや、もう、下手に
揺さぶられるもんじゃないですよね、
ほんと。
糸井 やっぱりさ、人間は、
大したことないもんだっていう
認識を持った上で、
飛びつくべきですよね。
あのね、“それしかない”って場所に
放り込まれるのは、おかしいよね。
だって、簡単に言ってだよ、
なんで刑務所に行くことが
辛いかっていったら、
「それしかない」からだよ。
だって、寒くないでしょ?
メシ、毎日もらえるでしょ。
読めっていったら本もあるでしょ。
仕事もできるでしょ?
なのに刑務所が刑だっていうのは、
「それしかない」っていうことなんだよ。
さくら 選択の余地ない(笑)。
糸井 人間にとっていちばんいけないのは、
「それしかない」っていうことですよ(笑)。
さくら そうですね(笑)。だから、
お金って選択権なんですよね。
糸井 そうそうそう。
だから、お釈迦様はすごいんですよ。
大金持ちの家に生まれながら、
けっきょく木の下で座禅を組むっていう、
そのとんでもない、
誰でもできることをあえてして、
振り幅を表現してるわけですよね。
さくら 選択したんですよね。
糸井 うん、選択した。
で、選択した場合にはいいんです。
SMクラブに行って、
鞭打たれるのも、
選択したんだからいいんです。
さくら いいですよね、選択したんだから。
糸井 止めないでくれ!
‥‥それを味わうために、
いろいろ苦労してるわな。
さくら 苦労してますよね。
それしかないってことに
なっちゃうときあるんですよね、
旅に行くと。
糸井 いや、日常でもありますよ。
多分にありますよ(笑)。
そんな場所に立たされることがね。
それを一般には「おとな」とか、
言われるんですけどね。
おとなにならずにおとなになる方法を、
ずっと僕、模索しながら
この歳になっちゃったんですけど(笑)。
さくら はははははははははは。
でも、私もそうなんですよ、
おとなになったとかって
気がないですからね、なんにも。
糸井 でも、できてるじゃないですか、
一応、なんとか。
さくら なんとか‥‥。
糸井 人も喜ばせてるし。
さくら そんなのって、
おとなのすることですかね?(笑)
糸井 いや、いや、だからさぁ、
苦労を買って出てるとかっていうところに
おとなを置いちゃダメですよ。
さくら そうなんですよ。
糸井 おとなはね、こう、なんていうんだろう、
より木の実を採ってきたりね、
より、こう、イノシシをぶったりね。
さくら イノシシをぶつ(笑)。
糸井 子どもの中でいちばんそれができる、
っていうのがおとなだと思うんですよ。
ちぎって、分けて、俺は最後でいいから、
みたいな。そういうことは、
俺、やれてるんですよ、けっこう。
さくら あー、そうかもしれないですね。うん。
糸井 それは、子どものままでもできますよ。
さくら ははははははははは、そうですよね。
そうだ、そうだ。

というところで今週はおしまい。
来週もたっぷり喋るよー!
おたのしみに!
2005-05-20-FRI
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