「ほぼ日」から生まれたロングセラー、
『オトナ語の謎。』と『言いまつがい』が
新潮社より文庫本として生まれ変わることになりました!
全国の本屋さんの棚に、もう並んでいるはずですよ。
その制作過程で知った、新潮文庫のささやかな秘密を
新潮社の編集者Mさんにお願いして
短期連載していただくことになりました。
ブドウマークが何種類もあるなんて、知ってた?
新潮文庫でいちばん売れてる本ってなに?
あなたのお手元にある新潮文庫、
けっこう秘密があるんですよ。

『海馬』『オトナ語の謎。』『言いまつがい』
新潮文庫より絶賛発売中!
最終回 栄光のベスト&ロングへ



しばらく残暑がつづいていましたが、
暦の上では秋分の日もすぎました。
つまり、「読書の秋」到来!
というわけです。

この連載が始まったのは、
まだ春のことでしたが、
連載と同時に新潮文庫版が刊行された
『オトナ語の謎。』と『言いまつがい』
さらに続いて『海馬』がありましたね。
現在それぞれ、
6刷累計8万2千部、
6刷累計6万2千部、
5刷累計7万2千部、
「ベスト&ロングセラー」へ向かって
快調に読者を増やしています。
皆さん、応援ありがとうございます。

さて、読書の秋には
名作もぴったりですよ。
この連載も今回で最終回を迎えますが、
応援いただいた皆さんへのお礼に、
新潮文庫のベストセラーランキング
を大公開します。

あらかじめおことわり申し上げますが、
本の価値、文学の評価は
もちろん部数で決まるものではありません
部数だの売り上げだのというと、
ちょっと世知辛くもあります。
でも、本がたくさん売れたということは、
幅広い読者に読まれ、愛された
という証でもあるのです。
また、ベストセラーの多くは、
長年にわたって読みつがれて
ロングセラーにもなることがしばしばです。
そして、そうした作品に
素晴らしい名作が多いのも一方の真実でしょう。

自慢になってしまいますが、
古今東西の良書を廉価で
90年にわたって提供してきた新潮文庫では、
ベスト&ロングセラーが目白押しなのです。

それではいきなり
ベスト1から発表です
ちょっと予想して見て下さい。
(※以下の数字は、戦後(第4期)からの集計で、
  平成17年8月現在のものです)

「当たった!」
という方もかなりいると思いますが、
栄えあるベスト1は、
夏目漱石の『こころ』です



(なんと現在151刷!)

続いて、ベスト2
太宰治の『人間失格』



(こちらは155刷! 刷数ではNo.1)

両者とも、
新潮文庫版の刊行は昭和27年で、
現在累計600万部超の
超ロング&ベストセラーです。

この二冊のトップ争いは烈しく、
ランキングの1、2位が
しばしば入れ替わってきました。
近年では、大まかにいうと
80年代は『人間失格』がややリード、
90年代からは『こころ』が優勢を保っています。
しかし、最近はまた『人間失格』が
その差を詰めていて、
いまだにデッドヒートが続いているのです。

この二冊に100万部の差で続く
不動の第3位は、
現代海外文学の名作です。
これはちょっと予想が難しいかも‥‥。

答えは、
ヘミングウェイの『老人と海』
(昭和41年刊)でした。
続く第4位以下は次の通り。
第4位 武者小路実篤『友情』(昭和22年刊)
第5位 カミュ『異邦人』(昭和38年刊刊)
第6位 夏目漱石『坊ちゃん』(昭和25年刊)
第7位 島崎藤村『破戒』(昭和29年刊)
第8位 サガン『悲しみよ こんにちは』(昭和30年刊)
第9位 川端康成『雪国』(昭和22年刊)
第10位 太宰治『斜陽』(昭和25年刊)
(第10位までの作品は、すべて累計400万部を突破!)

皆さんには、ナットクの順位でしたか。
日本の文学作品だけでなく、
海外の現代文学作品も負けていませんね。
ベスト100まで見ても、
その5分の1を海外作品が占めています。
古今東西の「西」にも強いのが
新潮文庫の特徴です。

ここまでは、
宣伝冊子などでも
折りにふれて公開しているデータですが、
続いて30位までを
大サービスで公開です。

第11位 三島由紀夫『潮騒』
第12位 川端康成『伊豆の踊り子』
第13位 三島由紀夫『金閣寺』
第14位 三浦綾子『塩狩峠』
第15位 カフカ『変身』
第16位 ヘッセ『車輪の下』
第17位 井伏鱒二『黒い雨』
第18位 松本清張『点と線』
第19位 井上靖『あすなろ物語』
第20位 夏目漱石『三四郎』

第21位 高村光太郎『智恵子抄』
第22位 モンゴメリ『赤毛のアン』
第23位 芥川龍之介『羅生門・鼻』
第24位 竹山道雄『ビルマの竪琴』
第25位 伊藤左千夫『野菊の墓』
第26位 三島由紀夫『仮面の告白』
第27位 芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』
第28位 谷崎潤一郎『痴人の愛』
第29位 夏目漱石『それから』
第30位 夏目漱石『草枕』


どうでしたか。
まさしくロング&ベスト。
感動の名作ばかりです。 
とくに、漱石、太宰、芥川、三島、川端の作品が、
ベスト30までに複数入っているのは、
さすが「文豪」といったところでしょうか

この五作家の人気作品ベスト5をそれぞれ上げると、
漱石は、上記でも分かるように、
(1)『こころ』
(2)『坊ちゃん』
(3)『三四郎』
(4)『それから』
(5)『草枕』
の順
(これに(6)『吾輩は猫である』(7)『門』‥‥と続きます)。
太宰は、
(1)『人間失格』
(2)『斜陽』
(3)『走れメロス』
(4)『晩年』
(5)『津軽』

芥川は、
(1)『羅生門・鼻』
(2)『蜘蛛の糸・杜子春』
(3)『地獄変・偸盗』
(4)『河童・或阿呆の一生』
(5)『朱儒の言葉・西方の人』

三島は、
(1)『潮騒』
(2)『金閣寺』
(3)『仮面の告白』
(4)『永すぎた春』
(5)『愛の渇き』

川端は、
(1)『雪国』
(2)『伊豆の踊り子』
(3)『古都』
(4)『山の音』
(5)『女であること』


いずれも、傑作であることに説明はいらないでしょう。
三島作品、川端作品の人気順位には、
映画化の影響もあったようです。
以上の25作品は、そのほとんどが
ミリオンセラー入りしています。

そういえば、
この「ミリオンセラー」(=100万部達成)
という言い方も、
本の勲章になっていますね。

新潮文庫には、
累計100万部超を達成した文庫が、
約200タイトルあります。
(※巻数ものは、1巻あたりの平均部数。
  全巻累計の合計部数ならば、
  そのタイトル数は300近くになります)

その中に入るのは、
いまや「古典」として読まれている
漱石や太宰などの作品ばかりでなく、
大江健三郎さんの『死者の奢り・飼育』など、
現代作家の純文学作品も数多くあります。
エンターテインメント系では、
『点と線』が18位だった松本清張さんの他、
司馬遼太郎さん、池波正太郎さん、
山本周五郎さん、赤川次郎さん
などの
作品が複数、ミリオンセラーになっています。

特に人気の高い清張さん、司馬さんの
人気ベスト5をそれぞれ上げると、
松本清張さんは、
(1)『点と線』
(2)『砂の器』
(3)『ゼロの焦点』
(4)『張り込み』
(5)『眼の壁』




司馬遼太郎さんは、
(1)『燃えよ剣』
(2)『梟の城』
(3)『項羽と劉邦』
(4)『関ヶ原』
(5)『国取り物語』




この合わせて10作品は、
もちろんすべてが100万部を軽く突破しています。
(※先にお断りしたように、上記の数字は
  各巻の平均部数をもとにしているので、
  全4巻の『国盗り物語』は、
  合計部数であれば、500万部!を超えます)

司馬作品の人気ナンバー1は、
ここ数年は『梟の城』でした。
もともと『燃えよ剣』も大人気作ですが、
昨年は、ほぼ日読者の皆さんも熱狂した
新撰組ブームがあったため、
ちょっと順位変動があったのです。

つまり、長年の積み重ねが
ランキングに反映しているのですが、
現在の読者の皆さんの好みも重要なのです。
新潮文庫のラインナップには、
その作品の発表時期とは関係なく、
現代的な価値と力を持った作品、
今でも生命力を持った作品、
が揃えられています。

また、累計部数のランキングなどでは、
古くから新潮文庫に収録されている
作品が有利になるのですが、
平成に入ってから
新潮文庫に収録された作品でも
ミリオンを達成した文庫があります。
それは、
真保裕一さんの『ホワイトアウト』
トマス・ハリスさんの『羊たちの沈黙』
テリー・ケイさんの『白い犬とワルツを』

など、大きな話題となった作品ばかり。
そして、宮部みゆきさんの作品は、
『火車』
『魔術はささやく』
『レベル7』
『龍は眠る』と、
なんと四作も! ミリオンセラー入りしています




(誰でも知っている平成のベスト&ロングNo.1)

明治・大正に活躍した漱石や芥川。
終戦前後に燦然と輝いた太宰。
60年代、70年代の日本文学をリードした
三島、川端。
そうした文豪たちの作品と、
現在大活躍中の宮部さんや真保さんの作品が、
(もちろん、ほぼ日作品も!)
同じように書店で手にとっていただけて、
読者の皆さんに安価で提供できる。
これは新潮文庫が、
一番誇りとしているところです。

今後も、新潮文庫に御期待下さい。
また、機会があったらお会いしましょう。


文庫「海馬」 『海馬―脳は疲れない 』(新潮文庫)
著:池谷裕二・糸井重里
定価:620円(税込)
ISBN:4-10-118314-7
ご購入はこちらからどうぞ。
文庫「オトナ語の謎。」 『オトナ語の謎。』(新潮文庫)
監修:糸井重里
編 :ほぼ日刊イトイ新聞
定価:580円(税込)
ISBN:4-10-118312-0
ご購入はこちらからどうぞ。
文庫「言いまつがい」 『言いまつがい』(新潮文庫)
監修:糸井重里
編 :ほぼ日刊イトイ新聞
定価:540円(税込)
ISBN:4-10-118313-9
ご購入はこちらからどうぞ。

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