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いよいよ夏本番です。
夏と聞いて思い出しませんか?
夏休みの読書感想文の宿題。
最初は課題図書などを
いやいやながら読むのだけど、
大きくなるにつれて、
「何を読もうかな?」
と自分で好きな本を選ぶようになるんですよね。
そんなあなたが
向かった本屋さんには、
「新潮文庫の100冊」
が並んでいませんでしたか?
と、今回も我田引水ですみません。
さて、
「新潮文庫の100冊」フェアが
始まったのは、
昭和51年(1976)の夏からでした。
つまり今年で30年目です。
「そんなに昔でもないんだな」
と思われたかもしれませんが、
そもそも昭和40年代までは
書店店頭での文庫フェア自体が
まだ一般的ではなかったのです。
それ以前の新潮文庫では、
100冊フェアの原型とも言える
「ベスト100」
というキャンペーンを行ってはいましたが、
これは書店での展開ではなく
教科書にも載っている新潮文庫収録作品を
紹介する小冊子を中学校や高校へ配り、
クイズ懸賞付の新聞広告なども出して
読書を中高生に推奨するための
キャンペーンでした。
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しかし、
昭和50年代に入って
文庫の読者層が厚くなってくると
文庫にも広告の時代がやってきます。
新潮文庫では、
昭和51年3月の
「松本清張の世界」フェアがその先駆けです。
清張ミステリーの文庫が
幅広く読者を獲得していった時代で、
このフェアは大成功しました。
そして、
この成功を受けて同じ年の夏から
現在に比べれば小規模ながら
「新潮文庫の100冊」
が始まったのです。
翌年の100冊フェアでは、
ヘミングウェイの顔写真に
「本はいつでも読めると思うのはまちがいだ」
というコピーがあしらわれ
やや規模も拡大しましたが、
本格的な大広告キャンペーンが
始まるのは翌53年からです。
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昭和53年のフェアは、
ある女優さんをイメージキャラクターに
書店店頭はもちろんのこと
テレビCMを始め新聞、雑誌で
大宣伝が展開されました。
女優さんが誰だか分かりますか。
年配の方なら
「知性って、すぐ眠りたがるから、若いうちよ。」
というコピーで思い出すかもしれませんね。
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そう。
桃井かおりさんです。
一躍「新潮文庫の100冊」が
世の中で認知され、
以後、100冊フェアは
出版業界最大のフェアへと
成長していくのです。
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続けて各年の
メインコピーを並べてみました。
皆さんには
これをきっかけに、
読書に目覚めた夏を
思い出していただければ幸いです。
昭和54年(1979年)
「この本読み切れば、小麦色。」
(イメージキャラクター:桃井かおりさん)
昭和55年(1980年)
「バイバイ、3冊坊主くん。」
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※写真のコピーは別バージョンのものです。
(イメージキャラクター:岸本加世子さん)
昭和56年(1981年)
「ひとりになったら本を読む。」
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(イメージキャラクター:坂本龍一さん)
昭和57年(1982年)
「坂本くん、大きなことをやろうじゃないか。」
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(イメージキャラクター:坂本龍一さん)
昭和58年(1983年)
「やる時は、やります。読む時は、読みます。」
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(イメージキャラクター:江川卓さん)
昭和58年までの100冊フェアでは、
アートディレクター、コピーライター、カメラマンなど
制作チームは毎回変わりましたが、
(例えば53年のキャンペーンは、
デザイン・小西啓介さん、コピー・仲畑貴志さん、
カメラ・加納典明さん。
54年はデザイン、コピーが博報堂、
カメラが立木義浩さんでした)
昭和59年の
「100冊ぜんぶ読むと、
とんでもないことになると思う」から、
ある気鋭のクリエイターが
新潮文庫全体の宣伝をプロデュースしていきます。
皆さんには言わずと知れた
ダーリンこと糸井重里さんです。
昭和59年の100冊フェア用の小冊子に、
糸井さんの巻頭言が載っていました。
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(イメージキャラクター:井上陽水さん)
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クリックすると大きな画像が見られます。
そうです。
読書は本当にとんでもない影響があって、
しかも追加料金のいらない
素敵なものなのです。
ちなみに、
今年の100冊は、
総額5万2682円(本体価格)になります。
(近年は長編ミステリーなど
ボリュームのある書目が増えていますし、
20年前との物価の差を勘案すれば、
値段はむしろ下がっているかと‥‥。
努力してます!)
そうそう。
新潮文庫の枕コトバとも言えた
「想像力と数百円」も
同じく昭和59年に
糸井さんが生み出したものです。
では、
あらためて一覧を続けます。
(つまり、以下は平成8年まで
すべて糸井さんのコピーです)
昭和60年(1985年)
「インテリげんちゃんの、夏やすみ。」
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(イメージキャラクター:小林薫さん)
昭和61年(1986年)
「拳骨で読め。乳房で読め。」
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(イメージキャラクター:緒形拳さん)
昭和62年(1987年)
「僕は、夏の赤ん坊です。」
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(イメージキャラクター:陣内孝則さん)
年昭和63年(1988年)
「とーちゃんも、夏、読んだ。」
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(イメージキャラクター:陣内孝則さん)
平成元年(1989年)
「少年少女をやめた夏」
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(イメージキャラクター:陣内孝則さん)
平成2年(1990年)
「ボクハ読ムノガ遅イ人。」
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(イメージキャラクター:アシカ)
平成3年(1991年)
「朝顔と百頁。蝉と五十頁。蛙の声で百頁。」
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(イメージキャラクター:宮沢りえさん)
平成4年(1992年)
「十年後の夏、また泣いた。」
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(イメージキャラクター:宮沢りえさん)
平成5年(1993年)
「青空は、史上最大の読書灯である。」
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(イメージキャラクター:永瀬正敏さん)
平成6年(1994年)
「夏の頭は感じやすい。」
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(イメージキャラクター:永瀬正敏さん)
平成7年(1995年)
「パンツいっちょで、文学三昧。」
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(イメージキャラクター:永瀬正敏さん)
平成8年(1996年)
「『ワタシヲ、読ンデ』、その本は言った。」
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(イメージキャラクター:小泉今日子さん)
どうでしたか?
夏の思い出は甦りましたか?
「あの文庫を買ったときに
りえちゃんのポスターが貼ってあった!」
とか、
「本屋さんで表紙が
永瀬さんの小冊子を貰った!」
といったご記憶もおありでは?
皆さん
今年も是非、
文庫でも
夏の思い出をつくって下さい。
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『海馬―脳は疲れない 』(新潮文庫)
著:池谷裕二・糸井重里
定価:620円(税込)
ISBN:4-10-118314-7
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『オトナ語の謎。』(新潮文庫)
監修:糸井重里
編 :ほぼ日刊イトイ新聞
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編 :ほぼ日刊イトイ新聞
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