第12回で、
足元が三角形をしているわけを話しましたが、
このタワー、実は、上部へいくにしたがって
平面が円形へと変化していきます。
つまり、底面三角形の「辺」の部分が
だんだん膨らんできて、
三角形のおむすびのようになり、
くだものや木の実のような、
まるっこい平面形になって、
円に近づいていき、
高さ約300mから円形へと変化するのです。
通常の多くのタワーは上へ行くにしたがって、
平面が相似形に小さくなりながら伸びていくか
同じ形のまま伸びていきます。
でも、このスカイツリーはどの高さで切っても
同じ形が無いのです。
このように、平面が同じ形でないタワーは
東京スカイツリーが世界でも初めてのもので、
特徴のひとつになっています。
では、どうして丸くなっていくのかというと‥‥。
東京スカイツリーは
電波塔として建てられるものですが、
展望台をもつ観光施設でもあり、
展望台は、350mと450mの高さにつくられます。
(現在、第一展望台を工事しているところです。)
ここで設計者が考えたことは、
「もし展望台に上ったら、
人は何を眺めるのだろう?」
でした。
そしてその答えが
「やっぱり、自分んちや
恋人の家(方向)を見たいよね!」
だったんです。
もちろん、日本で最も高い展望台から見える風景は
これまでになかったもので、
絶景のひとつだと思います。
でも、ただそれを見てもらうだけではなくて、
展望台を訪れるひとみんなの気持ちを考えたのです。
どこかに偏ることなく、360度景色を見渡せるには
円形の展望台がベストだと考え、円形にしました。
また、アンテナを取り付けるタワーの上部は、
アンテナをどの方向に向けるにせよ、
等しく取り付けやすくなる円形のほうが便利ですし、
強風など外から受ける力に対して安定させるにも、
円形の方が、
あらゆる方向から来る力に対して偏りがなく、
バランスよく対応することができる、
という、機能面や構造面の理由もありました。
さて、足元は三角形にして上部は円形にすることが
決まりましたが、
ここから大変だったのが、そのデザインです。
つまり、「△から○へどう変えるのか?」
ごく単純なのは、
途中まで△、途中から○へと
スッパリ切り替えることですが、
なんだかギクシャクとして、なかなかうまくいかない。
いろんな試行錯誤をした末に、
シンプル・イズ・ベスト、
かたちとしていちばん合理的で、素直に、
「△がだんだん○に変形していく」形としました。
△から○へと変わりながら伸び行く姿は、
「成長」を連想させるかもしれませんね。
東京スカイツリーでは、
△はやがて○になります。
となると、ふたつの展望台は二重マルで
ハナマルにも見えてきそう。
なにより、「×」がないのは、
いろんなものを
肯定的に受け入れてくれそうなイメージで、
ちょっと嬉しい気がしますね。 |