阪本 |
そこから星が生まれてきたりするんですけど、
最初の興味は
やっぱり「目で見えないものが見えた」こと。
僕、学生のころに
世界最小の電波望遠鏡をつくったんですけど
それで天の川を観測したら
僕の大好物である
ポワポワした雲たちのうごめきが見えて。
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── |
はー‥‥。
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阪本 |
ま、相当マニアックな話ですけどね。
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── |
そうなんですか、天文学のなかでも。
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阪本 |
もちろん銀河の観測をしたり
自分の興味で
他にもいろんなことをやってはいるんですが。
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── |
でも、いちばん好きなのが‥‥。
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阪本 |
ポワポワ系。
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── |
わかりました。
あの、時間もなくなってきたようなので
若干唐突ではありますが、
「宇宙の果て」って、あるんでしょうか。
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阪本 |
よく聞かれますよ、その質問。
講演会などをやっていて出てくるのは
「宇宙の果てはあるんですか。
あるとしたら
その先はどうなっているんですか」
という質問と
「130何億年前に
宇宙がはじまったと言いますけど
その前は何だったんですか?」
という質問。
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── |
だって、気になりますもの。
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阪本 |
ただ、
「いわゆる『果て』というのはないし
前がないから、始まりなの」
としか、答えようがないんですよね。
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── |
‥‥そりゃそうかもしれませんが。
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阪本 |
そこから「時間がはじまった」んだから、
「その前」はないんです。
そういう「特異点」だということであって‥‥。
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── |
つまり「ひとまず、そのように考える」と?
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阪本 |
そうですね。
ですから「はじまりの前は?」と聞かれても
今、たまたま
「聞く側」と「聞かれる側」に立っているだけで
ホントは「俺も聞きたいよ!」と‥‥。
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── |
あはははは(笑)。
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阪本 |
まあ、なかなか、言えないんですけどね。
飲んでたらアレだけど。
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── |
なるほど、シラフでは少し難しいと(笑)。
ちなみに、僕らの生活レベルに落ちてくる
発見や研究なんかも、
宇宙の分野には、当然あるわけですよね。
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阪本 |
ありますね。
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平松 |
自動車の衝突防止レーダーみたいな装置が
最近、よく話題に上りますが‥‥。
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── |
ぶつかりそうになるとブレーキがかかる、
というやつですね。
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平松 |
あれって、90ギガヘルツくらいの電波を発して、
それが前の車に反射して
返ってきたところをキャッチすることで
距離を測っているんですけど、
もともとは、宇宙から来る電波を捉える装置を
民生用に応用しているんです。
あるいは、ALMA計画の電波望遠鏡が捉える
サブミリ波を使って「歯の診断」をしたり。
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── |
そんなところに、身近な「宇宙」が。
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平松 |
そういった技術の「極み」を結集しているのが
ALMAの電波望遠鏡なんです。
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阪本 |
われわれが相手にしている宇宙からの信号って、
だいたい弱い。
そういう微弱なものを
まあ、力づくで‥‥というかな、
限界ギリギリまで追い詰めていくことによって、
民間では到底ペイしないような研究開発を
やっているんです。
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── |
なるほど‥‥。
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阪本 |
最近、ニュースになりましたけど
JAXAが、X線やガンマ線を検出する装置を
開発していたんですね。
2014年に打ち上げられる
X線天文衛星に積むカメラだったんですが
これを使うと
放射性物質で汚染されている箇所を
可視化することができる。
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── |
つまり、汚染部分が「見える」と。
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阪本 |
震災後、共同研究がはじまったようです。
まあ、そのように
もともと狙っていたわけじゃないんですが
応用できることは、いろいろあって。
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── |
宇宙への興味を突き詰めていたら
近所の地上で役に立ってしまった‥‥みたいな。
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阪本 |
われわれの業界には「宇宙」と聞いただけで
夢中になって研究しちゃう人が、多いんです。
そういう意味では
ブレイクスルーを起こす可能性の高い分野だと
思います。
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平松 |
人が「突き動かされてる感じ」がありますね。
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── |
そういえば「ベテルギウスが爆発するかも」と
ニュースでやってたんですが
その時期が「来年か、1万年後か」みたいに
ものすごい幅があって。
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平松 |
そうですね‥‥来年なのか、1万年後なのか
わからないんですが、いずれは。
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── |
来年と1万年後とじゃ、だいぶ差がありますが。
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平松 |
ベテルギウスくらいの星になると、
数千万年くらいの「寿命」があるんですよ。
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── |
つまり、それくらいのちがいというのは
「誤差の範囲」であると?
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平松 |
もうすぐ、爆発するのはわかっているんですが
その「もうすぐ」が、
人間の「もうすぐ」ではない、ということです。
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阪本 |
宇宙関係者が「ついこの間」って話してるのを
よく聞いてると
6500万年前の話だったりするからね。
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平松 |
まだ、恐竜とかいた時代です。
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── |
小さいころに
「いずれ、太陽も消滅する」ということを知って
ものすごいヘコんだ覚えがあるんですが、それも‥‥。
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平松 |
50億年先の話です。
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阪本 |
だから、同じことを子どもたちに聞かれたときは
「考えてごらん、そのころ君らは
50億10歳になっているんだよ」と。
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── |
‥‥諦めもつくだろうと?
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阪本 |
そう。「じゃ、ま、いっか」みたいな(笑)。
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── |
こうやって、
おふたりが興味を持たれている問題って、
大きな宇宙の謎の中の一部分だと思うんですが、
それらを、ひとつひとつ解明してゆくことで
どこへ繋がって行くんでしょう?
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阪本 |
どこ?
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── |
つまり、宇宙の謎ってバカでかすぎて、
ひとつひとつの問題意識を
どれだけ積み上げたら、
宇宙の全体像に迫れるのだろう‥‥と言いますか。
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阪本 |
今のが「何の役に立つのか」という意味なら‥‥。
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── |
ええ。
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阪本 |
お腹はいっぱいにならないです。
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── |
ははあ。
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阪本 |
たとえば‥‥そうだなあ、
宇宙の多様性が、どう生まれてきたのかを
突きとめる、と言ってもね。
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── |
ええ。
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阪本 |
それって、もちろん重要なことなんですけど
他方で、ま、どうでもいいことだとも言える。
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── |
そうですか。
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阪本 |
だってさ、日本人がどこからやって来ようと
いいじゃないですか。
今、こうやって、ここにいるんだし。
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── |
そりゃあ、まあ。
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阪本 |
ご先祖さまが、うんと寒いところにいたとか
知ったこっちゃないですよ。
あるいは、スペインのほうに
「日本」を意味する「ハポン」という
姓の人がいて、
彼らがナントカ侍の末裔かもしれないという
新聞を読みましたけどね、最近。
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── |
あ、ぼくも読みました。
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阪本 |
僕らが生きてく上では、どうでもいいでしょ、
そこについては、ハッキリ言って。
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── |
たしかに、ええ。
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阪本 |
ただね‥‥。
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── |
はい。
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阪本 |
大いなるロマンを感じるじゃないですか。
そんなことなんですよ。
僕らのやっていることって、つまり。 |